ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. YPY - Compact Disc (review)
  2. Oneohtrix Point Never ──OPNがニュー・アルバムをリリース (news)
  3. Boris ──Borisの初期作品2作がジャック・ホワイトのレーベルよりリイシュー (news)
  4. interview with A Certain Ratio/Jez Kerr マンチェスター、ポストパンク・ファンクの伝説 (interviews)
  5. interview with Phew いまは本当に、日常を繰り返すこと。それを自分に決めています (interviews)
  6. Global Communication - Transmissions (review)
  7. Special Interest - The Passion Of (review)
  8. interview with Saito テクノ夫婦 (interviews)
  9. ralph ──気鋭の若手ラッパーがファーストEPをリリース、プロデュースは Double Clapperz (news)
  10. Boldy James / Sterling Toles - Manger on McNichols (review)
  11. Oscar Jerome - Breathe Deep (review)
  12. interview with Trickfinger (John Frusciante) ジョン・フルシアンテ、テクノを語りまくる (interviews)
  13. Phew ──日曜日にスペシャルセットの配信ライヴあります (news)
  14. Boris ──初期作品2作がジャック・ホワイトのレーベルよりリイシュー (news)
  15. Sam Prekop - Comma (review)
  16. A Certain Ratio ──ア・サートゥン・レシオが12年ぶりに新作 (news)
  17. Brian Eno ──ブライアン・イーノ、初のサントラ・コレクションがリリース (news)
  18. Idris Ackamoor & The Pyramids - Shaman! (review)
  19. Bruce Springsteen ──ブルース・スプリングスティーンが急遽新作をリリース、発売日は大統領選直前 (news)
  20. interview with Koshiro Hino 無垢な変奏 (interviews)

Home >  Reviews >  Album Reviews > Anna Calvi- Anna Calvi

Anna Calvi

Anna Calvi

Anna Calvi

Domino/Hostess

Amazon iTunes

野田 努   Mar 02,2011 UP
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 またしても女性シンガーの登場。先週のリア・アイシスに続き美女二連発、この後、橋元優歩が書くことになっているジュリアナ・バーウィックで三連発......というわけだ。世間的な評価で言えば、リア=対抗馬、そしてこのアンナ・カルヴィ=本命、ジュリアナ=穴馬、といったところだろうか。いずれにせよ、アンナ・カルヴィはもっぱら2011年の本命と評されている女性シンガーである。リアとジュリアナはブルックリン、アンナはロンドン。リアは疲れた女、ジュリアナは打ち込み女、そしてアンナは......。
 彼女はヴォーカリストであり、ギタリストだ。トム・ヴァーレインとライ・クーダーをブレンドしたような、魅力的なギターを弾く。スライドギターの名手で、フランメンコ・ギターも弾いている。アルバムの1曲目がギターによるインストゥルメンタルであることからも彼女のそれが飾りではないことをうかがい知ることができるが、歌手にしておくのがもったいないほど、アンナ・カルヴィはギター弾きとしても光るモノを持っている。
 彼女への期待を膨らませたのは、最初に彼女がYouTubeにアップしたいくつかのカヴァー曲――デヴィッド・ボウイ"サウンド&ヴィジョン"をはじめ、レナード・コーエン"ジョーン・オブ・アーク(ジャンヌ・ダルク)"、TV・オン・ザ・レディオ"ウルフ・ライク・ミー"、エルヴィス・プレスリー"サレンダー"――だが、試しにひとつでも観ればわかるでしょう。ドイツ表現主義的な白黒の映像のなかで演奏するカルヴィは(その白々しい演出にもかかわらず......)実にキマっている。

 ele-kingではスルーしてしまったけれど、アマンダ・ブラウン(LAヴァンパイアーズ)とコラボ・シングルも発表した、ゾラ・ジーザスが昨年欧米では3枚目のアルバムによって話題となっている。まだうら若きロシア系アメリカン人は目下ゴシック・リヴァイヴァルをうながす女として注目を集めている。スウェーデンのフィーヴァー・レイがこの流れのきっかけとなっているというが、ゾラ・ジーザスはなかなか妖美なルックスで、アンダーグラウンドのアイドルとしての資格充分である。そして、この手の、つまり稲妻が走る闇夜のミュージックホールのステージに立っているポップ・ヴァージョンがアンナ・カルヴィ......といったところだろうか。

 エディット・ピアフのファンであるという彼女は、ピアフが歌っていた"イザベル"という曲でデビューしている。彼女の、ジム・モリソンめいた暗い情動を秘めた声とセクシャルな歌いっぷりは魅力たっぷりで、ニック・ケイヴがフロントアクトに彼女を抜擢するのもよくわかる。と同時に、ニック・ケイヴが惚れ込むのがわからないほど、彼女のデビュー・アルバムはキャッチーでもある。アルバムには"デザイアー"という、まるでブルース・スプリングスティーンめいたアップリフティングな曲まであるように、これはメインストリームのポップ・アルバムだ。"スーザン・アンド・アイ"と"ブラックアウト"という2曲が、アルバムにおける最高のポップ・ソングである。僕がもっとも好きなのは"ザ・デヴィル"という、彼女の美しいギター演奏と控えめなパーカッションで構成されている曲。なお、アルバムのプロデューサーは、PJハーヴェイとの仕事で知られるロブ・エリス。日本盤には彼女のデビュー曲である"イザベル"も収録されている。

野田 努