ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. Sefi Zisling - Expanse (review)
  2. Thundercat ──サンダーキャットがニュー・アルバムをリリース (news)
  3. MAE.SUN ──ネオソウルとジャズの新たな蜜月、ヘイリー・ニスワンガー率いるバンドが新作を発表 (news)
  4. Jeff Parker ──ジャズ・ギタリストのジェフ・パーカーが新作をリリース (news)
  5. Daniel Lopatin ──映画『アンカット・ダイヤモンド』がまもなく Netflix で配信開始、制作ドキュメンタリーが公開中 (news)
  6. φonon ──佐藤薫主宰の〈フォノン〉が新たに2作品をリリース (news)
  7. Columns TINY POPというあらたな可能性 (columns)
  8. Ovall - Ovall (review)
  9. パラサイト 半地下の家族 - (review)
  10. Columns NYクラブ・ミュージックの新たな波動 後編:進化する現代のレイヴ・カルチャー (columns)
  11. Banter × Thomas Fehlmann ──トーマス・フェルマンが来日、Banter のリリース・パーティに出演 (news)
  12. Nyantora + Duenn feat. 津田翔平 & 毛利悠子 ──《ENVIRONMENT 粟津潔と環境と音楽 by HardcoreAmbience》開催 (news)
  13. tiny pop ──いまじわじわと広がりつつある「tiny pop」初のコンピがリリース (news)
  14. Columns tiny pop sound cloudガイド (columns)
  15. Stormzy - Heavy Is The Head (review)
  16. Various Artists - tiny pop - here’s that tiny days (review)
  17. tiny pop fes ──ネット・レーベルの〈DANGBOORURECORD〉がフェスを開催、長谷川白紙、その他の短編ズらが出演 (news)
  18. King Krule ──キング・クルールがニュー・アルバムをリリース (news)
  19. 編集後記 編集後記(2019年12月30日/野田努) (columns)
  20. interview with Daniel Lopatin 人間としての自分に近い作品に思えた (interviews)

Home >  Reviews >  Album Reviews > Nicolas Jaar- Space Is Only Noise

Nicolas Jaar

Nicolas Jaar

Space Is Only Noise

Circus Company

Amazon iTunes

野田 努   Mar 30,2011 UP
このエントリーをはてなブックマークに追加
E王

 ジュリアナ・バーウィックがコクトー・ツインズとアニマル・コレクティヴの溝を埋めたとしたのなら、ニコラス・ジャーの『スペース・イズ・オンリー・ノイズ』はマシュー・ハーバートとリカルド・ヴィラロヴォスの溝を埋める作品である。いずれにせよ、ここ数年あまりパッとしなかったテクノ・シーンにおいて久しぶりの大器の登場......というわけで、すでに輸入盤店では評判になっているブルックリン在住の21歳、そのデビュー・アルバムだ。

 ジャーは、昨年リリースしている何枚かのシングルではヴィラロヴォスの後継者と言われたようにミニマル・テクノ・ダンスを発表してきた若者、というか大学生で、アーティなノリが鼻につくとはいえ、それら作品はアイデアに富み、個性があって、魅力的なダンス・トラックであることは間違いない。ここ数年、どん詰まり気味に見えていたミニマル・テクノにおいて、「あー、まだこんなに新しいことができるんだ」と彼のシングルを聴くと感心する。
 それはまあ、簡単に言えば知性による革新だが、感覚派が多数を占めるミニマル・テクノにおいて、知性派と言えばスティーヴ・ライヒを再評価するような、あるいはカールステン・ニコライを再評価する動きがあるけれど、そことも確実に一線を画する面白味というものがジャーにはある。現代音楽を真面目に学ぶ教室のなかでRケリーを高らかに歌う生徒を想像してみて欲しい。そして、フィリップ・グラスは知っていてもヒップホップを聴かない連中の前で一見アホらしいミニマル・テクノを演奏したときに、多くは眉をひそめるだろうが、しかし何人かは熱烈に拍手するだろう。そういう意味では、ニコラス・ジャーにはダダイストめいたところがあるのだ。実際の話、ジャーの最大の特徴をひと言で表せば、異なるジャンルの混合(コラージュ)ということになる。そして、その実験はつねにポップに響いている。
 アルバムではダンスを控え、ダウンテンポでラウンジーな展開を披露しているものの、ハーバートを彷彿させる洒脱でユーモラスなセンスと彼の教養は充分に発揮されている。プリペアード・ピアノとブルースを重ね、ジェームス・ブレイクをミニマル・テクノでやったかと思えば、ゲンズブールがキャプテン・ビーフハートとラップトップでマカロニ・ウエスタンをやっているというか......レナード・コーエンを最大のヒーローとしているだけあって、歌心も忘れない。何よりも音楽を思い切り楽しもうという気概が気持ちよいし、それが老朽化したミニマルのクリシェを解体して、若々しい現在を主張している。

 ともかく、これはジェームス・ブレイクと並んで2011年前半のエレクトロニック・ミュージックにおけるエポックメイキングな1枚になるので、未聴の方は早めにレコ屋にGO!

野田 努