ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. 今年気に入っているミニ・アルバム - (review)
  2. METAFIVE - METAATEM (review)
  3. Aphex Twin and Dave Griffiths ──エイフェックス・ツインが無料のサウンド・デザイン・ソフトウェアを公開 (news)
  4. Kai Whiston - Quiet As Kept, F.O.G. (review)
  5. interview with Makaya McCraven シカゴの名ジャズ・ドラマー、経験すべてを詰めこんだ渾身の新作 (interviews)
  6. Natalie Beridze - Of Which One Knows (review)
  7. Kaitlyn Aurelia Smith - Let's Turn It Into Sound (review)
  8. Fabiano Do Nascimento / Itibere Zwarg Collective ──ブラジル音楽の新世代ギタリストと、ヴェテラン・ベーシストによる共作がリリース (news)
  9. Haruna Yusa ──遊佐春菜の新作MVが公開 (news)
  10. Taylor Deupree ──テイラー・デュプリーが来日、25周年を迎えるレーベル〈12k〉のショウケースが開催 (news)
  11. interview with Strip Joint 新世代ジャパニーズ・インディ、自由を求める (interviews)
  12. R.I.P. Pharoah Sanders 追悼:ファラオ・サンダース (news)
  13. TYPE NINE ——ハードなテクノにこだわった〈09recordings〉主催のパーティに注目(読者にTシャツ・プレゼントあり) (news)
  14. Cantaro Ihara ──注目のSSW、イハラカンタロウの新作7インチがリリース、リミックスにedbl (news)
  15. 七尾旅人 - Long Voyage (review)
  16. Babylon ——伝説のUKレゲエの映画、40年超しに本邦初上映 (news)
  17. Coby Sey - Conduit (review)
  18. interview with Nils Frahm ポスト・クラシカルのピアニスト、珠玉のアンビエント作品 (interviews)
  19. interview with Danger Mouse デンジャー・マウス、17年ぶりのヒップホップ・アルバムを語る (interviews)
  20. Kendrick Lamar - “Auntie Diaries” (from 『Mr. Morale & The Big Steppers』) (review)

Home >  Reviews >  Album Reviews > Ricardo Villalobos & Max Loderbauer- Re: Ecm

Ricardo Villalobos & Max Loderbauer

Ricardo Villalobos & Max Loderbauer

Re: Ecm

ECM

Amazon

松村正人   Aug 17,2011 UP

 リミックス盤がバンバン出ていた90年代中盤から00年代なかばから10年以上経って、音楽産業の状況もリスナーの嗜好も変わったとはいえ、オリジナルの変奏やヴァージョンちがいを聴きたい欲求は潜在的に一定数あるようで、〈グラモフォン〉の音源を縦横に駆使したカール・クレイグとモーリッツ・フォン・オズワルドの『リ・コンポーズド』が話題になったのも記憶にあたらしいが、それももう2年前の話だった。そんなにあたらしくもなかった。それにあのアルバムはクラシック曲を新曲に再構築することに主眼を置いていたので、リミックスというより、申告通り「リ・コンポーズ」だったが、マティアス・アーフマンやジミ・テナーとつづく一連のこのシリーズを聴きくらべると、個々の「再作曲」とリミックスのちがいがしだいに曖昧になる、やっかいなシロモノだったのもまたたしかである。どんな創作であれ主観なしには成り立ち得ないのだから、定義づけは作品の可能性の一端を示すものでしかないとはいえ、90年代の音楽を嚆矢に、創作物があたりまえに高次化する現在、接頭語「re」にはほとんど隠語めいた含意がある。

 『RE: ECM』は、リカルド・ヴィラロボスとマックス・ローダーバウアーが〈ECM〉のカタログから、10人の音楽家の17曲(クリスチャン・ヴァルムーは5曲、アレクサンダー・クナイフェルは4曲と、複数曲選んである)を選び再編したリミックス盤。〈ECM〉はいうまでもなく、マンフレッド・アイヒャーを中心に1969年、マル・ウォルドロンの『フリー・アット・ラスト』とともに産声をあげたドイツの老舗ジャズ・レーベルで、キース・ジャレットでつとに有名だけど、〈ECM〉と聞くとまず、作品名やジャズのイメージより先に静謐で禁欲的なレーベル・カラーを想起される方も多いはず。音数を押さえた彼らしいミニマリズムを〈ECM〉の楽曲とミックスするヴィラロボスと、モーリッツとのトリオで培ったモジュラー・シンセの音色でダブ感を援護射撃するローダーバウアーのコンビネーションもおおむねそのカラーに沿っている。つまり原曲を活かす方向でリミックスをおこなっているのだが、それもそのはず、彼らはリミックス盤制作にあたって、〈ECM〉からマルチ音源を貸与されなかった、と解説にある。『RE: ECM』を、ビート感を押さえた曲やソロ・パートを中心に構成している背景にはそのような事情があった。アイヒャーにとって、リミックス作を〈ECM〉のカタログにうまく収めるための保険だったのだろう。ところがこの制約はアルバムをリミックスというよりDJミックスにちかづけることになる。ここでは原曲の時間と空間が尊重されているのと同じくらい原曲の外にいるリミキサーの異物感が強調されている。ヴィラロボスとローダーバウアーともなると追加エレメントを原曲になじませることに抜かりはない。にしても、〈ECM〉の作品に顕著な静寂と余白はたんに空白ではない。ファンクやレゲエの休符と同じように、そこにはテンションが満ちているし、ドラマのいち部がある。ヴィラロボスたちはそこに割りこんでくる。まきこまれた、といった方が適当だろうか。「こうするよりほかに方法がなかったからね」というつぶやきが聞こえてきそうだが、一方で歴史と格闘するのを楽しんでいるようにも思える。そう考えると、〈ECM〉のクールでスムースな音場にハウス/アンビエントの即物性が浮き彫りになるように思えるから不思議だ。サンプリング〜ループ、リ・コンポーズ、通常の手法であればはこうはならなかったにちがいない。『RE: ECM』はアイヒャーのマスタリングもあって〈ECM〉らしい一枚にしあがっている。けれども荒々しい。どこかオフィシャルブートの質感のある、リミックス......というよりリ-エディット的な『RE: ECM』だと思った。

松村正人