ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. Lucrecia Dalt - No Era Sólida (review)
  2. interview with Oneohtrix Point Never(Daniel Lopatin) OPNはいかにして生まれたのか (interviews)
  3. interview with Meitei 海外で評判の新進電子音楽家、日本文化を語る (interviews)
  4. Oliver Coates - Skins n Slime (review)
  5. Wool & The Pants ──ウール&ザ・パンツのNTSラジオでのミックスショーが格好いいので共有させてください (news)
  6. interview with Trickfinger (John Frusciante) ジョン・フルシアンテ、テクノを語りまくる (interviews)
  7. Bill Callahan - Gold Record (review)
  8. Autechre - Sign (review)
  9. Oneohtrix Point Never ──OPNがニュー・アルバムをリリース (news)
  10. Bruce Springsteen ──ブルース・スプリングスティーンが急遽新作をリリース、発売日は大統領選直前 (news)
  11. Planet Mu's 25th anniversary ──プラネット・ミュー、25周年おめでとうございます (news)
  12. Richard Spaven & Sandunes - Spaven x Sandunes (review)
  13. interview with ZORN 労働者階級のアンチ・ヒーロー (interviews)
  14. 11月7日、川崎の工業地帯での野外パーティ、Bonna Potあり (news)
  15. Sound Patrol 久々にやります - (review)
  16. Young Girl - The Night Mayor / V.A. - A Little Night Music:Aural Apparitions from the Geographic North (review)
  17. R.I.P. 加部正義 (news)
  18. ralph ──気鋭の若手ラッパーがファーストEPをリリース、プロデュースは Double Clapperz (news)
  19. BIM - Boston Bag (review)
  20. James Ferraro - Requiem For Recycled Earth (review)

Home >  Reviews >  Album Reviews > Tuusanuuskat- Naaksaa naa mun kyyneleet

Tuusanuuskat

Tuusanuuskat

Naaksaa naa mun kyyneleet

Fonal Records

Amazon iTunes

三田 格   Sep 27,2011 UP
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
E王

 フィンランド・アンダーグラウンドからサミ・サンパッキラとヤン・アンデルセンによる初のジョイント・アルバム......と、書いてもわかる人は少ないだろう。サンパッキラは(ハンガリー語の糸を意味する)〈フォナル・レコーズ〉を運営しながらエーアス(ES)という名義で5枚のソロ・アルバムをリリースし(裏アンビエントP221)、一方のヤン・アンデルセンはトムトント(Tomutonttu)の名義で(スペルは違うけれど発音は同じ)2枚のソロ・アルバム『トムトント(Tomutonto)』(06)と『トムトント(Tomutonttu)』(07)によって一気にその才能が知れ渡った奇才(今年の初めにはツアーで仲良くなったというOPNとスプリット・シングルをアルターからもリリース)。二人ともフォナルの看板プロジェクトともいえる9人編成のケミアリセト・イスタヴァット(=化学友だち、『ゼロ年代の音楽』P170))としても10枚近くのサイケデリック・インプロヴァイゼイションを展開するメンバー同士だったものが、ふたりだけのコラボレイションはこれが初めて。両者の個性が見事に交じり合った充実の1枚に仕上がり、アシッド・ハウス以降のヘンリー・カウ=ユーロ・インプロヴァイゼイションがどこまで来たかを教えてくれる。ユニット名はトウサノウスカト(=全部めちゃくちゃになる)、タイトルは『ナークサー・ナー・モン・クーナレート』......と読むらしい)。

 前半はテリー・ライリーを思わせるユーフォリック・ドローンにアシッドで引っかき傷をつけていくようなSEがこれでもかと被せられ、単純に明るいドローンを聴かせるようになっただけのアメリカとは同じ方向を見ているようで、少し差のある展開を聴かせる。そのつもりはなかったのかもしれないけれど、長い時間をかけてアンビエント・ミュージックとしての体裁が整ってきたエーアスに対して、アシッド・ミュージックの新たな地平を切り開こうとするトムトントにはかなりの癖があり、あっさりとは取り付けなかった部分があったところを、前者が全体にスケール感を与えることで、ダイナミズムと細部が同時に生きる構造を獲得したということになるのだろうか。これを聴いてしまうとエーアスもトムトントも物足りなく感じられるようになってしまったこともたしかで、今後はそれぞれが自分に足りなかったものをそれぞれのソロ・ワークに持ち帰ってくれることを願うばかり。後半はケミアリセト・イスタヴァットでも積極的に取り入れてきたフォークロアも素材として取り込みつつ、かなり混沌とした印象を与えるミニマル・サウンドやジ・オーブがシューゲイザー化したような荘厳なサイケデリック・ドローンを配置。トリップ・ミュージックとして、まったくの文句の出ないエンディングへとなだれ込む。優雅と野蛮の同居。これに対抗できるのはやはりラスティ・サントス率いるザ・プリゼントだけだろう。

 レイヴ・カルチャーの果てに進んだ実験音楽と快楽主義の混交ははまだまだ大きな地平を用意しているのかもしれない。エメラルズやグローイングのようにメジャーへのベクトルを持つことだけが能ではない。快楽主義にはむしろ潜むべき場所というものがあるはずだろう。

 なお、アナログ盤は未確認ですが、CDパッケージにはストライプ模様のアセテート・フィルムが帯としてつけられていて、これをスライドさせていくとジャケット・デザインがどんどん変化して見えるという仕掛けが施されています。これは一見の価値アリ。つーか、帯にこんな使い方があるとは...

三田 格