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野田 努   Feb 01,2012 UP
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 昔の話だが、アメリカの友人(有名なDJである)と渋谷の街を歩いていたら、いわゆるストリート・ミュージシャンの数の多さ、そしてその下手っぷりに驚かれたことがある。この程度の技術でよく路上でやれたものだと彼は呆れていたが、たしかにアメリカでは演奏力というものが、日本やイギリスよりもいまでも価値を持っている。DJにしてもそうだ。アメリカの黒人のDJは、ほとんどみんなうまい。イギリス人では人気があって、しかも下手くそというDJが少なくない。いずれにせよ、ジミ・ヘンドリックスというジャンルを超越した巨星を生んだ国だけあって、ことメインストリームの文化において演奏力という価値観が衰えていないし、また、ライヴハウスが生活に根付いているがゆえに自力がなければ這い上がってこれないというのもあるのだろう。
 即興を特徴とするジャム・バンドという文化も、早い話、演奏力の文化だと言える。コンセプトありきのヨーロッパ型のシーンにはなかなか見られない、いまではある種の伝統にもなっている。そもそもジャム・バンドはジャンル的に言えば、ブルース、ジャズ、ファンク、サイケデリック......などなど実に多様で、マーズ・ヴォルタやSunn O)))、ザ・フレミング・リップスまでもがこの文化圏に含まれるらしい。とにかく線が太く、野外の大きなところを得意とするような、演奏に迫力がある連中だ。昨年のメタモルフォーゼで演奏する予定だったジャズ・ファンク・バンド、ギャラクティックもそうしたジャム・バンドのひとつに数えられる。

 1994年にニューオーリンズで結成された5人組のこのバンドは、すでに9枚のアルバムを発表している。2007年からは〈エピタフ〉傘下の〈アンタイ〉(ジョー・ストラマーの最後のアルバムを出したレーベル)に移籍して、本作『カーニヴァル・エレクトリコス』は〈アンタイ〉からの4枚目のアルバムとなる。ニューオーリンズのマルディグラ、リオのカーニヴァルと並んで有名な地元の謝肉祭がアルバムのテーマで、なぜこの時期にリリースされるのかといえば、マルディグラがこの季節だからだ。
 ギャラクティックといえば、1960年代末に登場したニューオーリンズ出身の偉大なファンク・バンド、ザ・ミーターズの現代版であるとたびたび謳われている。ある意味その陽気な感覚は継承しているが、基礎体力の高さのみならず、それ以上にアッパーな何か、大はしゃぎの人食った演奏をこのバンドは展開する。ファンクが基本だが、本作ではサンバも大胆に取り入れている。セルジオ・メンデスのカヴァーもしている。ジャズ・ファンク・サンバの祭典といったところで、なんでこいつらこんなにハッピーなのかと意表を突かれる思いだ。お祭りの音楽だから当たり前と言えば当たり前だが、アメリカのジャズ系のジャム・バンドは、ソウライヴもそうであるように、イギリスにはないハッピーなグルーヴがある。メタモルフォーゼが声をかけたのも充分に理解できる演奏だ。iPodでは聴きたくない音楽だろう。

野田 努