ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. Georgia Anne Muldrow - Overload (review)
  2. interview with Colleen 炎、わたしの愛、フリーケンシー (interviews)
  3. Columns アンダーグラウンド・レイヴの生き証人、Jeff23 (SP23 ex.Spiral Tribe) (columns)
  4. Felicia Atkinson/Jefre Cantu-Ledesma - Limpid As The Solitudes (review)
  5. Northan Soul ──ついに『ノーザン・ソウル』の一般上映が決定です! (news)
  6. Norhern Soul ──『ノーザン・ソウル』、この最高な映画を見たらスリムのデニムを履けなくなる (news)
  7. 山下敦弘監督『ハード・コア』 - (review)
  8. tamao ninomiya - 忘れた頃に手紙をよこさないで(tamao ninomiya works) (review)
  9. 日本のテクノ・アンダーグラウンドにおける重要DJのひとり、KEIHINが〈Prowler〉レーベルをスタート (news)
  10. Irmin Schmidt - 5つのピアノ作品集 (review)
  11. Panorama Barの初代レジデント“Cassy“ が年末の日本を襲撃 (news)
  12. Makaya McCraven - Universal Beings / Makaya McCraven - Where We Come From (Chicago × London Mixtape) (review)
  13. Blood Orange - Negro Swan (review)
  14. Yves Tumor ──イヴ・トゥモアが来日 (news)
  15. interview with GillesPeterson UKジャズ宣言 (interviews)
  16. Imaizumi Koichi ──今夏話題を集めた映画『伯林漂流』の再上映が決定&今泉浩一監督の全過去作品も (news)
  17. Colleen - The Weighing of The Heart (review)
  18. Brainfeeder X ──〈ブレインフィーダー〉10周年を記念した強力なコンピレーションが発売 (news)
  19. Marie Davidson - Working Class Woman (review)
  20. Random Access N.Y. vol.107:『デイドリーム・ネイション』30周年 (columns)

Home >  Reviews >  Album Reviews > Various Artists- The Original Sound Of Cumbia

Various Artists

Various Artists

The Original Sound Of Cumbia

The History Of Colombian Cumbia & Porro As Told By The Phonograph 1948-79

Soundway

Amazon iTunes

野田 努   Feb 02,2012 UP
このエントリーをはてなブックマークに追加

 「カーネーション、コカイン、クンビア。1980年代から1990年にかけてコロンビアの経済を活気づけた3つの輸入品のうち、いちばんなじみが薄いのはおそらくクンビアだろう」、スー・スチュワードの有名な『サルサ』(1999)にはそう書かれているが、いまとなってはコカインに次いで有名なのがクンビアではないだろうか。クンビアのユニークなところは、アフリカとヨーロッパがアンデス山脈から流れるマグダレナ川に沿って混ざり合い、港町のバランキヤに集結した点にある。港から北に進めばキューバだ。キューバ人にとってバランキヤは奴隷の子孫(アフリカ系コロンビア人)が集まった「外国とは思えない」町であり、ゆえにその町のダンス音楽がキューバ音楽と類似するのは当然だった。
 クンビアを特徴づけるのは、アコーディオンとアフロ・パーカッションである。キューバ音楽よりもシンプルな構成であるがゆえ、ヨーロッパの民俗音楽のアコーディオンの官能的な旋律とアフリカ大陸から奴隷を通じて伝播した豊かなビートとの結合が際だって聴こえ、このクレオール文化の魅力がよりわかりやすく見える。僕はラテン音楽に関しては素人だが、この音楽に魅了されない人が信じられないほど、ひと言で言えば大好きなジャンルである。
 CDにして2枚組、LPにして3枚組のこのクンビアのコンピレーション・アルバムは、UKの〈トゥルー・ソーツ〉からの作品で知られるクァンティックことウィル・ホランドがコロンビアに滞在した4年間で集めたコレクションの成果である。そして、全55曲が音楽の宝石だ。サブタイルには「The History Of Colombian Cumbia & Porro As Told By The Phonograph」(レコードが語るクンビアとポロの歴史)とあるが、クァンティックは、78回転の音源から45回転の音源まで、博物学を好む英国人らしくコロンビアのレコード産業を懸命に掘ったのだろう。ちなみにポロとは、クンビアのサブジャンル。『オリジナル・サウンド・オブ・クンビア』には、曲によってはレゲエっぽいものもソカっぽいものもある。そのエクレクティックな様相も、カリブ海に面したコロンビアの北の音楽の特徴である。

 3.11以降の日本では、こんなときに音楽なんて......などという声が多くあった。その他方では、3.11以降の嘆き/悲しみと絡めて音楽を聴くことがあたかもリスナーの誠実さの表れのような風潮がある。その気持ちもわからなくもないし、日本政府や東電を許すわけではないが、マルクス派のゲリラと政府が絶えず内戦を繰り広げていたコロンビアにおいてレコード産業は、たとえば「音楽どころではない」精神状態によって撃沈していったかと言えば、とんでもない。それは「動乱の時期にも安定した存在」(前掲同)だった。ハードな日常のなかで、むしろコロンビアの音楽シーンは活気づいて、色めいていたのである。『オリジナル・サウンド・オブ・クンビア』はそれを知らしめる。ああ、そういえばディスコの青写真もナチスに占拠されたパリで生まれたんだっけ。

野田 努