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Blue Hawaii

Blue Hawaii

Untogether

Arbutus / Plancha

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橋元優歩   Mar 01,2013 UP
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 グライムスを生んだカナダのD.I.Yなアート・スペース〈アルバタス〉から、ブルー・ハワイのセカンド・アルバムが届けられた。彼らの名は2010年のデビュー作(『ブルーミング・サマー』)において、当時ピークを迎えつつあったチルウェイヴの一端として知った方も多いのではないだろうか。2013年を迎えるいま、その多くは次の方向を模索しながら、あるいはアンビエントへ、あるいはハウスへ、R&Bへ等々とさまざまに拡散する状況を迎えているが、たとえばトロ・イ・モワハウ・トゥ・ドレス・ウェル、そしていくつかのレーベルがそうであるように、より自らのアイデンティティを深く彫り出しながらテクニックの洗練を目指すものが多いことは間違いない。

 ブルー・ハワイもまたその例外ではない。彼らの場合は、〈4AD〉的な幽玄、スタンデルプレストンのアシッディなヴォーカルに焦点が絞られつつある印象だ。エレクトロニックなアシッド・フォークと言ってしまってよいかもしれない。"デイジー"のようにミニマルなビートを追求したダンス・トラックもあるが、リンダ・パーハックスのポスト・チルウェイヴ版といった趣もある。要するに、歌もの志向を強めたエレクトロニックなサイケ・アルバムに仕上がっており、迷いないディレクションがなされていると感じる良盤だ。

 さて、ブルー・ハワイは男女デュオであるが、今作『アントゥゲザー』のジャケット写真には多少驚かされる。いや、これが映画DVDのアートワークならば驚くには当たらず、「何か恋人たちの物語なのだろう」で終了なのだが、アー写から判断するにこれは本人たち自身なのである(ですよね?)。加工が施されているとはいえ、モデルではなく自身らが抱き合うフォトグラフを用いるのは、それなりに勇気を必要とすることではないだろうか。しかもトリオ以上の編成におけるふたりならともかく、デュオ中のふたりという他者性を容れない関係性や、視点が相互の間で完結する抱擁のコンポジションが意味するところは、本作が愛をめぐるコンセプチュアルなアルバムであるか、彼らがとにかく愛しあっているか、しかない。そこで急に男女デュオという編成が気になりはじめる。

 インディ・シーンにおいて男女や夫婦のユニットは多く見かけるが、ピーキング・ライツやハラランビデスのようにドープなフィーリングを持った夫婦デュオの一方には、ピュリティ・リングやハウシーズのようにペアかどうか曖昧な、そのあたりみずみずしい微妙さを残した年若いアーティストたちもいる。男女デュオがパートナー同士であることは、そうでない場合とはやはり異なってくるのではないだろうか。男女ペアで過度な接触を生みながら行われるアイス・ダンスなどを見ていると、競技者同士がつきあっている場合、互いをプライヴェートに知るからこそ生まれる表現やアドバンテージがあったりするのではないかという気がしてくる。デイデラスとそのパートナー、ローラ・ダーリントンによるユニット、ザ・ロング・ロストなどは、非常にインティメットで睦まじいムードのドリーム・ポップ作品をリリースしている。彼らのアルバムほどラブラブであることが全面化されていて、かつそれがストレートに音を研磨している作品は珍しいが、ブルー・ハワイの今作には、色合いは違えどそれに近いものを感じる。

 と思っていたら、国内盤のライナーにふたりがカップルであることが明記されていたので膝を打った。しかも、トラックメイカーであるアレックス・アゴー・コワン(男性側)が、ラファエル・スタンデルプレストンに片思いをしていたという顛末まであえて明記されているから素晴らしい。ナイスな解説だ。このことは、ゴシップであるようでいてじつは本質的なトピックなのだ。スタンデルプレストンのヴォーカルをいかにコワンのトラックがサポートし、彼女が光となるように注意を払っているか、そのことを裏付けるようなエピソードである。もともとブレイズのヴォーカルとしても知られる存在だが、キャリアの有無を超えて、コワンの音やビートメイクには彼女への憧れや優しさのようなものがにじんでいる。自らは影として、歌がより自由に、より遠くまで届くためにふるまうときに最大値を示す、というような......。トラックメイカーのエゴは相応には必要なものだが、サポートするという非エゴイスティックな行為に全エゴが振り向けられるというあり方は、やはりカップルならではの持ち味ではないかと思う。前作よりもエディット感が出ていて、ベース・ミュージックからの影響もスマートに消化され、かなりテクニカルなものではあるのだが、この「出すぎない美」の正体はなるほど相手への想いであったかと納得した。

 そのわりにタイトルが『アントゥゲザー』、詞がいやに暗鬱な調子を帯びているところもなかなか好みだ。さまざまに拒絶と保留の態度を描写し、「刑務所の愛」とまで形容しながら、「わたしはもっとあなたを愛しに来た」と結ぶなんというヤンデレ。グライムスが天を舞う小悪魔だとすれば、スタンデルプレストンは地を這う天使というところだろうか。「アン」をつけることでしか「トゥゲザー」を表現できない彼女の詞は、彼女のヴォーカルのなかにほんとうによく表現されている。

橋元優歩