ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. New Order ──すでに話題のニュー・オーダー来日情報 (news)
  2. Tunes Of Negation ──音楽にまだ未開の領域はあるのか、シャックルトンの新プロジェクトがすごい! (news)
  3. KODAMA AND THE DUB STATION BAND - @六本木Varit (review)
  4. Laura Cannell - The Sky Untuned / Laura Cannell, Polly Wright - Sing As The Crow Flies (review)
  5. Floating Points ──フローティング・ポインツがDJセット音源を公開 (news)
  6. interview with Taylor McFerrin 僕らはジャズか? (interviews)
  7. Politics 反緊縮候補たちの参院選 (columns)
  8. yapoos ──地球最後のニューウェイヴ・バンド、ヤプーズが再始動する (news)
  9. Solange - When I Get Home (review)
  10. interview with Yutaka Hirose よみがえる1986年の環境音楽 (interviews)
  11. Floating Points ──フローティング・ポインツ、待望の新曲をレヴューします (news)
  12. Columns いまだ眩い最高の夜 ──ニュー・オーダーのライヴ盤『NOMC15』を聴きながら (columns)
  13. Random Access N.Y. vol. 118:2019年のNYで金延幸子の『み空』を聴く Sachiko Kanenobu ‘Misora’ listening party at red wing heritage (columns)
  14. interview with South Penguin サイケデリック新世代が追い求める「美しさ」とは (interviews)
  15. Khruangbin - 全てが君に微笑む / Khruangbin - Hasta El Cielo (review)
  16. Moodymann - Sinner (review)
  17. interview with New Order 我らがニュー・オーダー (interviews)
  18. interview with Vityazz インスト・バンドをなくしたい (interviews)
  19. interview with Phony Ppl NY発 新世代が奏でるソウルの真髄 (interviews)
  20. Jeff Mills ──ジェフ・ミルズが新たな試みをスタート、視覚×聴覚×空間! (news)

Home >  Reviews >  Album Reviews > Djrum- Seven Lies

Djrum

AmbientBroken BeatDowntempoDubDubstep

Djrum

Seven Lies

Amazon iTunes

野田 努   May 14,2013 UP
このエントリーをはてなブックマークに追加

 インダストリアル系の暗いフィーリングを含みながら、甘美なソウル/ジャズがベース・ミュージックを通過したダウンテンポで再現されている。ということは、これは初期のポーティスヘッドやマッシヴ・アタックではないのか......と思いつつも、この手の音が好きな人間の気持ちを惑わせるものがDJラムのデビュー・アルバム『セヴン・ライズ』にはある。
 ダウンテンポという曖昧なサブジャンル名は、90年代当初はトリップホップと呼ばれていた。が、名前としてあまりにも評判が悪かったので、いつの間にかダウンテンポという実にいい加減な名前(アップテンポというサブジャンルはない)に置換されながらも、UKからその周辺諸国にあっという間に広がった。たしかにテンポを落としたダンス・ビートには、より多くのアイデアを組み込める。よってこのサブジャンルは、名前のいい加減さとは裏腹に、その後多くのマスターピースを生んでいる。

 ブリアルが登場したとき、やかましいリスナーは、こんなことはかつてマッシヴ・アタックがやっていたじゃないかと言った。ある意味ではその通りだが、初めて聴くに世代にしたら新鮮だったことだろう。DJラムの『セヴン・ライズ』にいたっては、セイバーズ・オブ・パラダイスの『ホーンティッド・ダンスホール』やナイトメアズ・オン・ワックスの『スモーカーズ・デライト』なんかも連想されるだろう。"Comos Los Cerdos"などはクルーダー&ドーフマイスターのダブステップ版だ。つまり、インダストリアルの側に侵入しながら、ヒップホップやソウル、ディープ・ハウスの側に留まっている。イラレヴェントに続くアンビエント・ベースの叙情詩だと言えよう。

 音楽を聴くときに、部屋を暗くして蝋燭に火をともすような年齢でもないが、どうも昔から僕はこの手の音楽に惹かれる。朝は早いし、夜更かしが好きなわけでもないのだが、メランコリックな音響に弱い。
 この4月は、〈ブラッケスト・エヴァー・ブラック〉が立て続けに新作を出したので、悪魔的な消費の欲望に駆られる自分を抑えるのに大変だった。ダークな恍惚に耽っている場合ではない、身をわきまえろ、そう言い聞かせながら台所の鍋に火を入れたものだ。
 『セヴン・ライズ』はサンプリングを基調とした音楽だが、ソースはつねに中古レコードにある。彼はレコード店をマメにまわって、掘って、探し続けているそうだ。ダウンテンポは、このような昔ながらのレアグルーヴ文化を継承しているジャンルでもある。サウンドから聞こえる温かさは、ネタの質というよりも、彼の音楽への関わり方からも来ているのだろう。明日の朝の起床時間など気にせず、心おきなく夜に耽りたい人に向いている。

野田 努