ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. Georgia Anne Muldrow - Overload (review)
  2. Felicia Atkinson/Jefre Cantu-Ledesma - Limpid As The Solitudes (review)
  3. tamao ninomiya - 忘れた頃に手紙をよこさないで(tamao ninomiya works) (review)
  4. Northan Soul ──ついに『ノーザン・ソウル』の一般上映が決定です! (news)
  5. interview with Colleen 炎、わたしの愛、フリーケンシー (interviews)
  6. 日本のテクノ・アンダーグラウンドにおける重要DJのひとり、KEIHINが〈Prowler〉レーベルをスタート (news)
  7. Panorama Barの初代レジデント“Cassy“ が年末の日本を襲撃 (news)
  8. Marie Davidson - Working Class Woman (review)
  9. Irmin Schmidt - 5つのピアノ作品集 (review)
  10. Imaizumi Koichi ──今夏話題を集めた映画『伯林漂流』の再上映が決定&今泉浩一監督の全過去作品も (news)
  11. Makaya McCraven - Universal Beings / Makaya McCraven - Where We Come From (Chicago × London Mixtape) (review)
  12. Blood Orange - Negro Swan (review)
  13. 山下敦弘監督『ハード・コア』 - (review)
  14. Norhern Soul ──『ノーザン・ソウル』、この最高な映画を見たらスリムのデニムを履けなくなる (news)
  15. Mr Twin Sister - Salt (review)
  16. Yves Tumor ──イヴ・トゥモアが来日 (news)
  17. R.I.P.妹尾隆一郎 ありがとう妹尾隆一郎 (news)
  18. NYハウスにおける重要レーベル、〈King Street Sound〉25周年パーティ (news)
  19. Yves Tumor ──イヴ・トゥモアが突如フル・アルバムをリリース (news)
  20. Eartheater - IRISIRI (review)

Home >  Reviews >  Album Reviews > Djrum- Seven Lies

Djrum

AmbientBroken BeatDowntempoDubDubstep

Djrum

Seven Lies

Amazon iTunes

野田 努   May 14,2013 UP
このエントリーをはてなブックマークに追加

 インダストリアル系の暗いフィーリングを含みながら、甘美なソウル/ジャズがベース・ミュージックを通過したダウンテンポで再現されている。ということは、これは初期のポーティスヘッドやマッシヴ・アタックではないのか......と思いつつも、この手の音が好きな人間の気持ちを惑わせるものがDJラムのデビュー・アルバム『セヴン・ライズ』にはある。
 ダウンテンポという曖昧なサブジャンル名は、90年代当初はトリップホップと呼ばれていた。が、名前としてあまりにも評判が悪かったので、いつの間にかダウンテンポという実にいい加減な名前(アップテンポというサブジャンルはない)に置換されながらも、UKからその周辺諸国にあっという間に広がった。たしかにテンポを落としたダンス・ビートには、より多くのアイデアを組み込める。よってこのサブジャンルは、名前のいい加減さとは裏腹に、その後多くのマスターピースを生んでいる。

 ブリアルが登場したとき、やかましいリスナーは、こんなことはかつてマッシヴ・アタックがやっていたじゃないかと言った。ある意味ではその通りだが、初めて聴くに世代にしたら新鮮だったことだろう。DJラムの『セヴン・ライズ』にいたっては、セイバーズ・オブ・パラダイスの『ホーンティッド・ダンスホール』やナイトメアズ・オン・ワックスの『スモーカーズ・デライト』なんかも連想されるだろう。"Comos Los Cerdos"などはクルーダー&ドーフマイスターのダブステップ版だ。つまり、インダストリアルの側に侵入しながら、ヒップホップやソウル、ディープ・ハウスの側に留まっている。イラレヴェントに続くアンビエント・ベースの叙情詩だと言えよう。

 音楽を聴くときに、部屋を暗くして蝋燭に火をともすような年齢でもないが、どうも昔から僕はこの手の音楽に惹かれる。朝は早いし、夜更かしが好きなわけでもないのだが、メランコリックな音響に弱い。
 この4月は、〈ブラッケスト・エヴァー・ブラック〉が立て続けに新作を出したので、悪魔的な消費の欲望に駆られる自分を抑えるのに大変だった。ダークな恍惚に耽っている場合ではない、身をわきまえろ、そう言い聞かせながら台所の鍋に火を入れたものだ。
 『セヴン・ライズ』はサンプリングを基調とした音楽だが、ソースはつねに中古レコードにある。彼はレコード店をマメにまわって、掘って、探し続けているそうだ。ダウンテンポは、このような昔ながらのレアグルーヴ文化を継承しているジャンルでもある。サウンドから聞こえる温かさは、ネタの質というよりも、彼の音楽への関わり方からも来ているのだろう。明日の朝の起床時間など気にせず、心おきなく夜に耽りたい人に向いている。

野田 努