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野田 努   Jul 25,2013 UP
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 この10年、お決まりの語法を無視したユニークな音楽の多くが北米から出て来ている。エクスペリメンタル・ミュージックと呼びうるものは、UKにシーンがないわけではないのだろうけれど、しかし、圧倒的に北米もしくはUK以外の欧州からのほうが目立っている。1980年代はOPNやローレル・ヘイロー、グルーパーやエメラルズのような音楽、いわゆるレフトフィールドな音と言えばUK以外からの方が珍しかったというのに、である。社会的、経済的な厳しさで言えば、北米もそれなりにきついはずだ。裕福だから実験、というわけではないだろう。
 何にせよ、こうした豊かな多様性を持った、知覚の領域を拡張するための......か、どうかは知らないが、メインストリームに媚びることない実験精神旺盛なUSインディ・シーンと共鳴するような日本人アーティストがもっと出てきてもおかしくはない。前に紹介したイルハはそのひとつとに数えらるのだろうが、このイケバナもリストに加えておこう。

 元シトラスとインセンスという、活動歴の長いふたりの女性からなるイケバナの音楽にいちばん近いのは、僕が思う限り、おそらくグルーパーだろう。とはいえ、ゆらめいているギターとその残響音から聴こえる彼女たちの歌は、はっきりと、「歌」としての輪郭を保っている。歌詞があるし、ホープ・サンドヴァルほど声に力があるわけではないが、"Alone"や"Rose"には惹きつけられるメロディがある。何かこう、持っていかれるのである。
 電子的に変調された声と美しいギターのアルペジオが交錯する"Kiss"の展開も、聴き手をものの見事に引きずり込んでいく。7分以上ある"Ikebana"は、他の曲と同様に、最小限の音数と魅惑的な残響音、そして空間的な「間」を使って、素晴らしい音楽体験をもたらしてくれるだろう。この曲に関して言えばイルハの音響と近いものを感じるが、音の間合いはより長く、魅惑的な静寂を持った、残響音の美学だと言えよう。
 この、じわじわとリスナーを増やしていきそうなアルバムのマスタリングは、デムダイク・ステアのマイルス・ウィッテカー。この作品に対してヨ・ラ・テンゴが惜しみない賛辞を送るばかりか、自らリミックスも手がけていると聞くし、"Alone"に関してはKing og Opusによるリミックスも近々発表されるらしい。8月3日にライヴがあるというので、行ってこようかと思います。

野田 努