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久保憲司   Sep 12,2013 UP
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 アークティック・モンキーズの5作目『AM』を聴くと、「これこそいまのロックだ」という声をあげてしまう。ロックなんて言葉は、完全に死語なんですけどね。
 オルタナティヴという言葉が使われだしたときに、ロックは元気を取り戻したんですけど、それももう20年以上前の話です。
 ロックンロールがロックと呼ばれるようになったのは、ロックンロールが政治性、メッセージを帯びたときのことだと僕は思っている。調べてないので、正確な日付けはわからないのですが、68年とか69年のことだと思います。あの頃ですよ。僕が予想するにザ・フーの『トミー』というアルバムが出た頃、『ローリング・ストーン』が『トミー』という意識的なアルバムは他のロックンロールと違うのだという意味を込めてロックという言葉を使い出したような気がしている。その頃に、ロックンロールはロックという大人になったのです。

 で、ロックがだめになり、パンクという言葉が使われるようになって、パンクはニューウェイヴとなった。ニューウェイヴは、後に商業主義というかMTVとねんごろになって、84年くらいまで生き延びた。そういう音楽だったから日本でひさびさの洋楽ブームが訪れたんじゃないだろうか。
 それじゃだめだろうと、アメリカではカレッジ・チャートからオルタナティヴという言葉が使われ出した。イギリスでは、その少し前からアンチ商業主義的な音楽はインディと呼ばれるようになっていた。アメリカでオルタナティヴがまた盛り返してきたときはグランジと呼ばれた。いまはなんて呼ばれているのか、それは君のほうがよく知っているでしょう。
 「マッドチェスター」「インディ・ロック」と呼ばれる音楽がどういう文脈のなかに入るのかという説明もした方がいいと思うけど、もう複雑になりすぎるから、また今度。

 要するにロックはロックンロールかポップ・ミュージックの変形なのだというか、ロックンロールが大人になったのがロックなのだから、いまの音楽はロックでいいんじゃないかという気がする。
 でも、外人さんは40年も使い古された言葉を使いたくないという意識が強いのでしょう。僕は、母国語じゃないので、べつにロックでいいんじゃないのと思うんですけど。でも、日本でもついに、ロックって言葉を安易に使いたくない人たちが出てきているような気がします。
 それなのに、アークティック・モンキーズの新作を聴いていると、「これこそロックだ」と叫びたくなるのです。天才アレックス・ターナーにあっさりと「違うよ」と言われそうですが。でも、『AM』は『フェバリット・ワースト・ナイトメア』『ハムバグ』『サック・アンド・シー』と試行錯誤していたアークティック・モンキーズの完成型だと思う。おーっ、ついにここまでやったかと感動しているのです。

 『ホワットエヴァー・ピープル・セイ・アイ・アム、ザッツ・ホワット・アイム・ノット』でアークテック・モンキーズは完全に完成されていた。『フェバリット・ワースト・ナイトメア』『ハムバグ』『サック・アンド・シー』は、次のステップへの闘いだった。そして、『AM』でそれが完全に完成したのである。『AM』というタイトルは、まさにその表れだろう。
 ラップ、ヘヴィ・ロック、サイケ、それらの音楽が見事にブレンドされた音楽が『AM』である。
 このブレンド感に嫌悪感を示す人たちがいるのもわかる。エンター・シカリなどがアークティックを批判する気持ちもわかる。「どこか学術的なんだよ」ということなんだろう。でも、僕はアークティックの音に、そのお手本のようなクイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジと同じロックを感じる。いやニルヴァーナと同じロックを感じる。また無防備にロックという言葉を使いまくっていますが、本当は『AM』には新しい名前がつけられるべきなのだろうが、僕はこれこそがロックなのだといいたい。

 ロックンロールが大人になったロックには、『2001年宇宙の旅』で人類が超人類になったように、ロックから超ロックにならないといけないという強迫観念があるような気がするが、僕はアークティック・モンキーズのハイブリットとグルーヴ感があれば、それでいい。アークティックの力強さを僕はロックだと感じるのだ。ロック、パンクが世の中を変えようとしたように、次の新しいロックは世の中を変えなければならない、そんなの糞食らえだ。俺は新しい音楽が、グルーヴが生まれてきさえすればそれでいい。町を歩くとき、走るとき、気持ちよくしてくれればそれでいい、その最先端がこのアルバムなのだ。

久保憲司