ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. interview with Bullsxxt 国家なんかいらねぇ (interviews)
  2. Satoshi & Makoto - CZ-5000 Sounds & Sequences (review)
  3. Giggs - Wamp 2 Dem (review)
  4. interview with Ian F. Martin アイデンティティの問題と、いまアイドルについて語らないこと (interviews)
  5. BS0xtra with V.I.V.E.K ──低音のロンドン/東京・アンダーグラウンドを体験してくれ (news)
  6. talk with Takkyu Ishino × Stephen Morris - 特別対談:石野卓球×スティーヴン・モリス(ニュー・オーダー) (interviews)
  7. Hello Skinny - Watermelon Sun (review)
  8. B12 - Electro-Soma I + II (review)
  9. ele-king TV presents 『ゲイ・カルチャーの未来へ』刊行記念番組──田亀源五郎、トーク・ショウ@DOMMUNE (news)
  10. BS0xtra XtraDub (chart)
  11. Shuta Hasunuma ──蓮沼執太が最新シングルをリリース (news)
  12. Teen Daze - Themes For A New Earth (review)
  13. SILENT POETS ──2018年2月、12年ぶりのオリジナル・アルバムをリリース (news)
  14. 音楽と建築 - ヤニス・クセナキス 著 高橋悠治 編訳 (review)
  15. interview with IO - KoolBoyの美学 (interviews)
  16. Yaeji - EP 2 (review)
  17. パーティで女の子に話しかけるには - (review)
  18. interview with TOKiMONSTA ウサギおばけの帰還 (interviews)
  19. Takehisa Kosugi ──50年代から現在に至る小杉武久の活動を紹介する展覧会が開催、トークや上映会も (news)
  20. Columns いまだ眩い最高の夜 ──ニュー・オーダーのライヴ盤『NOMC15』を聴きながら (columns)

Home >  Reviews >  Album Reviews > AlunaGeorge- Body Music

Album Reviews

RockSynth-pop

AlunaGeorge

AlunaGeorge

Body Music

Vagrant / Island

Amazon iTunes

竹内正太郎   Sep 24,2013 UP
このエントリーをはてなブックマークに追加

 「インターネットというメディアが日常に入り込んできてから、未来は消え、世界の終わりがはじまったような錯覚すら覚える」――ファッション誌『HUGE』のミュージック・イシュー、「10年代の音楽」(第103号)に寄せて、本誌・野田編集長は(ハイプ・ウィリアムスの発言に共感する形で)こんなことを書いている。さらに、話はこう続く。「クラウトロックやイギー・ポップはマニアだけが知っている秘密だったが、今では70年代のリアルタイムでは知りようがなかったドイツのフォークまで検索できてしまうのだ。」
 これをそっくりそのまま、可能性としての姿に反転させようというのは、あまりに幼稚な反論だろうか。だが、季刊『vol.9』号でのceroのメンバーや、次号『vol.11』号の巻頭に登場予定のトーフビーツの口から、インターネット普及以降の音楽体験にまつわる雑感を聞くことができたのは興味深かった。インターネットが持つ偶然の誘発性や速度、それが彼らのクリエイティビティを刺激しているのは間違いないだろう(クリックの誤操作さえ可能性である)。
 もちろん、僕たちはそのプロセスのなかで、音楽に対する畏れを失わない。そう容易く果てが見えるほど世界は狭くないことを、他でもなくインターネットが教えてくれたのだから。巨大なサイバースペースのなかで、僕たちはひとりひとりが異なる経路や角度、速度で音楽の歴史と戯れているのだろう。世界が終わったのなら、そこを旅すればいい。世界の終わりの果てを目指して。

 ブルックリンの〈トライ・アングル〉が発見したこのロンドンのデュオの音楽は、一見、その華々しいR&Bの完成形に目を奪われる。それはあまりに......スムースだ。だが、ティンバランドやジョアンナ・ニューサムやフライング・ロータスといった、まるで文脈を欠いたいくつかのアクトが、彼ら・彼女らの重要な音楽的ソースであることを思い出せば、そのシームレスな継ぎ目から、ダブステップを通過しなければ出ないような、ビートの微かなズレ、小さな蠢きが聴こえる。あるいは、ウィッチハウスのアンビエンスも。そして、それをコーティングするアルーナの歌は、ジョアンナ・ニューサムの可憐さに媒介されたデスティニーズ・チャイルド(ないしはTLC)のそれだ。
 配合、という、ちょっと軽薄めかした言葉がちょうどいい。そう、ポスト・インターネット世代は、あまりにも軽々と複数の(それも互いに離れた)領域をショートさせてしまう。高尚めいた実験精神ではなく、ある意味では軽薄な洒落っ気で。まるで、テレビ・ゲームの操作ボタンでも押すかのように。『ピッチフォーク』はこんな風に書いている。「例えばグライムスが、息つく間もなくマライア・キャリーとエイフェックス・ツインのことについて夢中になって語るように、ピュリティ・リングはそのプリズムめいた童話の背景にあるものに、ジャスティン・ティンバーレイクとクラムス・カジノ、それにホーリー・アザーを挙げる。」

 アルーナジョージの話に戻ろう。とてもインディ作品とは思えない、アルーナ・フランシスのスーパースター然としたミュージック・ヴィデオでの完璧な立ち振る舞いも鮮烈だった"ユー・ノウ・ユー・ライク・イット"や、リアーナの"アンブレラ"のポスト・ダブステップ・ヴァージョンにして、要は超ポップで激スウィートなR&B・ヒット"ユア・ドラムス・ユア・ラヴ"といったキラー・ナンバーを主軸に、テンポや音色を同系色でコーディネートしたアルバム新録曲で、その脇が手堅く固めれている。なかでも、甘ったるいシンセ・ポップ"カレイドスコープ・ラヴ"におけるゴージャスかつ繊細に重ねられた薄いコーラスは、レイト90S R&Bへの素直なオマージュだろう。
 いまさらながら断っておくと、僕はこのデュオのファンだ(今月末のライヴの予約もしてある)。心を鬼にして判断すれば、デビュー作となったこの『ボディ・ミュージック』は、こちらが期待した水準を超えては来なかった。それでも、デビュー作としては申し分ない。まるで合わせ鏡の、この潔癖的にシームレスな音楽に身を委ねているあいだは気づきにくいが、ふわふわと軽い、ある種の言い方をすればチャラいアルーナのヴォーカルに染められた後では、多くの先達の歌がベタにソウル臭く感じられてしまうほど。未来はそうやって、また少しずつ音楽を包み始めるのではないだろうか。これはつまり、ほんの挨拶代わりの、余裕のファースト・フルレンスだ。

 PS。もちろん、ラスティとのアクロバティック・レイブ"アフター・ライト"や、ディスクロージャーとのハウス・ナンバー"ホワイト・ノイズ"もお聴き逃しなく。そして9月24日は、〈LIQUIDROOM〉に集合!!

竹内正太郎