ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. Tricky - Fall to Pieces (review)
  2. YPY - Compact Disc (review)
  3. Oneohtrix Point Never ──OPNがニュー・アルバムをリリース (news)
  4. Global Communication - Transmissions (review)
  5. interview with A Certain Ratio/Jez Kerr マンチェスター、ポストパンク・ファンクの伝説 (interviews)
  6. There are many many alternatives. 道なら腐るほどある 第5回 反誕生日会主義 (columns)
  7. Boris ──Borisの初期作品2作がジャック・ホワイトのレーベルよりリイシュー (news)
  8. interview with Saito テクノ夫婦 (interviews)
  9. ralph ──気鋭の若手ラッパーがファーストEPをリリース、プロデュースは Double Clapperz (news)
  10. interview with Phew いまは本当に、日常を繰り返すこと。それを自分に決めています (interviews)
  11. Special Interest - The Passion Of (review)
  12. interview with Trickfinger (John Frusciante) ジョン・フルシアンテ、テクノを語りまくる (interviews)
  13. Boris ──初期作品2作がジャック・ホワイトのレーベルよりリイシュー (news)
  14. There are many many alternatives. 道なら腐るほどある 第2回 マグカップは割れ、風呂場のタイルは今日も四角い (columns)
  15. interview with Diggs Duke 偽りなきソウルを追い求めて (interviews)
  16. Boldy James / Sterling Toles - Manger on McNichols (review)
  17. Sam Prekop - Comma (review)
  18. Idris Ackamoor & The Pyramids - Shaman! (review)
  19. 宇多田ヒカル - Fantôme (review)
  20. Brian Eno ──ブライアン・イーノ、初のサントラ・コレクションがリリース (news)

Home >  Reviews >  Album Reviews > Varisou Artists- DIGGIN' GREENSLEEVES mixed by MU…

Varisou Artists

DancehallDeejayDubReggaeRoots

Varisou Artists

DIGGIN' GREENSLEEVES mixed by MURO

AWDR/LR2

Amazon

野田 努   Sep 26,2013 UP
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 〈グリーンスリーヴス〉といえば、オーガスタス・パブロの『オリジナル・ロッカーズ』(1979年)、ドクター・アリマンタドの『ベスト・ドレスド・チキン・イン・タウン』(1978年)といった70年代末の名作もあれば、ヒュー・マンデルの『アフリカ・マスト・ビー・フリー』のようなルーツの名盤の再発も手がけている。ジョン・ホルトの『ポリス・イン・ヘリコプター』(1983年)のような隠れ名盤もある。と同時に〈グリーンスリーヴス〉は、80年代のダンスホール時代を代表するプロデューサー、ヘンリー・ジュンジョ・ロウズと彼の〈ヴォルケーノ〉レーベルの諸作を世界に広めたレーベルとしても知られている。12インチ/45回転のディスコ・シングルのリリースも有名だ。
 後に拠点をニューヨークに移し、近年でも商業的なヒットを出しているレーベルだが、古くからのファンにとって〈グリーンスリーヴス〉らしさが滲み出ているのは、ルーツとダブからダンスホールとディージェイの80年代初頭へと展開した時期の諸作だろう。80年代前半のレゲエ界のスターだったイエローマンの『ミスター・イエローマン』(1982年)、レーベルの看板のひとりバーリントン・リーヴィの『ロビンフッド』(1980年)、ディージェイの系譜ではトーヤンの『ハウ・ザ・ウェスト・ワズ・ボーン』(1981年)、トーヤンとニコデマスの『DJクラッシュ』(1981年)、クリント・イーストウッド&ジェネラル・セイント『トゥー・バッド・DJ』(1981年)、政治から性(スラックネス)へと主題が変わった時代を物語るクリント・イーストウッドの『セックス・エディケーション』(1980年)などなど、この時代だけに絞っても多くの名作が思い付く。そして、重要なのは、〈グリーンスリーヴス〉、あるいは〈ジャミーズ〉のようなレーベルの躍進が、日本でレゲエが大衆化されていった時代に重なっていることだ。いよいよ街のちんぴらの元にレゲエが届くようになるのだ。
 当時の〈グリーンスリーヴス〉の多くのヒット作のリディムはルーツ・ラディックスによるもので、多くの名作でエンジニアを担当したのはサイエンティストを名乗るホープトン・オーヴァートン・ブラウンだった。当時『FINE』を読んでいたようなサーファーは〈グリーンスリーヴス〉を通じてスタイル・スコットのドラミングを聴いて、サイエンティストのダブにしびれていたのである。

 本作は、稀代のレコード蒐集家MUROによる〈グリーンスリーヴス〉音源のミックスCDである。〈グリーンスリーヴス〉がライセンスした、80年代前半のジャマイカを代表する〈ボルケーノ〉や〈ジャミーズ〉をはじめとする音源が30曲収録されている。今回のCDのためにあらたに声を乗せたダブプレートも混じっているようだ。昔、マッドリブが〈トロージャン〉音源を使ってミックスCDを出したことがあるが、あれが70年代ならこちらは80年代、ジャマイカにおけるアメリカ支配がはじまり、経済的により厳しさの増した時代に大衆化受けしたダンスオールにスポットを当てている。
 サイエンティストのナンセンスなダブから内省的でシリアスなものまで幅広いことをやっているレーベルだが、MUROが選んだのは後者だ。前半はテンションの高いディージェイで盛り上げつつ、中盤ではウェイリング・ソウルのような深いコーラス隊へと突入し、ジュニア・マーヴィンやシュガー・マイノット、殺害されたヒュー・マンデルの美しいソウルを経ながら、後半のブラック・ウルフの勇ましいルーツ・サウンドへと繋がれている。物語性のあるミックスで、80年代前半のこのレーベルの魅力を押さえつつも、ミックスの後半ではメロウかつメランコリックなフィーリングを際立たせている。そのあいだ、あなたはいくつもの美しい瞬間を耳にするでしょう。スリーヴのイラストは、ルーツ時代の作品、ランキン・ジョーの『ウィークハート・フェイドアウェイ』(1978年)のアートワークを引用している。

野田 努