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Album Reviews

Arca

AmbientHip HopIndustrialMixtape

Arca

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Self Release

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竹内正太郎   Oct 15,2013 UP
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E王

 なんだ、これは。と思ってから、すでに2ヶ月以上が経過している......が、むしろ聴けば聴くほどその思いは深まっていく。聴くたびに発見があり、それと同じくらい、謎も増えていく。わずか25分程度のミックス音源でありながら、体感時間はその数倍に及ぶ。
 アンビエント、ヒップホップ、トリップホップ、ゴーストリー、インダストリアル、エレクトロニカ、ジューク、ダブ、ニューエイジ、チョップド・アンド・スクリュー、あるいは金属やガラスが擦れる音......どこまでも断片化された、超未来音楽のスケッチ。それでいて、断片化されたビート・ミュージックの無数のスクラップが、いまこの時代のためにかりそめのビート・ミュージックとして統合されたかのような――。
 表題には「&」が5つも並べられているが、そのあいだにはどのような音楽上のジャンル/概念を代入していただいても結構、とでも言うかのよう。まったくもって規格外だ。2014年、〈Hippos in Tanks〉からのフル・アルバムが噂されるアルカ(a.k.a Alejandro Ghersi)のミックステープ、『&&&&&』がとにかくスゴイ!!

 ベネズエラ出身、ニューヨークはブルックリン在住、弱冠22歳のこのトラックメイカーは、一般には、カニエ・ウェストの怪作『イーザス』に数曲("ニュー・スレイヴス"や"ブラッド・オン・ザ・リーヴス")で参加する謎の新人、ないしは三田格までもが惚れ込んだFKAツウィグスのネオ・トリップホップ/未来型R&Bのレポート『EP2』を共同プロデュースし、"ハウズ・ザット"などの傑作を生みだした新進気鋭として知られる(欧米での評判は「ポスト・インターネット時代におけるトリッキー」等々)。
 もともとの所属は〈UNO NYC〉で、アルカ名義でのEPを2枚リリースしてるほか、デス・グリップスとエイサップ・ロッキーのあいだを埋める核弾頭的存在、ミッキー・ブランコとも"ジョイン・マイ・ミリシャ"で共演している。〈フェイド・トゥ・マインド〉とは互いに意識し合う関係にあるはずで、現場感を含めれば工藤キキさんが本誌でレポートしている〈GHE20G0TH1K〉周辺の動きとも関連がありそう。

 だが、昨年来、僕のようにヴェイパーウェイヴにハマってきたインターネット的な人間であれば、まったく別の側面からこの音楽を見るだろう。つまり、過去のものとなった近未来像をノスタルジックにローファイ処理し続けてきたヴェイパーウェイヴとはまったく逆向きにベクトルを伸ばし、その超未来都市的な映像のイメージとハイファイな音響処理を振りまきつつ生まれていたアンダーグラウンドの新潮流、「ディストロイド(Distroid)」なるタームの最新ヴァージョンとして。
 この聞きなれない言葉は、ヴェイパーウェイヴと同じくイギリスの批評家、アダム・ハーパーがウェブ・マガジン『ダミー』で提唱したもので、「disturbing(不穏な)」や「dystopian(暗黒郷めいた)」のディストに、「android(人造人間)」や「steroid(ステロイド剤)」のロイドを掛けたもので、具体的には〈GHE20G0TH1K〉にも参加しているファティマ・アル・カディリ、あるいはゲートキーパーといった、〈フェイド・トゥ・マインド〉やボディーガード(というかジェイムス・フェラーロ)以降の〈ヒッポス・イン・タンクス〉周辺アーティストがカウントされていた。
 ザックリ言うと、紙版『ele-king vol.11』号の「ディストピア世界で笑顔になれる40作」特集で斎藤辰也がファティマ・アル・カディリを挙げて書いているように、これらの音楽には「人の気配がまるでない」。あるいは、シーパンクにまとわりついていた海やイルカのイメージもない。先端医療工学/人体解剖学を彷彿させる抽象的なイメージ、あるいはバイクやヘリコプターといった機械の無人運転と、それを見つめる神の視線がひたすらハイファイに供給されるのみだ(ジャム・シティの『クラシカル・カーヴス』を思い出してもいい)。

 こうした感覚が何を表象しているのか、ずっと考えているのだが、いまのところピンとこず、『ele-king vol.9』のインダストリアル特集を読んでも、あるいは『vol.11』号での飯田一史氏と海猫沢めろん氏のディストピア対談を読んでも、腑に落ちるアイデアがどうにも閃かなかった(ので、情報の羅列に終始していることをお許しいただきたい......)。
 アルカに関して言えば、最新の電子機器と動物/臓器の遺伝子を組み合わせた合成生物(?)のイメージを初期から好んでおり、このミックステープにおいてもジャケのモンスターをヴィジュアル・アーティスト、ジェシー・カンダが手掛け、MoMAのPS1 現代美術センターにおいてフル尺でのフィルム上映を行い、本人たちは「これまでで最高に美しいミステイクだ!」などと言って笑っている(いまのところ、その全貌はYouTubeで観ようと思えば観られる)。
 そう、少なくとも彼らはディストピアの旧態的なイメージに囚われない。ディストピアで笑い、遊び、はしゃいでいる。その無邪気にして強靭な実験精神は、エメラルズ、ワンオートリックス・ポイント・ネヴァーでさえも軽く呑み込んでいる。ベースがヘヴィに唸り、ビートの置き方が騒がしい前半もいいが、ハードなシンセの発色に酔う17分以降の騒々しいサイケデリアも、どこまでも高く飛ばせてくれる。この恐るべきレフトフィールド、未来はノックもせずにやってくるのか。挨拶代わりのミックステープ、まさかのフリー・ダウンロード!

竹内正太郎