ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. 池田若菜 - Repeat After Me (2018-2021) (review)
  2. a fungus - It Already Does That (review)
  3. Sam Prekop and John McEntire ──サム・プレコップとジョン・マッケンタイアによる共作 (news)
  4. 血を分けた子ども - オクテイヴィア・E・バトラー 著藤井光 訳 (review)
  5. わたしはラップをやることに決めた──フィメールラッパー批評原論 - つやちゃん (review)
  6. Columns 山本アキヲの思い出 (columns)
  7. Félicia Atkinson - Image Langage (review)
  8. 坂本慎太郎 - 物語のように (review)
  9. Wild Style ——ヒップホップ文化の古典中の古典、映画『Wild Style』40周年の特別上映が決定 (news)
  10. ISSUGI ──2年半ぶり9枚目のオリジナル・アルバムがリリース (news)
  11. Big Thief ──ビッグ・シーフの初来日公演が決定 (news)
  12. Yusa Haruna ——遊佐春菜『Another Story Of Dystopia Romance』のリリースを記念した真夏のパーティ開催 (news)
  13. R.I.P.山本アキヲ (news)
  14. edbl × Kazuki Isogai ──UKのプロデューサー、エドブラックと大分のギタリスト、磯貝一樹の共作がリリース (news)
  15. interview with T-GROOVE & GEORGE KANO EXPERIENCE ディスコは世界共通のビート (interviews)
  16. SUPER FREEDOM feat. DJ Marcelle ──アムスから注目のDJマルセルを招いたパーティ (news)
  17. µ-Ziq - Magic Pony Ride (review)
  18. Ginevra Nervi - The Disorder of Appearances (review)
  19. interview with Huerco S. オウテカやベーシック・チャンネルからの影響は大きいね (interviews)
  20. Keita Sano - LOVE HATE LOVE THINK (review)

Home >  Reviews >  Album Reviews > Matchess- Seraphastra LP

Matchess

AmbientElectronicIndustrialPsychedelic

Matchess

Seraphastra LP

Digitalis / Trouble In Mind

Amazon

橋元優歩   Sep 02,2014 UP
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 五雲、というのは仙人や天女が遊ぶところにかかるという五色の雲のこと。なぜ雲に五色を感じたのかはわからないけれども、昔の人なりにネオンというか、常世の艶やかで華やかでありえないありがたさを表現するための舞台装置だったのかなと想像する。さて筆者は最近この雲を見た。展望のある台地に鈍い光がまじりあって分離して5つほどの色のかたまりになって、それを割ってその光たちの親であるもっともまばゆい光線が差し込んできたのを見た──。

 というのは夏休みに読みかじったエドモンド・ハミルトンの影響とかではなくて、マッチェスことホイットニー・ジョンソンの『セラファストラLP』を聴いて自動筆記的に描出されたイメージ。これはもともとは〈デジタリス〉からリリースされていた作品で、同レーベルの女流シンセジスの正しき血統を感じさせる。冒頭の“ザ・ニード・オブ・ザ・グレイテスト・ウェルス”にもあきらかな、クラスターやクラウス・シュルツェ、あるいはローリー・シュピーゲルなどを彷彿させるミニマルなシンセ/アンビエント・トラック。反復ビートも心地よい。いずれもエメラルズ以降を生きる耳には馴染み深いものだが、中盤からその鈍色の音のカーテンをやぶって入ってくるギター・ノイズがなんとも美しい暴力性を発揮していてすばらしい。ノイズも一様ではなく、スロッビング・グリッスルをなぞるような展開もあり、インダストリアルとコズミックと、サイケデリックとパンクとが放射状に一斉射撃される様は圧巻。現在形の女流(宅録女子と呼んでいたころもありました)との同機ということでいえば、メデリン・マーキーからエラ・オーリンズ、さらにゾラ・ジーザスまでの振れ幅を持つ怪作だ。ローレル・ヘイローやあるいはピート・スワンソンなど、テクノ的要素だけが見当たらないだろうか。ジョンソンはヴァーマ(Verma)というバンドのキーボードとしても活躍しており、スペーシーなインプロと女性ヴォーカルが特徴的なそのサイケ・バンドでも重要な役割を果たしている。

このヴァーマをリリースしているシカゴの〈トラブル・イン・マインド〉が、ジャケットの装いもあらたにヴァイナルとして出し直したのが本作。〈デジタリス〉版のカセットのジャケット・デザインの、あの時代を忘れて漂流するがごときSFチックも非常によくこの作品の性格をあらわしていると思うけれど、こちらの〈モダン・ラヴ〉的なインダストリアル感、モノクロームなウィッチ感もいい。エキセントリックさが抑えられて、よりいまらしさが捉えられている。『ele-king vol.6』の女流宅録電子音楽特集からずいぶん時間が経ったけれども、プロデューサー気質の個性的な女流は涸れることなくどんどんと後続を生みつづけていて、「男勝り」ではなく個としてつよく勝ったその姿に毎度惚れている。

橋元優歩