ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. 七尾旅人 - Stray Dogs (review)
  2. ベルリンの伝説のパンク・バンド、ディン・A ・テストビルトによる「廃棄物」ゴミ入りシングル(!)再発備忘録 (news)
  3. Matmos ──マトモスがニュー・アルバムをリリース、今回のテーマはプラスチック製品! (news)
  4. メアリーの総て - 監督:ハイファ・アル=マンスール 出演:エル・ファニング/ダグラス・ブース/ベル・パウリー/トム・スターリッジ/ベン・ハーディ / 天才作家の妻 - 監督:ビョルン・ルンゲ
    出演:グレン・クローズ、ジョナサン・プライス、クリスチャン・スレーター
    (review)
  5. Yves Tumor ──イヴ・トゥモアが来日 (news)
  6. Georgia Anne Muldrow - Overload (review)
  7. interview with Colleen 炎、わたしの愛、フリーケンシー (interviews)
  8. 山下敦弘監督『ハード・コア』 - (review)
  9. Columns ハテナ・フランセ 第18回 新しい太陽王VSジレ・ジョーヌ(=黄色いベスト) (columns)
  10. Norhern Soul ──『ノーザン・ソウル』、この最高な映画を見たらスリムのデニムを履けなくなる (news)
  11. Felicia Atkinson/Jefre Cantu-Ledesma - Limpid As The Solitudes (review)
  12. Makaya McCraven - Universal Beings / Makaya McCraven - Where We Come From (Chicago × London Mixtape) (review)
  13. Northan Soul ──ついに『ノーザン・ソウル』の一般上映が決定です! (news)
  14. Irmin Schmidt - 5つのピアノ作品集 (review)
  15. interview with GillesPeterson UKジャズ宣言 (interviews)
  16. tamao ninomiya - 忘れた頃に手紙をよこさないで(tamao ninomiya works) (review)
  17. Imaizumi Koichi ──今夏話題を集めた映画『伯林漂流』の再上映が決定&今泉浩一監督の全過去作品も (news)
  18. Columns 坂本龍一の『BTTB』をいま聴いて、思うこと (columns)
  19. Tirzah - Devotion (review)
  20. 日本のテクノ・アンダーグラウンドにおける重要DJのひとり、KEIHINが〈Prowler〉レーベルをスタート (news)

Home >  Reviews >  Album Reviews > DESKTOP ERROR- KEEP LOOKING AT THE WINDOW

DESKTOP ERROR

Dream popEmoIndie RockPsychedelicShoegaze

DESKTOP ERROR

KEEP LOOKING AT THE WINDOW

SO::ON DRY FLOWER

Tower Amazon

橋元優歩   Sep 10,2014 UP
このエントリーをはてなブックマークに追加

 彼らについてはシューゲイザー、あるいはポストロックという紹介を多く見かけるが、サイケデリックの一類型という意味ではシューゲイズだし、トータスの構築性/脱構築性ではなくレディオヘッドの折衷性をポストロックと呼ぶならば、あるいはエモの文脈においてはポストロックと呼べるだろうか。90年代から2000年代のリアルな「洋楽体験」を反射させながら輝くタイの5人組インディ・ロック・バンド、デスクトップ・エラー。彼らの音を聴いていると、国は異なれどひとつの世代感を共有するような錯覚におそわれる。

 マイ・ブラッディ・ヴァレンタインからレディオヘッドといったUKインディ、アメリカン・フットボールやデス・キャブ・フォー・キューティといったUSインディ/エモ、それから感触としては〈モール・ミュージック〉やトゥ・ロココ・ロットなどロック的でアコースティックなエレクトロニカにまで飛び火するだろう。〈アンチコン〉まで連想してもいいかもしれない。横断的にそれらを括る言葉はないが、ポストロックというよりも「ポスト・バンド」時代のバンドやプロデューサーたちが残してきた折衷的な知恵とスタイル、そして前掲のアーティスト名に絡まる、内向的で潔癖的なメランコリーとセンチメンタリズム。デスクトップ・エラーの楽曲には、シューゲイズ・マニアとかポストロック信者とかいうことではなく、そのように「あの頃のヨウガク」のごく素朴なリスナー体験とその感動がしみこんでいる。

 不思議なもので、彼らにとってもわれわれにとっても「ヨウガク」への距離感はほとんど同じなのではないかとさえ感じる。かつてはレディオヘッドなどをコピーしていたというのも、微笑ましくてリアルなエピソードだ。もっとも、タイではこの種の音楽体験を共有するのはひと握りだということだから(http://www.offshore-mcc.net/2012/03/desktop-error.html)、経済的な階層が音楽カルチャーの受容を分断しているというようなことはあるかもしれないが。

 今年リリースされたデスクトップ・エラーのセカンド・アルバム『キープ・ルッキング・アット・ザ・ウィンドウ』は、そんな彼らのルーツが素朴に開陳されながらも、新鮮な驚きにみちたアルバムだ。とくに新しい方法があるわけではないが、かわりにはっとするほどピュアな瞬間がいくたびもおとずれる。ピンバックのアジア的ヴァリエーションとも呼べそうなサッドコア的フォーク・ナンバー、あるいはアリエルなどのきらきらとしたシューゲイズ新世代などを思わせる“เปลี่ยนทิศ / Pian Tid”や“เปลือยเปล่า / Nude”といったあたりもすばらしいが、“ต่างด้าว / Alien”などのバースト・ナンバーにおいてペダルが踏まれた瞬間の感触などにもいわくいいがたいものがある。いわゆる轟音バンドのそれとはちょっと異なる発想の歪みではないかと思う。こうしたところもマニアや研究気質ではない素朴さがなせる部分だろうし、渋谷系のリヴァイヴァルも手伝ってか、知識や歴史意識を携えたバンドが復権しているいま、相対的にどこか愛らしさも感じさせる。タイ語は非常に自然に英語と溶けてきこえるが、ふとしたタイミングで見たことのないような音の情景を描きだしてくれる。

 しかし最大の驚きはやはり1曲めだろうか。“กุญแจผี / Ghost Key”となづけられたその曲は、おそらくは民俗楽器を用いていて、タブラ様のなにか打楽器、そして耳慣れない弦楽器がフィーチャーされているように聴こえる。つづけてたとえばビーチハウスの一節を歌いはじめてもまったくおかしくないような英米のインディ・ポップの文法に、わざとらしさを微塵も感じさせずに自身らのオリジンを接続させていく感覚がとてもすばらしい。取り込む・取り込まれるという関係ではなくナチュラルに両者をオーヴァー・ダビングしていくようなところには、おそらくは彼らの拠って立つ場所や皮膚感覚のそのものがあるのだろう。この1曲があることにおいて、本作品はマイナー・ローカル・バンドのアルバムとして絵葉書のようにものめずらしく眺められることにとどまらない、深みとアート性を帯びることになると思う。

橋元優歩