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倉本諒   Oct 27,2014 UP
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 〈レッドブル・ミュージック・アカデミー〉が主催するイヴェントに招聘され、およそ2年ぶりに東京を訪れたマシューデイヴィッド。熱燗をグイグイ流し込みながら同じ話をえんえんと繰り返すさまを眺めながら、僕はこの男が短い休暇を存分に楽しんでいることを確信した。

 自身の作家活動とレーベル・ワークを持続させるのは難しい。〈リーヴィング・レコーズ〉はマシューの美意識の変容をDIYレーベルとして展開してきた。近年は〈ストーンズ・スロー〉のサポートによってLAビート・シーンの“ニュー・エイジ"サイドを担うカセット・レーベルの老舗といった風格すら漂よわせている。80~90年代のビザール・ニューエイジ系カセット・レーベルをディグることにもっぱら夢中になっていると漏らすマシューの最近の趣向が、なるほど、リーヴィングにも如実に表れている。とはいえ、新たなアーティストを発掘するだけでなく、レーベル・ファミリーといえるようなお馴染みのメンツたちもマシューと世界観を共有しながらそのサウンドを変容させているように思えるのは彼のカリスマ性ゆえであろうか?

 2011年、〈リーヴィング〉から『ソート・ハズ・ウィングス(Thought Has Wings)』をリリースしたベルギーのサリヴァ(Ssaliva)ことフランツ・ベーカーは、ヴェイパーウェイヴ黎明期を感じさせるそのズッコケ・テープワープ・ビートで当時密かな話題を呼んだ。別名義であるカップ・ケイヴ(Cup Cave)の精力的なエクスペリメンタル・ビートメイカーとしての活動を考慮すればサリヴァはフランツの考えるベッド・ルーム・ビートの定義なのかもしれない。

 約3年ぶりにサリヴァ名義で〈リーヴィング〉からリリースされた『パンターニ(Pantani)』は前作とは決定的に異なるビート・メイキングが収録されている。テープワープ、テープコンプといったローファイ・サウンドは鳴りを潜め、コズミック・シンセジスとスクリュード・ビートの融合とも呼べる新たなスタイルを提示。フラフラとした旅路で、日中は散歩をしながら写真などを撮り、夜な夜な異なる寝床でこのヘッドホン・ミュージックを制作したと語るフランツ。ヴァーチャルからリアルへ変化した彼のサウンド・スケープはまた我々に最高のトリップを約束してくれる。


倉本諒