ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. Quit Your Band! ──イギリス人ジャーナリストによるJポップ批評、『バンドやめようぜ!』刊行のお知らせ (news)
  2. Melanie De Biasio - Lilies (review)
  3. AFX - London 03.06.17 [Field Day] / AFX - Korg Trax+Tunings for falling asleep / AFX - Orphans (review)
  4. Nicola Cruz ──エクアドルの電子音楽家、ニコラ・クルース初来日決定 (news)
  5. Nils Frahm ──ニルス・フラームが年明けにニュー・アルバムをリリース (news)
  6. L.A. Witch - L.A. Witch (review)
  7. Flava D ──フレイヴァ・Dが再来日、東京・大阪・高知を巡遊 (news)
  8. interview with doooo マッドでファニー、盛岡からやって来た気鋭のビートメイカー (interviews)
  9. Lee Gamble - Mnestic Pressure (review)
  10. Columns ハテナ・フランセ 第11回 フレンチ・エレクトロニック・ミュージック;メジャー編 (columns)
  11. パーティで女の子に話しかけるには - (review)
  12. interview with Yukio Edano つまり……下からの政治とはいったい何なのか (interviews)
  13. New Sounds of Tokyo 東京でもっとも尖っている音楽をやっているのは誰だ? (interviews)
  14. interview with Mount Kimbie 生き残ったのは誰だ (interviews)
  15. Oneohtrix Point Never ──OPNが新たなミックス音源を公開 (news)
  16. interview with IO - KoolBoyの美学 (interviews)
  17. 音楽と建築 - ヤニス・クセナキス 著 高橋悠治 編訳 (review)
  18. King Krule - The Ooz (review)
  19. Cid Rim - Material (review)
  20. Taylor Deupree & Marcus Fischer ──〈12k〉のテイラー・デュプリーとマーカス・フィッシャーが来日、東京・奈良・岡山をツアー (news)

Home >  Reviews >  Album Reviews > Leviathan- Scar Sighted

Album Reviews

Leviathan

Black MetalNoise

Leviathan

Scar Sighted

Profound Lore

Tower HMV Amazon iTunes

倉本諒   Mar 20,2015 UP
このエントリーをはてなブックマークに追加

 数年前に〈ノイジー(noisey)〉から公開された孤独なメタル野郎3人の取材をもとに制作されたドキュメンタリー、『ワンマンメタル』を観られた方はおられるだろうか。この世にはバンドを結成することすら拒絶し、全パートを独りで演奏、録音までこなし、そして多くはライヴすらおこなわないというワンマン・ブラックメタルなる精神不衛生極まりないジャンルが存在する。『ワンマンメタル』は、それぞれ孤独で歪んだ3人の男の内面と音楽性に迫るインタヴューで構成される。ストライボーグは不治の中二病、ザスターはサイコパス、そしてこのリヴァイアサンは絶望といったところであろうか。これを観て、それまで聴いたリヴァイアサンの音源に対して異常な説得力を感じてしまった。

劇中のインタヴューと重複するので、興味を持った方はユーチューブで視聴していただきたいのだが、リヴァイアサンことレスト、本名ジェフ・ホワイトヘッドはカリフォルニア州オークランドで彫り師として働いている。ティーネイジャーで早々に学校をドロップアウトし、ホームレスとなったジェフは、友人宅のカウチを転々としながらスケート三昧の生活をサンフランシスコで送っていた。プロ・スケーターとして成功し、『スラッシャー』の表紙を飾り、スーファミ用のスケボー・ゲーム、『スケート・オア・ダイ2』のジャケにもなっていたそうだ。スケボー以外の居場所を見出せなかったジェフはスケート・ブランドのグラフィックを制作するなどして生活していた。本人いわく、「最高に楽しかったよ」──まるで絵に描いたようなサンフランシスコの悪ガキの夢を実現させていたと言えよう。

そのような生活の中、自然な流れでパンクやマスロックのバンドなどで活動していたジェフにとって、ブラックメタルとは、誰の力もかりずに完遂できるスケート・カルチャーに通じるDIYな方法論であったのかもしれない。ルーカー・オブ・チャリス(Lurker of Chalice)もまたジェフによるワンマン・ブラックメタル・プロジェクトで、リヴァイアサンの血なまぐさい暴力的なサウンドとは異なった美しいアンビエンスとメロディを聴かせる、USブラックメタルにおける重要なプロジェクトだ。

リヴァイアサンがジェフの憎悪であるのに対して、ルーカーの美旋律は彼のミューズへの愛である。彼は劇中で恋人がガンの長い闘病生活の末、脳への転移に苦しみ、自ら命を絶ったことを告白する。想像を絶する悲しみのなかで引き蘢り、がむしゃらに音楽制作に没頭した末、ジェフ自身も自殺を試みるが未遂に終わり、さまざまな思い出が詰まったサンフランシスコからオークランドへ拠点をうつした。

これほどまでリヴァイアサンのサウンドに説得力を与えるエピソードはないだろう。重すぎる。暴行罪で起訴された後に出された前作『トゥルー・トレーター、トゥルー・ホア(True Trator, True Whore)』以来4年ぶりに〈プロファウンド・ロア(Profound Lore)〉より『スカー・サイテッド(Scar Sighted)』がリリースされた。圧倒的な暴力性とエモ過ぎるメロディ、荒れ狂う大地に降り注ぐ月光のごときアンビエンス、疾走する黒い魂を聴くことができる。

本作はボックス・セットとして発売され、ダニエル・ヒッグスからの影響もうかがえる(そもそもスケート、タトゥー、パンクロックに育まれた生活の中で影響を受けない人間はいないと思うが……)秀逸なアートワーク/イラストレーションを存分に堪能できるスペシャルなパッケージとなっている。ジェフいわく二度とやることはないというルーカー・オブ・チャリスも、噂によると膨大な未発表音源が眠っているらしく、ぜひとも同レーベルから近い将来の再発を望む。

単なるメロドラマやファッション、エンターテイメントとは異なるブラックメタルがここにある。

倉本諒