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SUBMARINE

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矢野利裕   Apr 01,2015 UP
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 TBSラジオ系『伊集院光 深夜の馬鹿力』を聴いていたら、番組の途中、おもしろいヒップホップの曲が流れていた。SUBMARINE“Midnight Tour Guide”である。すごくポップな曲だが、よく聴くとヘンテコでもある。「ここんとこほんともうトホホと声に出しちゃうほど脱力モード」という印象的なリリックではじまるこの曲は、その「脱力」な感じに、スチャダラパーなんかを思い出すが、声の感じやリリックの抒情性には、「あの小説の中に集まろう」(TOKYO NO.1 SOUL SET“More Big Party”)とラップするBIKKEを連想したりもする。フックでは、女性ヴォーカルがかわいらしく歌い上げており、エレピとギターとの絡み合いが爽やかで気持ちいい。そのフック部分が終わると、エレピとギターのループが細かくなって、ビートも少し変則的になり、トラックの展開がめまぐるしくなる。ポップで美しい曲だが、トラックに緊張感があって刺激的だ。ふいに前面に押し出されるベースにもドキッとする。

 そんな“Midnight Tour Guide”をリード・トラックに据えたのが、SUBMARINE『島唄』というアルバムだ。SUBMARINEは、MCの日渡正朗とトラックメイカーの新城賢一によって1999年に沖縄で結成されたグループである。本作は、以前から交流があったという□□□の三浦康嗣をプロデューサーとして迎えた、約8年ぶりの作品だ。ヒップホップ的なビート感は強く残しつつ、同時にヒップホップ的な様式美からかなり自由になったサウンドと構成が、とても新鮮に響く。そのあたり、□□□の感覚とも通ずるか。サウンド・プロダクションはけっして一筋縄ではいかないが、ポップでカラフルな音色に仕上がっているぶん、広いリスナー層にアピールする。とくに、歌モノやシンガーソングライターのファンには、ぜひ本作をチェックしてほしいと思う。本作を貫くメロディーラインやコーラス、アコースティック色を残したサンプルの数々などは、とてもSSW的な温かみがある。実際アルバムには、三浦によるピアノ弾き語りの“Midnaight Tour Guide”のヴァージョンまで収録されている。ビート・ミュージック的な側面からアコースティック的な側面まで見事に共存しているのが、本作の最大の魅力だ。
 このような作品世界を考えたとき、特筆すべきはやはり、7分半にも及ぶ大作“導かれし者たち”である。三浦以外にも、西尾大介(ALOHA)、小島ケイタニーラブ(ANIMA)、夙川アトム、伊藤豊(カズとアマンダ)を客演に迎えたこの曲は、サビでのケイタニーの唯一無二の歌声を中心に、ドタバタした生ドラムのサンプルやキーボードが響いて、温かく美しいサウンドが広がっている。ケイタニー含め、その他のゲスト陣もラップのようなヴォーカルのようなものを披露しており、ポッセカットのようになっているのが楽しい(ちなみに、ANIMAのファーストアルバムを聴いたとき、いつか小島ケイタニーラブのラップが聴いてみたい、と強く思っていたので、それが実現したのが個人的には嬉しい)。その他、“Angel”とその姉妹編のような“Beauty × Beauty”、あるいは“深海魚”など、温かみのあるトラックと日渡ののびやかなラップが、全編にわたって聴きどころである。

 とはいえ、このアルバム、やはりヘンテコなところもあって、先の“導かれし者たち”も、歌詞はひどい下ネタだったりする。あるいは、アルバム冒頭の“VAMPIRE EMPIRE”は、吸血鬼の立場からラップをした曲で、トラック自体もヴァンパイアをモティーフにしたものになっている。さらによくわからないのは“道”という曲で、ビズ・マーキーばりの(?)ヘタウマな歌声で行進曲のパロディが歌われている。うーむ、底知れない。冒頭にも書いたように本作のリリックは、「脱力」系で笑ってしまうものが多いのだが、それがしっかりと作り込まれたサウンドに乗せられているのが、またおもしろい。ポップに聴き流しているつもりでも、よく聴くと、「なんだ、この歌詞!?」みたいな。それは、SUBMARINEというグループが持つイタズラ心のようなものにも思える。心地よく美しいサウンドのなかに、チクリと刺激的。これがやけに中毒性があって、やめられない。本当に温かみのあるアルバムなのだが、温かいだけでは終わらない不穏さもしっかりと抱え込まれている。

矢野利裕