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橋元優歩   Apr 30,2015 UP
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 ファックト・アップにもギタリストとして参加するヤング・ガヴァナーことベン・クックの、初のソロ・アルバムがリリースされた。ファックト・アップと記すとファックト・アップ・ファンが聴くものとどこか限定されてしまいそうだけれども、本作は一見彼らの対角線上にあるような、アリエル・ピンクやマック・デマルコ、あるいは〈スランバーランド〉や〈キャプチャード・トラックス〉のギター・ポップ、もしくはガールズなどのファンこそ──近年のUSインディ、ことに2000年代末に2000年代末のやり方で(=ガレージーでサイケデリックでシューゲイジンでニューウェイヴィなやり方で……と書くといっこも新しい要素がないみたいだけど)ギター・ロックのリアリティを更新してきたアーティストたちが気になるリスナーこそ聴くべき作品だ。ファックト・アップはもちろん素晴らしいバンドだけれど、ダミアン・アブラハムのインパクトとベン・クックのこのソロ作の音楽性とのあいだにはひとまず関係はない。両者がハードコアを概念的にも方法的にも共有していることはたしかだが、まあ、まずは聴いてみれば瞭然とすること。『ライプ・フォー・ラヴ』のジャケと音だけに触れてみれば、それはあたかもフレッシュな新人……もしくはすこし注意深く聴けば、年齢のいった新人の作品として深い印象を残すだろう。若い人間では得られない時間と経験の堆積が味わいとして滲み出つつ、しかし、その音はとてもみずみずしい。たとえばダックテイルズにおいてエクスペリメンタリズムであったはずの深いリヴァーブや粗いプロダクションは、ここでは微量の疲労感や「やれやれ」感として鳴っているようでもあり、それはひりっと切ない。

 “クラッシング・センセーション”などは〈キャプチャード・トラックス〉以降のガレージ・ナンバーとして、ニューウェイヴィな打ち込み音楽との折衷がありつつもオーセンティックな味わい。アルバム全体のムードを統べるのはそうした曲調だが、“クローリング・バック・トゥ・ユー”など、ティーンエイジ・ファンクラブかという堂々たるギター・ポップ、“リヴィン・ザ・ドリーム”のラヴからハーマンズ・ハーミッツまで彷彿させるソフト・サイケがはさまり耳の食欲を刺激する。さらにポップスとして奥行を加えているのが、表題曲の“ライプ・フォー・ラヴ” や“ロング・クラウド(Wrong Crowd)”など、プリンスからホール&オーツ、またスタイル・カウンシルなどを思わせ、ソウルを介してニューウェイヴやネオアコをつらぬくようなトラック。とくに終曲の“ロング・クラウド”は7分強とアルバム内ではダントツに長尺で、GWの浮かれた空気からスムーズにチルアウトするにはもってこいだ。若い痛みや苦みが経年によって心地よく摩耗したようなこれら楽曲のフィーリングが、前掲のアリエル・ピンクかマック・デマルコか、はたガールズかダックテイルズかといった現在形のモードと混在しているところがとてもいい。

 かといって「普段聴きにちょうどいい」というような機能性が目指されているわけでもないことは“アクエリアン”ラストの意味不明なノイズなどにもあきらかだ。人への、ライフへの、音楽への「愛が熟した」タイミングに実った、きっとそんな作品なのだろうと思う。

橋元優歩

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