ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. Moritz Von Oswald Trio - Dissent (review)
  2. Lucrecia Dalt & Aaron Dilloway - Lucy & Aaron (review)
  3. Autechre × Humanoid ──オウテカがヒューマノイドのレイヴ・アンセムをリミックス (news)
  4. interview with Lucy Railton 〈モダーン・ラヴ〉からデビューした革新的チェリストの現在 (interviews)
  5. Abstract Mindstate - Dreams Still Inspire (review)
  6. interview with Jeff Mills + Rafael Leafar 我らは駆け抜ける、ジャズとテクノの向こう側へ (interviews)
  7. Marisa Anderson / William Tyler - Lost Futures (review)
  8. There are many many alternatives. 道なら腐るほどある 第6回 笑う流浪者、あるいはルッキズムに抗うための破壊 (columns)
  9. Cleo Sol - Mother (review)
  10. 地点×空間現代 ——ゴーリキーやドストエフスキー、ブレヒトや太宰の作品を連続上映 (news)
  11. Tirzah - Colourgrade (review)
  12. Juan Atkins & Moritz von Oswald - Borderland / Moritz von Oswald Trio - Blue (review)
  13. interview with Joy Orbison ダンス・ミュージックは反エリート、万人のためにある (interviews)
  14. Lawrence English - Observation Of Breath (review)
  15. Moritz von Oswald & Ordo Sakhna - Moritz Von Oswald & Ordo Sakhna (review)
  16. House music - (review)
  17. P-VINE & PRKS9 Presents The Nexxxt ──ヒップホップの次世代を担う才能にフォーカスしたコンピがリリース (news)
  18. DJ TASAKA - KICK ON (review)
  19. Little Simz - Sometimes I Might Be Introvert (review)
  20. Nav Katze ──メジャー・デビュー30周年を迎えるナーヴ・カッツェ、全作品が配信開始 (news)

Home >  Reviews >  Album Reviews > Young Guv- Ripe 4 Luv

Young Guv

GarageIndie PopPsychedelic

Young Guv

Ripe 4 Luv

Slumberland

Amazon iTunes

橋元優歩   Apr 30,2015 UP
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 ファックト・アップにもギタリストとして参加するヤング・ガヴァナーことベン・クックの、初のソロ・アルバムがリリースされた。ファックト・アップと記すとファックト・アップ・ファンが聴くものとどこか限定されてしまいそうだけれども、本作は一見彼らの対角線上にあるような、アリエル・ピンクやマック・デマルコ、あるいは〈スランバーランド〉や〈キャプチャード・トラックス〉のギター・ポップ、もしくはガールズなどのファンこそ──近年のUSインディ、ことに2000年代末に2000年代末のやり方で(=ガレージーでサイケデリックでシューゲイジンでニューウェイヴィなやり方で……と書くといっこも新しい要素がないみたいだけど)ギター・ロックのリアリティを更新してきたアーティストたちが気になるリスナーこそ聴くべき作品だ。ファックト・アップはもちろん素晴らしいバンドだけれど、ダミアン・アブラハムのインパクトとベン・クックのこのソロ作の音楽性とのあいだにはひとまず関係はない。両者がハードコアを概念的にも方法的にも共有していることはたしかだが、まあ、まずは聴いてみれば瞭然とすること。『ライプ・フォー・ラヴ』のジャケと音だけに触れてみれば、それはあたかもフレッシュな新人……もしくはすこし注意深く聴けば、年齢のいった新人の作品として深い印象を残すだろう。若い人間では得られない時間と経験の堆積が味わいとして滲み出つつ、しかし、その音はとてもみずみずしい。たとえばダックテイルズにおいてエクスペリメンタリズムであったはずの深いリヴァーブや粗いプロダクションは、ここでは微量の疲労感や「やれやれ」感として鳴っているようでもあり、それはひりっと切ない。

 “クラッシング・センセーション”などは〈キャプチャード・トラックス〉以降のガレージ・ナンバーとして、ニューウェイヴィな打ち込み音楽との折衷がありつつもオーセンティックな味わい。アルバム全体のムードを統べるのはそうした曲調だが、“クローリング・バック・トゥ・ユー”など、ティーンエイジ・ファンクラブかという堂々たるギター・ポップ、“リヴィン・ザ・ドリーム”のラヴからハーマンズ・ハーミッツまで彷彿させるソフト・サイケがはさまり耳の食欲を刺激する。さらにポップスとして奥行を加えているのが、表題曲の“ライプ・フォー・ラヴ” や“ロング・クラウド(Wrong Crowd)”など、プリンスからホール&オーツ、またスタイル・カウンシルなどを思わせ、ソウルを介してニューウェイヴやネオアコをつらぬくようなトラック。とくに終曲の“ロング・クラウド”は7分強とアルバム内ではダントツに長尺で、GWの浮かれた空気からスムーズにチルアウトするにはもってこいだ。若い痛みや苦みが経年によって心地よく摩耗したようなこれら楽曲のフィーリングが、前掲のアリエル・ピンクかマック・デマルコか、はたガールズかダックテイルズかといった現在形のモードと混在しているところがとてもいい。

 かといって「普段聴きにちょうどいい」というような機能性が目指されているわけでもないことは“アクエリアン”ラストの意味不明なノイズなどにもあきらかだ。人への、ライフへの、音楽への「愛が熟した」タイミングに実った、きっとそんな作品なのだろうと思う。

橋元優歩

RELATED

Fucked Up- Glass Boys Matdor / Arts & Crafts/ホステス

Reviews Amazon