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岩渕亜衣   Jun 12,2015 UP
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 誰に見せるわけでもない日記帳に書かれた日々の些細な出来事や考えや気持ち。ホップ・アロングの紅一点ヴォーカルのフランシス・クインランが書く詞にはそんな印象を受ける。他人から見ればたいしたことじゃないかもしれないけれど、一日一日を過ごしていくなかで身の回りで起きたことや考えたことや小さな幸せや小さな怒り、悲しみ。本人にとってはとても刺激的でリアルな毎日で、それを他人に押し付けるわけでも共感を求めるわけでもなく、ただ淡々と吐き出すように語り、書きとめているかのようだ。

フィラデルフィアを拠点とする4人組、ホップ・アロング。USインディ、それも最新型というよりはアメリカーナのエッセンスを感じさせ、90年代のなつかしさすら漂わせる、エモやメロディック・パンクを引き継ぐバンドだ。けれど彼らを「新しくない」という一言で切り捨てることはできない。そこにある美しさや生々しさは、歴史が磨いてきたフォームによって生かされているとも言えるからだ。

彼らの曲作りは、まずはフランシスが一人で歌詞を完成させ、それから彼女の実の兄であるドラマーのマーク・クインラン、ベースのタイラー・ロング、ギターのジョー・ラインハルトが加わり楽曲を完成させていくという、はじめに歌詞ありきのスタイルだそうだ。それを裏付けるように、今作『ペインテッド・シャット』のレコードのインサートにはフランシスの手書きの歌詞がぎっしりとプリントされている。クリアでポジティヴなメロディには、たくさんの言葉が詰め込まれている。語感のいい言葉選びで安易にポップにしようとしたりはせず、話したいことがたくさんあるんだとばかりに少し枯れた声で、喋るように歌うフランシスのスタイルは、キム・ディールやリズ・フェア、またコートニー・バーネットとも重なる。

 歌詞先行の曲作りとはいえ、楽曲も詞に合わせて気を使うばかりでもない。気持ちよい朝を描写しながら唐突として「みんな悩んでいるんだ」と悟る“ザ・ノック”や、子どもにゲンコツをくれているお父さんを見かけてそれをただ見ていた自分を描いた“パワフル・マン”など漠然とした不安感や内省的な感情をテーマにした歌詞が並ぶものの、楽曲はつねに澄みわたるようにまっすぐで疾走感があるのがおもしろい。〈ポリヴァイナル・レコーズ〉のエモの正統的アーティストたち、それにウィーザーやスーパーチャンク、ガイデッド・バイ・ヴォイシズなどを思わせる磨かれたメロディとバランス感覚を持っている。男性陣の演奏もフランシスの歌と詞に遠慮なく競い合い、女だからと優遇せず対等な関係性であることもかえってフランシスを縛らず、ホップ・アロングの魅力をひきだしていると思う。アルバム後半、“ウェル・ドレスト”のラストの自由で伸びやかなハミングにそれを強く感じた。

 音楽周辺で例を挙げるなら、たとえばバンドのお飾りや華になるとか、フェミニズムをもって男たちに立ち向かったり政治的な強い主張を行うとか、かわいいピアスやケーキをインスタグラムにアップしたりガーリーなジンを作るとか、奇抜な服を着てエレクトロニクスを操るとか、頭の中が恋愛のことばかりで彼氏と絶対に絶対によりを戻すとか戻さないとか。女性が全力で輝くことが求められる時代で女性たちはキラキラすることに忙しい。女性性を全面的に出しすぎていないホップ・アロングの音楽は、いつもキラキラしていなくても焦らなくていいのよー、と等身大の個性と感受性で日々を生きることをあらためて認めてくれるようで、とても安心させられる。

岩渕亜衣