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Shamir

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木津毅   Jul 02,2015 UP
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 2015年はレインボウ・カラーとシャミールのカラフルなポップスの年だったとのちに記憶されるだろう。いま、インターネット上にこれでもかと溢れる虹色に――ブーム化した「性の多様性」――僕などはアンビヴァレントな気分になりもするが、鼻にピアスを開けたこの1994年生まれの若者の(出自はムスリムだという)、かわいくデコレートされたディスコ・ミュージックはあっけらかんと現代のクィアネスを射抜いてくる。その若者、シャミールは自分のジェンダーを定義していないとインタヴューで言っているが、それはたぶん嘘のない発言だろう。フランク・オーシャンのカミングアウトの痛みはそこにはない。ジェンダーとセクシャリティにおいて、時代は本当に変わったのだ。

 しかもシャミールはヴィジュアルの打ち出し方がそれ以上ないほどに巧みだった。アーリー90sを思い起こさせるようなファッションやカラフルすぎてキッチュな色づかい、なによりもファンシーでフェミニンな本人の佇まい。昨年のシングル“オン・ザ・レギュラー”のヴィデオは、シャミールというアイコンのファッショナブルさとキャッチーさをパーフェクトにプレゼンしていた。FKAツィッグスに続いて〈XL〉がプッシュするニューカマーなわけである。

 音のほうもさまざまなトレンドが交錯する地点にいる。90sリヴァイヴァルとしてのハウスにディスコがまずあり、そこにここのところのR&Bブームが合流して……クィア・ラップからもそう遠くないだろう。リヴァイヴァルといっても古さが感じられないのは、カウベルを筆頭としたパーカッションの使い方にゼロ年代の〈DFA〉が取り組んだことの成果が反映されているからで、ということは遠景にアーサー・ラッセルのディスコも見えてくる。だが5分を超えるトラックはラストの“ヘッド・イン・ザ・クラウズ”のみ。前半5曲、なかでも“メイク・ア・シーン”、“オン・ザ・レギュラー”、“コール・イット・オフ”と3分以下のナンバーが続く目まぐるしい展開は、すぐに酔ってしまう高速のメリーゴーラウンドかのようだ。バンシーなビートと子どものイタズラみたいな声ネタ、腰をグラインドさせるベースライン、丸くて太いシンセ・リフと、それに乗っかるおきゃんなシャミールのヴォーカル。そのアンドロジナスなディスコ・サウンドからハーキュリーズ・アンド・ラヴ・アフェアとよく比べられるようだが、ハーキュリーズの暗さや妖しさはここにはない。唯一のスロウなバラッド“ダーカー”でも、陰よりも温かな安堵のフィーリングがある。

 この即効性の享楽をどう捉えるかでシャミールの評価は分かれるのだろう。ただ、これくらいの軽妙さが新時代のポップ・スターにはふさわしいのだろう。ブラック・ミュージックの美味しいところをつまみながら、いまのところ何かの主張を強く打ち出すことはしていない。が、少なくとも3分間は、シャミールのポップスは性の束縛からの自由を約束している。

木津毅