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P-FUNK ALL-STARS

Funk

P-FUNK ALL-STARS

LIVE AT THE BEVERLY THEATER IN HOLLYWOOD

Pヴァイン

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河地依子河地依子   Nov 18,2015 UP Old & New
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 オリジナルは90年に発売され、近年は廃盤になったままだったが、先ごろ知らないうちにリイシューされていた。タイトルの中に記載はないが、83年の「Atomic Dog Tour」の終盤のLA公演を収録したものだ。“Atomic Dog”と言えば、スヌープ・ドッグでもおなじみのフレーズ「Bow-wow-wow-yippie-yo-yippie-ay」を含むオリジナル曲。82年にジョージ・クリントンのソロ名義で発表された『Computer Games』から大ヒットした曲で、サンプリングに使われることの多いPファンクの曲の中でも、アイス・キューブ、ビッグ・ダディ・ケイン、デジタル・アンダーグラウンド、2パック、レッドマン、NASを含め、もっとも多くサンプリングされているのではと言われる有名曲だ。80年代に入って、Pファンクは様々な事情から急激に失速し、81年には一派離散の状態にまで追い込まれたが、この曲の大ヒットによって、しばし休止されていたツアーを再開できる状態に持ち直した。そして本作は、久々のツアーを楽しむメンバーたちの最高のパフォーマンスが収められた名盤だ。

 だからいつ聴いても、こうやって固唾をのんで聴き入ってしまう。ヒップホップ世代が好むあらゆる音色を70年代にすでに作り出していたと言っても過言ではないキーボード奏者のバーニー・ウォーレルのソロによる“Chocolate City”が流れる中、JBのバンドでサックスをブロウしまくっていたメイシオ・パーカーが、ほどよい緊張感を伴う煽り効果抜群のMCをはじめ、演奏が“P-Funk”に切り替わると、待ちきれないオーディエンスが歌い出す。バーニーの演奏がバッキング風に移行し、“Do That Stuff”と“Joyful Process”を調子よく挟みながら進行すると、ドラムスのデニス・チェンバースとベースのロドニー・スキート・カーティスの鉄壁のリズム・セクションが加わり、気が付くとギターも加わっている。メイシオの紹介に導かれてPファンク・ホーンズの3人も元気よく加わり、ここでも“Do That Stuff”のフレーズが挟まる。
 そしてジミ・ヘンドリックスに勝るとも劣らない天性のギタリストのエディー・ヘイゼル、高校卒業と同時にPファンク入りしたマイケル・ハンプトン、ジャズからロックに至るまで高度に対応できるブラックバード・マックナイトらのギタリストが紹介され、ドラムスの合図で全員での演奏が一丸となって最高潮に達する。その後、すっと音量を控えると、ロン・フォード、ピーナット・ジョンソン、マイケル・クリップ・ペイン、ゲイリー・マッドボーン・クーパー、ライジ・カリーのヴォーカル陣によるタイトなコーラスが加わり、次いで再度、演奏が爆発するとギター・ソロが絡み合い、トドメはオムツのゲイリー・シャイダーの強力なシャウト! このメリハリ効きまくりのオープニングの高揚感には、聴くたびに同じだけワクワクする。その後のすべての曲も、3本のリード・ギターの大音量の絡み合い、パーカッション奏者が別にいるのかと思うほど千手千足観音のドラムス、メロディアスにグルーヴするベース、解き放たれた奔放なキーボード、やたらに勢いのあるホーン隊、息の合った美しいハーモニー、ナスティな大声の瞬発力のあるリード・ヴォーカル。これらがひとかたまりになって、ぐわんぐわん転がり抜けていくスリリングな演奏の連続だ。

 でも、このライヴはみなさんが思い描いているPファンクのライヴとは、ちょっと様子が違うかもしれない。通常、Pファンクのライヴは、実際はきちんとオーガナイズされているにせよ、もっとルーズでごちゃごちゃした猥雑な楽しさが前面に出ることが多い。だがこの時は、60年代終盤からの“Go crazy!”(クレイジーにいこう!)という方針はそのままに、高度な音楽性との融合が実現された奇跡的なライヴなのだ。それゆえ、あまりPファンクらしくないと言われることもあるが、何と言われようと私はこのライヴ盤が大好きだ。

 中でも特に好きなのは、Disc 2 の2曲目の“One Nation Under A Groove”だ。ゲイリーの“Is this one natiooooooon?”という渾身のシャウトに続き、序盤こそオリジナル通りだが、中盤以降は小刻みに跳ねるリズミックなブリッジを挟んで、ぐっとジャジーで柔らかく幻想的な彩りのアレンジとなる。このPファンクらしからぬ美しいアレンジは、メイシオのMCにも聴き取れる「ボルティモア・コネクション」というバンドが鍵。Pファンクのツアー休止中に、スキート、デニス、Pファンク・ホーンズを含むボルティモア周辺のメンバーたちが組んでいたバンドだが、彼らが自分たちのショーで同曲を演奏していた時のアレンジが、ここにそのまま持ち込まれたのだ。こんな名演奏にも関わらず、アナログ(2枚組)では収録時間の制約のため未収録、そのためCDではボーナス扱いになっているのが泣ける。そしてこの曲に限らず、このライヴでのボルティモア・コネクションが果たした役割はとても大きい。

 ところでこのライヴには3つの特徴がある。まずはPファンク名物のひとつである女性コーラス隊の不在、つまりバンドは完全なる男の世界であること。その理由は未確認だが、みんなが待ち望んだツアーの再開にあたって、惚れた腫れた的な余計なことで集中力が削がれないように、ジョージがあらかじめその可能性を排除したのでは、というのが私の推測だ。ふたつめは、このツアーの音楽監督でもあったメイシオがサックスを吹かずMCに専念し、演奏は唯一、“Maggot Brain”のイントロのフルートだけであること。これはたぶん先のボルティモア・コネクションとも関係があり、すでにまとまっているPファンク・ホーンズに先輩格のメイシオが加わって調和を乱すより、MC役に徹したということではないかと思う。最後のひとつは、久々の晴れ舞台のわりに、ジョージの出番が思いの外、少ないこと。いつのショーでもオープニングから登場までや、ギター中心のインスト“Maggot Brain”をはじめ、ジョージが袖に引っ込んでいる時間は結構あるが、本作の音を聴く限り、“Knee Deep”と“One Nation Under A Groove”も、ほとんどゲイリーに任せっきりで、いつも以上に存在感が薄いように感じる。でもこれは逆に言えば、ジョージの存在感に頼る必要がないほど、この時のバンドは充実していたということでもあるのだろう。

 そういうわけで、いろいろな意味で珍しくも素晴らしいPファンクのライヴを、何度でも聴いて、ひとりひとりの演奏の隅々に至るまで存分に味わってほしい。何度、繰り返して聴いても飽きないどころか、そのたびに新発見があって楽しさが増すことは、本作が発売された90年から四半世紀、いまだにその体験を継続中の私が保証する。

 最後に、冒頭のMCでブーツィーの名前が聞かれるので不思議に思った人もいるかもしれないが、ブーツィーは兄のキャットフィッシュとともにこのツアーに同行しており、本作には未収録ながら、ショーの後半で“Body Slum”を披露していたことを付記しておこう。

河地依子