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Susumu Yokota

AcidAmbientTechno

Susumu Yokota

Acid Mt.Fuji (SPECIAL REMASTERED EDITION)

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野田努   Apr 08,2016 UP
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 ダンス・カルチャーとは朝まで踊ること。いちどダンスフロアに出たら水分補給以外はフロアに居続けること。現実には起こり得ないと思っていたことが目の前で起きていること。知り合いと会うと、いや、初めて会ったひとともハグしあって、「愛してるよ~」と真顔で言い合うこと。気持ち悪いよなぁ、でも当時はそれが普通だった。で、明け方、帰るときに(踊りすぎで)膝がガタガタになっていることに気がつくこと。ダンス・カルチャーとは朝日がやたら眩しいこと。あるいはトイレ付近で……(これ以上は書かないでおこう)。
 あの地下の階段を下りるときいつもドキドキした。今夜は何が起きるんだろう、明け方にはどうなっているんだろうと思ってドアを開けた。クラブはビールを片手に談笑する場ではなく、ただ無心に踊る場であり、クラバーはDJを見るのではなくお互い(もしくは宇宙)を見ていた。これが1992年から1994年の東京の週末に起きていたことだった。

「ダンス・カルチャーとは、ラジカルに対立するふたつのレイヴすべてに関する事柄が一体化されたものである。ひとつ、トランセンデントラル(超越的)で、ネオサイケデリックかつより高次な意識の論述──ヒューマニティ/ガイア/宇宙が結合する海。もうひとつ、エクスタシーとレイヴ・カルチャーがせき立てる10代の安っぽいスリルのラッシュ・カルチャー……」サイモン・レイノルズ『Generation Ecstasy』

 この狂騒の季節において欧州(とくにUKとドイツ)の主要都市では、多くの記録者(プロデューサー)が多くのドキュメント(作品)を残しているが、横田進は東京において数少ない記録者のひとりだ。この度サブライムから再発された『Acid Mt.Fuji』は彼の代表的な記録のうちの1枚。1994年の作品である。
 じつはこの前年のEBI(海老)名義のアルバム『Zen』(ベルリンのスペース・テディからリリース)やFrankfurt-Tokio-Connection名義の諸作(フランクフルトのハートハウスからリリース)の頃がダンス・ムーヴメントのピークだったので、『アシッド富士山』はその第一段階の最終章と言える。メロディ重視の曲作り、ささやかなアンビエント・タッチは熱から冷めようとする次の季節の予兆ともいまとなっては言えるが、まあやはり、『アシッド富士山』(というタイトル)であることは誤魔化しようがない。再発されたこのCDには、1994年6月の伝説のライヴが収録されているが、それは狂騒の季節の記憶の断片、それ以外の何ものでもない(そういう意味では貴重な音源)。
 ぼくは1995年の『Metronome Melody』を評価している。透き通った音色の綺麗なメロディ、それが横田作品の最大の魅力だったと思っているからで、実際の彼も物静かで耽美的な人だった。しかし本来ならダンスしなかったそういうひとたちもダンスなしではいられなかったのが1992年~1994年の東京のアンダーグラウンドだった。あれは何だったんだろう……何年も経って、いろいろな人がさまざまなことを考えている。ある海外の批評家が、あれは、社会のさまざまなプレッシャーから集団まるごと解放されてしまった状態であり、ゆえに当たり前だと思っていたことがじつはプレッシャー(抑圧)だったと気づいてしまったと、よってノンポリ集団が社会とリンクしていくのである云々と分析していたことがあったけれど、それはたぶん正解で、たぶん間違ってもいる。

 去る3月27日は横田進の一周忌ということで、生前につきあいのあった人たちが集まった。その会場となった渋谷のクラブ・ギャラクシーに向かう途中で、桜を見ながら、ああ、横田さんはこんなに桜が綺麗なときに亡くなられたのか、そういえば彼の最高傑作の1枚は『SAKURA』というタイトルだったな、と思った。

野田努