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Frankie Cosmos

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Frankie Cosmos

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橋元優歩   Apr 14,2016 UP
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 ああ、短い。1分、2分たらずのポップ・ソングが15曲。気がつけばすべて終ってしまっていて、しかしその終ってしまった時間のなつかしいこと……。

 いわゆる2ミニット・ポップというのとはニュアンスがちがう。楽天的でキャッチー、かつ鉄壁のポップ・フォーマットを持っている、というのではなくて、それはさながらため息のような、笑い声のような、問いかけであり独白であるような、とりとめのない一筆書きの感情の束というのに近い。「曲」という単位がふさわしいのかどうかもわからない。メモ紙が風に飛ばされるようにわっとこちらにやってきて、その白い残像を網膜にやきつけてどこかへ消えていく。なんと軽やかで、しかしなんという質量をもっていることか。

 ああ、いまのあれは何だったのだろう……心地よい渇きとともにあらためてわれわれはその名を記憶する。フランキー・コスモス。ニューヨークのシンガーソングライター、グレタ・クラインのプロジェクト。齢20歳ちょっと。2014年の『ゼントロピー(Zentropy)』をご存知のかたも少なくないはずだ。しかし彼女を聴くのに順序やバイオは関係ない。どこを切ってもそのままのフランキー・コスモスが姿をのぞかせるし、彼女に触れることがそのまま彼女を聴くことになるということを私たちはすぐ知ることになる。

 ローファイでシンプル。ギター主体のバンド・アンサンブルが基本だが、楽曲をつくるのは彼女であり、あくまでクラインのプロジェクトとして成り立っている。素朴ではあるが、それを天然と呼ぶにはあまりに聡明かつ理性的、そしてヘタウマというにはあざとさがない。ビート・ハプニングを思わせる。キャルヴィン・ジョンソンのあり余るタレント性の中から、ちょっとした露悪性というかクセの強さを差し引くイメージだ。あるいはそのキャルヴィンによる〈Kレコーズ〉のタイガー・トラップの自然体を思い出す。旋律のひとつひとつが生き生きとして、風のように力が抜けている。かつ構成的でも様式的でもない。音楽でなくてもよかったのではないかという普遍性と、音楽でなくてはならなかった特別なよろこびに満ちている。

 歌われていることは、基本的には一人称の、クライン自身の生活に根差すことがらのようだ。物語性や詩的な飛躍が強いわけではないが、体験を生々しくつづるというのでもない。まだとても若いのに、どことなくものを儚み、倦んでいるような調子があるのがとても印象的だ。いまは離別したとおぼしき思い人の町をひとりで歩き、いろんなものに相手の気配を感じとっていくというかわいらしい心情の歌われる"O・ドレッデッド・C・タウン"も、最終的に耳に残るのは「I don't know or care to know」という諦めのニュアンスばかり。バンドには彼氏さんだというポーチズのアーロン・メインも参加し、彼のポーチズにもクラインが参加していて、昨年はふたりで制作したEP『フィット・ミー・イン』もリリース、ポーチズに寄った柔らかいシンセ・ポップが収められているばかりか、ジャケットのアートワークにもふたりを思わせる男女のドローイングを用いていて、とてもよい関係の中に音楽が紡ぎ出されていることはわかるが、恋にはじけ夢中になるというテンションはまるでない。

 若いことは華やいだことでなくていい──クラインのみずみずしさはティピカルな若さのモチーフを解体してくれる。そう気づいたとき、彼女の感じているはずの風や光が、生々しい量感を帯びて肌に触れてくる。それは筆者にとっても「ニュー・シング」とよぶべき瞬間だった。

橋元優歩