ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. Columns スピリチュアル・ジャズの名門〈Black Jazz〉の魅力とは (columns)
  2. Columns CAN:パラレルワールドからの侵入者 (columns)
  3. interview with Oneohtrix Point Never(Daniel Lopatin) OPNはいかにして生まれ、そして新作mOPNへと繫がったのか (interviews)
  4. BudaMunk & TSuggs - Thank And Gro (review)
  5. Autechre ──先日アルバムを送り出したばかりのオウテカが早くも新作をリリース (news)
  6. interview with Oneohtrix Point Never(Daniel Lopatin) OPNはいかにして生まれたのか (interviews)
  7. former_airline ──〈Call And Response〉からサイケデリックな新作をリリース (news)
  8. ralph ──気鋭の若手ラッパーがファーストEPをリリース、プロデュースは Double Clapperz (news)
  9. Lucrecia Dalt - No Era Sólida (review)
  10. interview with Meitei 海外で評判の新進電子音楽家、日本文化を語る (interviews)
  11. Vladislav Delay / Sly Dunbar / Robbie Shakespeare - 500 Push-Up (review)
  12. Nubya Garcia - Source (review)
  13. Oliver Coates - Skins n Slime (review)
  14. Autechre - Sign (review)
  15. Oneohtrix Point Never ──OPNがニュー・アルバムをリリース (news)
  16. Bruce Springsteen ──ブルース・スプリングスティーンが急遽新作をリリース、発売日は大統領選直前 (news)
  17. Richard Spaven & Sandunes - Spaven x Sandunes (review)
  18. R.I.P. 加部正義 (news)
  19. Rob Mazurek - Exploding Star Orchestra ──シカゴのジャズ・コルネット奏者ロブ・マズレクが新作をリリース (news)
  20. Wool & The Pants ──ウール&ザ・パンツのNTSラジオでのミックスショーが格好いいので共有させてください (news)

Home >  Reviews >  Album Reviews > Romare- Love Songs: Part Two

Romare

DiscoHouse

Romare

Love Songs: Part Two

Ninja Tune/ビート

Tower Amazon

小川充   Dec 09,2016 UP
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 古今東西、さまざまなアーティストが「愛」をテーマにしたアルバムを作ってきた。マーヴィン・ゲイ、プリンス、セルジュ・ゲンズブール……。ロメアーことアーチー・フェアハーストの『ラヴ・ソングス:パート2』も、そんな「愛」のアルバムだ。曲名や歌詞(だいたいがサンプリングによる引用である)のそこかしこに「愛」という言葉やメッセージが溢れ、ブラックネスに富む前作とは異なる甘美なムードが流れている。ファースト・アルバムであった前作『プロジェクションズ』は、ニーナ・シモンの曲や黒人霊歌はじめ、ジャズやブルースなどをモチーフとし、それは否が応でもアフロ・アメリカンのアイデンティティを想起させていた。ただし、ロメアーはアメリカの黒人ではなくイギリスの白人プロデューサーで、そうしたアフロ・アメリカニズムをあくまで素材のひとつとして用いていた。だから、『ラヴ・ソングス:パート2』における変容も、そうした素材の変化があれば当然だろう(もちろん、『プロジェクションズ』でのアプローチを本作でも延長している部分はある)。

 本作での素材として、ディスコなどからのサンプリングが挙げられる。ディスコの多くは「愛」をテーマにしているし、いろいろな人種や性が「愛」を求めて集まるところなので、そうしたアプローチとなるのも頷ける。ロメアー自身はネタを公表していないが、“フー・トゥ・ラヴ?”とかは明らかにドナ・サマーの“ラヴ・トゥ・ラヴ・ユー・ベイビー”が原型となっている(ロメアー本人はインタヴューで、ジミ・ヘンドリックスと彼のガールフレンドについての関係性を描いたと述べているが)。“オール・ナイト”とは、もちろんディスコの夜。ノーマン・ホイットフィールドが手掛けたテンプテーションズあたりを参考に、ファンクにブラック・サイケを加えたような味付けだ。“フー・ラヴズ・ユー?”もディスコに直結するムードを持ち、『ラヴ・ソングス:パート2』においてもっとも黒いフィーリングを感じさせ、『プロジェクションズ』の世界観を発展させた痕が窺える。“ジュ・テーム”からは、言うまでもなくセルジュ・ゲンズブールの影がチラつくが、作品自体はロメアーお得意のコラージュ調ナンバー。一方、“ハニー”は『プロジェクションズ』との違いを明らかにするようなエレクトロニカで、ロメアーの繊細なロマンティシズムが露わになっている。“カム・クロース・トゥ・ミー”も同様で、ディープ・ハウス調の曲ながら、『プロジェクションズ』でのムーディーマンに通じるゲットー・ハウス的なスタイルとは異なるものとなっている。“ニュー・ラヴ”はテクノやトランスのスタイルを取り込んだと語っている。リル・ルイスの“フレンチ・キッス”的なラヴ・ソングへのアプローチだろうか。“ドント・ストップ”での摩訶不思議なエキゾティシズムも面白いし、“L.U.V.”での楽園的なムードはバレアリックに通じる。なお、本作は『プロジェクションズ』ほどサンプリングに頼っておらず、そのぶん生楽器の演奏の比重を増やしたそうだ。単音のシンセにはじまり、祖母のリコーダーから父親のマンドリンまで演奏しているようで、“マイ・ラスト・アフェア”はそうした演奏に重きを置いた楽曲である。

 インタヴューではアフロ・アメリカンの音楽や歴史から、ブリティッシュ・フォーク、アイリッシュ・フォークなどからヨーロッパの歴史へ興味が移行し、それが『ラヴ・ソングス:パート2』へ繋がっていると述べていたロメアー。一聴しただけではフォーク・ソングの具体的な痕跡はわからなかったが、強いブラック・アフリカニズムに彩られた『プロジェクションズ』から、『ラヴ・ソングス:パート2』という新たな世界へ移動してきたことは確かだ。そして、彼は思いつくままにいろいろと興味の対象を広げ、多くの影響を受ける人間のようである。コラージュという手法もそうした多くの影響からくるものであり、そこがロメアー・ベアーデンというコラージュ・アート作家の名前を冠するアーチー・フェアハーストらしさかもしれない。

小川充