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水曜日のカンパネラ

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仙波希望菅澤捷太郎野田 努   Mar 17,2017 UP
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(野田努)

 ハローキティには口がない──と海外のある思想家は指摘する。J-POPエキゾティシズムは、洋学的な広がりからいえば明白に孤立しているが、向こうからみればこっちが孤立しているわけで、兎にも角にも今日の消費社会において、立派に、堂々と、それはひとつの棚を確保している。そんなJ-POPにおける日本のキュート・ポップ文化はいまや世界を一周して、たとえば鏡を見ればケロ・ケロ・ボニトがいる。この──おかしくてキュート、そして清楚な──ポップ文化に、ぼくはときとして笑い、と同時にどこか居心地の悪さも覚える。ハローキティには口がないことに。
 コムアイには口がある。ラップはうまければいいってもんじゃないことも、結果、あらためて証明した。まずは下北ジェットセットに感謝だ。このレコード店で「トライアスロン」の12インチが売られていなかったら、こうしてぼくがレヴューを書くこともなかったのだから。
 コムアイには何かがある。海外で面白がられているエキゾティックでキュートなJ-POPではない何か……、そこからむしろはみ出そうとする型破りな何か……、そのほとんどが旧来の女性像を壊せなかった90年代ディーヴァたちとは違った何か……、90年代的自由奔放さを打ち出したビョークともUAとも違った何か……、ザ・ブルシットの内省とは違った何か……。
 とは言うもの、今回の水曜日のカンパネラが選んだ綱渡りは、音の冒険ではない。言葉の深みでもなければ、もちろん時代や社会の語り部でもない。そうした深刻さ、意味から解放されることなのだろう。ぼくが「トライアスロン」EP収録の“ディアブロ”で大笑いしたのも、世界は重苦しく政治や社会はたいへんで、正直ナンセンスに飢えていたというのもあった。
 そして、だが、新作において水曜日のカンパネラが選んだ綱渡りは、ポップ・チャート・ミュージックとしてのそれだろう。自分たちのサウンドを微調整しながら曲調の幅を持たせてはいるが、本作を聴く限りでは、前作で関わったマシューデイヴィッドやオオルタイチといった連中から何かを吸収したとは思えない。カタチだけ取り入れても意味はないし、毒を抜いた洋楽になるくらいなら……賢明そうな彼らのことだ、そう考えたのかもしれない。
 多くの曲はせっかちなダンス・ミュージックで、その音色においてお茶の間との回路を保ち、基本メロディアスである。当たり前だがMC漢のようなドープネスはなく、背徳のクラブ・ダンスフロアとはまずつながらない。まあ、J-POP的リング上ではある……が……、コムアイはそのなかでもあらがい、どこか異彩を放っているのは事実で、そして彼らはいまもウェットさを拒んでzany(滑稽さ)とnonsense(無意味さ)を追求している。その方向性は、J-POP──拒絶も否定もない特異な文化空間として完結することを裏切らんとし、じつは他との接続を求めているがゆえにほころびを探し、もちろん日本のキュート・ポップ文化から切り離され、数年後のヴァラエティ番組のゲスト席ないしはハローキティと草間彌生の水玉との境界線がぼやけるところを尻目に、ひたすら突っ走っている……のだろう。が、どこに? レイヴ会場? いやまさか。

野田努

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