ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. Cremation Lily - Dreams Drenched in Static (review)
  2. Adrian Sherwood ——エイドリアン・シャーウッドが女性ダブ・アーティストのコンピレーションをリリースする (news)
  3. リコリス・ピザ - (review)
  4. interview with Shintaro Sakamoto 坂本慎太郎、新作『物語のように』について語る (interviews)
  5. Vladislav Delay ——ロシア占領下の18世紀フィンランドを主題にしたヴラディスラヴ・ディレイの新作は、〈Planet Mu〉からリリース (news)
  6. P.E. - The Leather Lemon (review)
  7. Autechre ──オウテカが未発表ライヴ音源集をリリース、計8時間弱 (news)
  8. The Ephemeron Loop - Psychonautic Escapism (review)
  9. There are many many alternatives. 道なら腐るほどある 第5回 反誕生日会主義 (columns)
  10. interview with Kikagaku Moyo 無国籍ロウファイ・サイケデリア (interviews)
  11. Spiritualized - Everything Was Beautiful (review)
  12. edbl ──トム・ミッシュ以降を担う新世代、エドブラックの日本デビュー作がクリア・レッド・ヴァイナルでリリース (news)
  13. Nicolás Jaar, Other People ──ニコラス・ジャーが20世紀後半のポーランドの前衛/実験音楽をコンパイル (news)
  14. Jeff Mills ──早くもジェフ・ミルズの新作がリリース (news)
  15. Ghostly Kisses - Heaven, Wait (review)
  16. 7g classic's ——元RCサクセションのgee2woによる新プロジェクト始動 (news)
  17. Cate Le Bon - Pompeii (review)
  18. FEBB ──幻の3rdアルバムがリリース (news)
  19. Funkadelic - Maggot Brain (review)
  20. Lucrecia Dalt ──コロンビア出身ベルリン拠点のプロデューサー、ルクレシア・ダルトによるホラー映画のサントラ (news)

Home >  Reviews >  Album Reviews > FKJ- French Kiwi Juice

FKJ

FunkJazzSoul

FKJ

French Kiwi Juice

Roche Musique / Rambling

Tower HMV Amazon iTunes

小川充   Apr 04,2017 UP
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 ディミトリ・フロム・パリにしろ、エールにしろ、ダフト・パンクにしろ、カシウスにしろ、昔からフランスのアーティストは遊び心が旺盛な人が多い。そうした遊び心やユーモアから、彼らのようなロマンティックでドリーミー、またはセクシーで煌びやかなサウンドが生まれてくるのだろう。1990年代半ばに〈イエロー・プロダクションズ〉、〈Fコミュニケーションズ〉、〈ディスク・ソリッド〉などが設立され、そうしたフランスならではのクラブ・サウンド(=フレンチ・タッチ)が、USやUKといったクラブ・ミュージックの本場に対抗する勢力として狼煙を上げたが、そんなフレンチ・アーティストの遊び心は、ミスター・オイゾ、ジャスティス、オンラなど、いろいろと形を変えつつも継承されている。カシウス、オイゾ、ジャスティスらが所属する〈エド・バンガー〉は、現在のフレンチ・タッチを代表するレーベルで、近年はブレイクボット(元アウトラインズ)の活躍が目覚ましいところだ。ブレイクボットはヒップホップやR&B、ハウスやエレクトロ、ディスコやブギー、チル・ウェイヴやドリーム・ポップ、AORなどあらゆる要素をミックスした折衷的なクラブ・サウンドに、フレンチ・タッチならではのユーモラスでお洒落なセンスを巧みにコーティングするのが得意だ。そんな〈エド・バンガー〉の路線を担いつつ、ディスクロージャー以降の新しいハウス・サウンドを担うレーベルとして、パリで〈ローチェ・ミュージック〉が設立されたのが2012年。フレンチ・タッチをバックグランドに持つこのレーベルの主宰者が、FKJ(フレンチ・キウイ・ジュース)ことヴィンセント・フェントンである。

 最初はサウンドクラウドなどを舞台に、リミックスやオリジナル曲を発表していたのだが、その中の“ライイング・トゥゲザー”が世界中で人気を集め、シカゴのセイヴ・マネー(チャンス・ザ・ラッパーも所属)のクルーのトゥキオがすぐさまサンプリングして“アイ・ノウ・ユー”という曲を発表するなど、アメリカでも一躍注目される存在になる。その後、フィジカルで初のEPである『タイム・フォー・ア・チェンジ』(2013年)をリリースし、第2弾EPの『テイク・オフ』(2014年)を経て、初のアルバム『フレンチ・キウイ・ジュース』を発表するのである。FKJはキーボード、ギター、ベース、サックスから、サンプラー、ラップトップPCまで操るマルチ・ミュージシャン/プロデューサーで、また自身でヴォーカルもとる。本作もそんな具合に、ひとりで何役もこなしながら作られたものだ。2016年はケイトラナダやジョーダン・ラカイなどの若いマルチ・ミュージシャン/プロデューサーのアルバムが出たが、FKJもそうした人たちに並ぶ才能の持ち主と言えるだろう。

 『フレンチ・キウイ・ジュース』の音楽的な骨格にはソウル・ミュージックがある。“ウィ・エイント・フィーリング・タイム”や“スカイライン”、“ベター・ギヴ・ユー・アップ”あたりがその代表曲だが、ビートは打ち込みでもギターや鍵盤などの楽器演奏により極めてオーガニックな味わいのナンバーとなっている。鍵盤は主にフェンダー・ローズを使っているようだが、そうしたヴィンテージ機材を巧みに用いることにより、敢えてレトロでメロウな質感を感じさせる点が彼の特徴である。“ウィ・エイント・フィーリング・タイム”や“チャング”でのジャジーなサックス・フレーズも、そんなFKJのレトロ・センスの表われであるし、“ホワイ・アー・ゼア・バウンダリーズ”の枯れた味わいは1970年代のニュー・ソウル的でもある。“スカイライン”もビートは新しく洗練されたものだが、楽器の音色は意図的にヴィンテージ感を出している。また、ヴォーカルとコーラス・アレンジのセンスも抜群で、全体にポップなフィーリングを漂わせる大きな要因となっている。どの曲からも優れたメロディ・センスが感じられ、中でも“ブレスド”はチル・アウトでメロウな味わいが格別である。仄かなマリン・フレーヴァー漂うこの曲は、先日他界したリオン・ウェアが若いビートメイカーになって蘇ったようでもある。ディミトリを筆頭に、フレンチ・タッチのアーティストはメロディ・センスやポップ・センスにも優れた人が多かったのだが、そうした点でFKJもフレンチ・タッチを今に受け継ぐアーティストであることは間違いない。

小川充