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三田格   Apr 07,2017 UP
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 ゼロ年代以降、もっとも細分化し、多様化した音楽ジャンルはメタルだろう。そのポテンシャルはまるで地下水に含まれるベンゼンのようにあっさりと基準値を上回り、予想外の方向へと影響を広げていった。ドゥーム・メタルとエレクトロニカを交錯させたKTLの登場によってテクノやインダストリアル・ミュージックもその射程内に収められ、『アメリカン・バビロン』によってルッスーリアはマッシヴ・アタックの、『アイ・シャル・ダイ・ヒア』によってザ・ボディはオウテカの位置に取って代わったとさえ言える。アンビエント・ミュージックとの親和性はそれ以前から高かったこともあり、最近ではエクトプラズム・ガールズからナディン・バーン(Nadine Byrne)がソロで完成させた『ア・ディッフェレント・ジェスチャー』もポップやアカデミックにはない新境地を編み出したことはたしか。同じくフェネスがウルヴァーというブラック・メタルのバンドに参加していることもよく知られている。

 エレクトロニカとメタルを融合させた際、KTLのそれがジェフ・ミルズのようなハード・スタイルを模索したものだとしたら、カナディアン・ブラック・メタルのウォルドからフォートレス・クルックドジョー(Fortress Crookedjaw)がソロではじめたブラック・メカは果たしてどのような文脈でジャンルの壁を乗り越えたといえばいいのか。ウォルド名義の『ポストソシアル』と同じく〈デス・オブ・レイヴ〉からとなったデビュー・アルバム『AA』(2015)はまだいい。メタルのテクスチャーが少しは残っている。しかし、セカンド・アルバムとなる『I.M. メンタライジング』は冒頭からパウウェルとレジデンツの共演ではないか。諧謔と凶暴性の同居。運命論が重くのしかかってくるようなメタルの美学は微塵もなく、強いて言えば笑い死にしたくなるような多幸感に覆い尽くされている。サイドAはそれで最後まで押し切られる。

 後半はエレクトロニック・ミュージックの表情がもう少し多様化され、スラッシュ化したエレクトロのような展開へ。エンディングはややストイックで、アシッド・ハウスのように少しずつコントロールを失っていく。そして、乱暴なミニマル・ミュージックは死んだように静まり返り、もっと聴きたいという願いは届かない。曲名には超自然を思わせるタイトルが多々つけられている。そういう意味では、あまりお近づきにはなりたくないタイプかもしれないけれど、いまのところ文句を言う気はない。音楽が素晴らしければそれでいい。ちなみにナジャよりもわずかにキャリアが長いウォルドは〈エディション・メゴ〉傘下でステフェン・オモーリーが主催する〈イデオロジック・オーガン〉からもリリースがあり、クレジットにはラシャド・ベッカーの名前も見受けられる。もしかすると後者からは少なからずの影響を受けているのかもしれない。わからないけれど。

 最初は『ダーク・ドゥルーズ』でも読んで、破壊の気分で聴こうかなと思っていたんだけれど、なんと言うか、すっかり愉快な気分になってしまった。いやいや。

三田格