ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. STONE ISLAND ──人気のイタリア・ブランド〈ストーンアイランド〉が音楽シーンに参入 (news)
  2. Julianna Barwick - Healing Is A Miracle (review)
  3. 校了しました ──『別冊ele-king ブラック・パワーに捧ぐ』&『ゲーム音楽ディスクガイド2』 (news)
  4. Roedelius - Tape Archive Essence 1973-1978 (review)
  5. The Beneficiaries - The Crystal City Is Alive (review)
  6. Sound Of Japan ──BBCレディオ3が日本の音楽の特番を放送しております (news)
  7. interview with Kamaal Williams ほらよ、これが「UKジャズ」だ (interviews)
  8. the perfect me ──福岡インディ・シーンからアヴァン・ポップの旗手 (news)
  9. Eartheater ──アースイーターの新作はアコースティック・サウンド (news)
  10. Onoe Caponoe - Invisible War (見えざる戦争) (review)
  11. interview with Trickfinger (John Frusciante) ジョン・フルシアンテ、テクノを語りまくる (interviews)
  12. Bottom of Tokyo ──今週末はWool & The Pantsのライヴ配信あります (news)
  13. A Certain Ratio ──9月発売のアルバムから1曲、東京で撮影されたMV「Yo Yo Gi」を公開 (news)
  14. R.I.P. Malik B 追悼 マリク・B (news)
  15. interview with AbuQadim Haqq 語り継がれるドレクシア物語 (interviews)
  16. Aru-2 - Little Heaven (review)
  17. Hiroshi Yoshimura ──入手困難だった吉村弘の1986年作『Green』がリイシュー (news)
  18. Jun Togawa──戸川純がまさかのユーチューバーになった! (news)
  19. interview with Julianna Barwick 聞きたくない声は、怒りのラップ、怒りのメタル。“グォォォーッ”みたいなやつ (interviews)
  20. Run The Jewels ラン・ザ・ジュエルズは何がすごいのか (interviews)

Home >  Reviews >  Album Reviews > B12- Electro-Soma I + II

B12

Ambient TechnoIDM

B12

Electro-Soma I + II

Warp / ビート

Tower HMV Amazon iTunes

小林拓音   Dec 07,2017 UP Old & New
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 げに許すまじ。ブラック・ドッグの『Bytes』が落選したことに関してはつい先日もぶうたれたばかりだけれど、件の『ピッチフォーク』のランキングからはもうひとつ、重要な作品が抜け落ちている。B12の『Electro-Soma』である。たしかにポリゴン・ウィンドウやオウテカ、ブラック・ドッグといった錚々たる顔ぶれが居並ぶA.I.シリーズのなかでは、相対的に地味で控えめなアルバムだったかもしれない。けれど当時、ある意味もっとも純粋にIDM~アンビエント・テクノを鳴らしていたのは、もしかしたら『Electro-Soma』だったのではないか。
 B12はマイケル・ゴールディングとスティーヴ・ラッターからなるユニットで、ふたりは同名のレーベルを主宰してもいる。00年代後半より鳴りを潜めていた彼らではあるが、近年は〈B12〉傘下の〈FireScope〉から精力的にシングルを発表している。今回ヴァイナルとしてリイシューされた彼らの記念すべきファースト・アルバムは、もともとふたりがミュジコロジーやレッドセルといった名義で発表していた曲を〈ウォープ〉のロブ・ミッチェルがコンパイルしたものなのだけれど、どうやらその選から漏れた音源も数多く存在したようで、『Electro-Soma』と同時に、彼らのレア・トラックをかき集めた『Electro-Soma II』という編集盤もヴァイナルでリリースされている。その2枚をまとめてパッケイジしたCDが、この『Electro-Soma I + II』である(ちなみに今回のリイシューはアナログのオリジナル盤が元になっているので、かつてのCD盤『Electro-Soma』に収録されていた“Debris”、“Satori”、“Static Emotion”の3曲は今回『II』の方に収められており、逆に当時CD盤でオミットされていた“Drift”が今回『I』の方に収められている)。
 改めて聴き直してみて思ったのは、やはりデトロイト・テクノからの影響が大きいということだ。このアルバムを聴いていると、かつてカール・クレイグがサイケ/BFC名義で発表していた曲たち(それらは『Elements 1989-1990』として1枚にまとめられている)を連想せずにはいられない。きめ細やかなハットに、どこまでもノスタルジックでメロディアスなシンセ、そこに加わるUKらしいベースライン……デトロイトから受けた影響を独自に咀嚼し、それを当時のUKの文脈に巧みに落とし込んだ作品がこの『Electro-Soma』と言えるだろう。そういう意味で本作は初期のカーク・ディジョージオやリロードの諸作とも通じる響きを持っている。このアルバムは、テクノが今日のように商業化され制度化されてしまう前の、ある意味で牧歌的とも呼びうる時代の風景を浮かび上がらせる。このようなセンティメントは、昨今のエレクトロニック・ミュージックからはなかなか感じられないものだ。

 今回のリイシューはおそらく、昨今のアンビエント・ブームあるいはIDM回顧の機運に乗っかって企画されたものなのだろう。〈ウォープ〉は今年エレクトロの波に乗ってジ・アザー・ピープル・プレイスもリプレスしているが、そこでひとつ心配なのが、最近ちょっと過去のクラシックに頼りすぎなんじゃないか、という点だ。もしかしたらかのレーベルはいま、リリースの方向性をめぐって大きな岐路に立たされているのかもしれない。……いや、『Electro-Soma』が名盤であることに変わりはないんだけどね(この時期のB12の音源をもっと掘りたい方は、『Prelude Part 1』を探すべし)。

小林拓音