ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. Nkisi ──新世代テクノの急先鋒、キシ来日直前インタヴュー (news)
  2. Ash Walker - Aquamarine (review)
  3. WXAXRXP Sessions ──〈Warp〉30周年を記念したシリーズ作品が発売、豪華面子が勢ぞろい (news)
  4. Kelela & Asmara - Aquaphoria (review)
  5. interview with Joe Armon-Jones 深化するUKジャズの躍動 (interviews)
  6. Headie One - Music x Road (review)
  7. Bon Iver ──ボン・イヴェールの来日公演が決定 (news)
  8. interview with (Sandy) Alex G 塩と砂糖の誘惑 (interviews)
  9. Columns JPEGMAFIA『Veteran』の衝撃とは何だったのか (columns)
  10. Laraaji ──ララージがまさかの再来日、ブライアン・イーノとの名作を再現 (news)
  11. Tohji ──いま若い世代から圧倒的な支持を集めるラッパーが、初のミックステープをリリース (news)
  12. interview with For Tracy Hyde シティ・ポップ・リヴァイヴァルから「シティ」を奪還する (interviews)
  13. Leo Svirsky - River Without Banks (review)
  14. Aphex Twin ──エイフェックス・ツイン最新公演のライヴ・ストリーミングが決定 (news)
  15. Nkisi - 7 Directions (review)
  16. Random Access N.Y. vol. 119:玄人インディ・ロック界の王子たち Deerhunter and Dirty Projectors @webster hall (columns)
  17. Squarepusher, Oneohtrix Point Never & Bibio ──〈Warp〉30周年イベントが開催決定! スクエアプッシャー、ワンオートリックス・ポイント・ネヴァー、ビビオが一挙来日 (news)
  18. interview with Yosuke Yamashita 誰にでも開かれた過激 (interviews)
  19. For Tracy Hyde - New Young City (review)
  20. interview with The Comet Is Coming ボリス・ジョンソンの名を言うだけで口が腐る (interviews)

Home >  Reviews >  Album Reviews > あめとかんむり- nou

あめとかんむり

HouseRap

あめとかんむり

nou

tapestok

Tower HMV Amazon

近藤真弥   Dec 18,2017 UP
このエントリーをはてなブックマークに追加

 先日、友人に勧められて、あめとかんむりのアルバム『nou』を聴いた。あめとかんむりは、今年解散したアイドル・グループ、校庭カメラガールツヴァイのリーダーだったmolm'o'mol(もるも もる)のソロ・プロジェクト。これまで3枚のシングルを発表しており、本作がファースト・アルバムとなる。
 正直に告白すると、日本のポップ・ミュージックに触れるなかで彼女の存在を知り、作品も聴いてはいたが、強い興味を持つことはなかった。フリースタイル・ラップに挑む女子高生を描いた曽田正人の漫画『Change!』が『月刊少年マガジン』で始まり、フィーメイル・ラッパー限定のMCバトル『CINDERELLA MC BATTLE』が話題になるなど、日本で多くのフィーメイル・ラッパーが注目されている流れに位置するアーティストという程度の認識だった。本作を聴く気になったのも、女優・小宮一葉のラッパー名義であるfaela(ファエラ)の作品を扱う〈tapestok records〉からのリリースというのが主な動機だ。

 そのうえで言えば、本作は面白い点が多い。特に耳を引かれたのはトラックだ。“Hungry”という酩酊感たっぷりのアシッド・ハウスを提供したハラダ・カナコをはじめ、アクアリウムや外神田ディープスペース名義で〈Natural Sciences〉からリリース経験もあるdeejay 聖讃カリィ、去年AVV名義で発表した秀逸なロウ・ハウス「16 'til EP」も記憶に新しいマサユキ・クボ、そのEPにリミックスで参加したペーパークラフトといった、興味深い面々がトラックを担っている。全10曲中マサユキ・クボが5曲制作しているからか、全体的にはロウ・ハウスの要素が色濃い。〈L.I.E.S.〉〈Confused House〉〈Bio Rhythm〉あたりのレーベルに通じる生々しい質感をまとったビートが印象的なトラックが多く、クラブで流れても不思議じゃない音ばかりだ。
 そうした統一感を醸しつつ、“Lie Night”には〈1080p〉の登場以降多くなったドリーミーなベッドルーム・ハウスを彷彿させるサウンドがあり、“Ready”ではUKガラージど真ん中なビートを鳴らすなど、多彩さも忘れていない。そこにメランコリックな雰囲気を漂わせるキャッチーなメロディーも散りばめるなど、現在進行形のエレクトロニック・ミュージックと共振しつつ、親しみやすさも考えたバランスの良さが光る。

 molm'o'molのパフォーマンスも特筆したい。おやすみホログラムの八月ちゃんが参加した“With Out You”で見せる掛け合いも見事だし、“Wide”ではキレのいいラップと歌を使い分けるという芸当もこなしている。ヴァース/コーラス形式といったポップスの定番とは距離を置いた、DJ好みの機能的ダンス・ミュージックが揃うトラック群を乗りこなせることからも、彼女の高い順応性と表現力が窺い知れるというもの。
 元Especiaの脇田もなりによる『I Am Only』など、今年はアイドルがソロの表現者として飛躍した作品に出逢うことも多かったが、本作は間違いなくそのうちの1枚だ。

近藤真弥