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野田努   Apr 05,2018 UP
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 北アフリカのモーリタニアからリビアにわたるサハラ砂漠の海岸部をマグレブと呼んでいる。
 ロンドン南西の田舎町でありながらインド系/アフリカ系が多いというギルフォードを拠点とするエジプト系移民の息子、アイマン・ロストムは、この20年近くはヒップホップのビートメイカーとして活動していた。1999年からDr. Zygote名義で作品をリリースしているものの、ほとんどが自主による。2013年には〈Black Acre〉からアルバムも出しており、Discogsでこの作品を調べてみると、エイフェックス・ツインのファンとJディラのファンがチェックしていることに気が付く。この奇妙な組み合わせは、ある意味ではロストムのユニークな音楽性を言い当てているだろう。
 ロストムは数年前からザ・マグレバンの名義を使い、ハウス・ミュージックを作っている。2014年から14枚の12インチをリリースしているが、初期のほとんどがやはり自主レーベルからの作品だ。

 とはいえザ・マグレバン/Dr. Zygoteの音楽は、パリの〈Versatile〉やブリストル〈Black Acre〉といったレーベルの功績によって、数年前からディープな12インチ・リスナーおよびDJのあいだで評判だった。そのサウンドはたびたび“サイケデリック”という言葉で説明されているが、彼の楽曲には音の幻覚性と同時に「わけわかんねー」というある種のファンキーな感覚もある。初めてオリジナル・シカゴ・ハウスを聴いたときの「わけわかんねー」というアレだ。ディスコのわかりやすさとは違った微妙なリズム感。ダンスのために制作されながらも微妙な曲の短さ。独特の音階。気味の悪い音響と大胆な反復。気まぐれで作ったんじゃないかと見紛うような、完成度の高さという言葉からは何万光年も離れているかのような荒さ。
 そして〈R&S〉レーベルはこの才能のアルバム制作に成功して、つい先日『01deas 』がリリースされたというわけだ。

 アルバムには、ロストムが蒐集した何種類ものアフリカの要素、そして父から教えられラアラブの要素が散りばめられているそうだ。ジンバブエのヴォーカリストを迎えてトランスする“Revenge”、全盛期のカール・クレイグのセンスをアフロビートに塗り替えたような“Sham”、この曲はぼくに言わせれば、“バグ・イン・ア・ベースビン”のアフロ・ヴァージョンである。
 ほかにも、アフロなメロディを奏でるギターとURめいたビートの“Mike's Afro”、親指ピアノのウェイトレス“Mbira”、ヒップホップ&ハウスのゲットー・スタイル“Can't Breathe”、どファンキーな“Crime Jazz”やUS西海岸のラッパー、A-F-R-Oをフィーチャーしたヒップホップ・チューンの“Hi Top Remi”、そしてドレクシアを彷彿させる“Mr Brown”などなど。
 ロストムはアフロ・ディアスポリックな自らの音楽をアウトサイダー・ハウスと呼んでいるようだ。ダンス・ミュージックに侵入する部外者たち。素晴らしい。
 

野田努