ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. Flying Lotus ──フライング・ロータスの単独来日公演が決定 (news)
  2. The Caretaker - Everywhere At The End Of Time - Stage 6 (review)
  3. Seven Davis Jr - S.O.S (review)
  4. WXAXRXP ──今年で30周年を迎える〈Warp〉がオンライン音楽フェスを開催、NTS Radio にて100時間以上にわたる特別番組を放送 (news)
  5. Black Nile ──LAから新たなジャズの息吹、ブラック・ナイルがファースト・アルバムをリリース (news)
  6. Flying Lotus ──衝撃を与えた映画『KUSO』がまさかの再上映決定 (news)
  7. MOMENT JOON - Immigration EP (review)
  8. Teen Daze - Bioluminescence (review)
  9. NOT WONK - Down the Valley (review)
  10. Moodymann ──ムーディマンの新作がデジタルでリリース (news)
  11. MIDI Provocateur ──〈トラフィック〉からスタイリッシュなダンス・プロジェクト、ミディ・プロヴォケイターがデビュー (news)
  12. Kevin Richard Martin - Sirens (review)
  13. interview with Plaid ヴェテランが紡ぐ、調和と衝突の美しき重合体 (interviews)
  14. 現代思想 ──青土社の雑誌『現代思想』の最新号「加速主義」特集がおもしろい (news)
  15. Tyler, The Creator - IGOR (review)
  16. The Caretaker ──ザ・ケアテイカーが新作、並びに故マーク・フィッシャーへ捧げられたアルバムの再発盤をリリース (news)
  17. Columns 内田裕也さんへ──その功績と悲劇と (columns)
  18. BSC ──KANDYTOWN の BIG SANTA CLASSIC a.k.a. BSC がソロ・デビュー・アルバムをリリース (news)
  19. WWWβ ──これは尖っている! 渋谷WWWの最深部に新たな「場」が誕生 (news)
  20. Columns なぜスコット・ウォーカーはリスペクトされているのか (columns)

Home >  Reviews >  Album Reviews > Big Joanie- Sistahs

Big Joanie

Punk

Big Joanie

Sistahs

The Daydream Library Series

Bandcamp

野田努   Jan 18,2019 UP
このエントリーをはてなブックマークに追加

 なんとまあ、伸び伸びとした演奏だろうか。「ダーシーキシャツ(アフリカの民族衣装)を着て80年代DIYとriot grrrlを通過したロネッツ」、彼女たちは自らをこう表現している。たしかにビッグ・ジョーニーはジーザス&メリー・チェインとロネッツの溝を埋めるかのようだし、曲によってはニュー・オーダーめいたエレクトロ・ロックだし、あるいは初期のレインコーツみたいだし、アルバムの最後にはバラードまでやっている。ロンドンの移民の娘っこ3人。アルバムには3分ほどの曲が11曲。ラップもないし、R&Bもない。トレンディではないどころか、ある意味黒人らしくもない。そういう意味では、オールド・ファッションでもないしステロタイプでもない。ドラマーのシャーダインは、初期ジーザス&メリー・チェインのように立ってドラムを叩いている。ひと昔前なら、不健康そうに前髪を長く垂らして黒いコートを着て白人の若者がやっていたような音楽を彼女たちはやっている。だからどうしたというわけではない。そもそも今日では、時代錯誤とはタイムリーを意味するし、パンクでありダンス・ミュージックでもあるビッグ・ジョーニーの溌剌とした『シスターズ』がただ素晴らしいというだけのことである。

 「ブラック、フェミニストそしてシスター・パンク」これがビッグ・ジョーニーのモットーだ。それだけ聞くと、ああ、なるほど、わかったようなわからないような、しかし漠然としたイメージは生まれる。「ブラック、フェミニストそしてシスター・パンク」──なるほど。じっさい彼女たちはアナキスト系のDIYスペースに関わっているそうだが、ビッグ・ジョーニーにはTLCのヒット曲“ノー・スクラブ”(デスティニーズ・チャイルドの“ビルズ・ビルズ・ビルズ”とならぶ、現世的な男を見下す生意気娘系の曲として知られる)をカヴァーするくらいの余裕と茶目っ気がある。ミソジニーや階級社会を風刺したポリティカルな歌詞を歌っているらしいのだが、彼女たちの曲はポップスとして成り立っているし、なんといっても堂々とやりたいことをやっている感じが良い。スリーフォード・モッズよりは育ちが良さそうだが(まあ、バンドをやれるくらいだし?)、彼らと同じように流行りに流されている感/やらされている感はない。それは歯並びが良くスマートな体型のアメリカやインスタ文化(などと偉そうに言っているがあまりよくわかってない)が、結果として抑え込んでいるものを解放するかもしれない。君は君自身のままでいいんだよっていうふうにね。

 ささやかな一撃だが、これが時代に馴染めないひとたちを勇気づけて、未来のためのきっかけになることは大いにありえる。2018年の暮れに、ビッグ・ジョーニーのデビュー・アルバム『シスターズ』がサーストン・ムーアのレーベルからリリースされた(レコードにはブックレットが付いている)。

野田努