ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. シカゴ・ハウスという原点、謎に包まれた歴史があらわになる ──ジェシー・サンダース『ハウス・ミュージック』刊行のお知らせ (news)
  2. Shafiq Husayn - The Loop (review)
  3. 魂のゆくえ - (review)
  4. Random Access N.Y. vol.115 : 1年に1度のアシッド・マザーズ・テンプル Acid mother temple/ Yamantaka//Sonic titan @Market Hotel (columns)
  5. interview with Fat White Family 彼らはインディ・ロックの救世主か? (interviews)
  6. Matmos - Plastic Anniversary (review)
  7. SCARS ──入手困難だったファースト・アルバムがリイシュー (news)
  8. Columns UKの若きラッパー、ロイル・カーナーが示す「第四の道」 (columns)
  9. Plaid ──プラッドがニュー・アルバムをリリース (news)
  10. dialogue: Shinichiro Watanabe × Mocky TVアニメ『キャロル&チューズデイ』放送開始記念 (interviews)
  11. interview with Acid Mothers Temple アシッド・マザーズ物語 (interviews)
  12. Columns なぜスコット・ウォーカーはリスペクトされているのか (columns)
  13. interview with Bibio レトロとノスタルジーの違いについて (interviews)
  14. The Comet Is Coming - Trust In The Lifeforce Of The Deep Mystery (review)
  15. Flying Lotus ──フライング・ロータスがニュー・アルバムをリリース (news)
  16. マキタスポーツ - 2019年3月27日@草月ホール (review)
  17. Loski - Mad Move (review)
  18. Nivhek - After Its Own Death/Walking In A Spiral Towards The House (review)
  19. Politics オカシオ-コルテス、“MMT(現代貨幣理論)”を語る (columns)
  20. 主戦場 - (review)

Home >  Reviews >  Album Reviews > Blu & Oh No- A Long Red Hot Los Angeles Summe…

Blu & Oh No

Hip Hop

Blu & Oh No

A Long Red Hot Los Angeles Summer Night

Nature Sounds

Tower HMV Amazon iTunes

大前至   Apr 04,2019 UP
このエントリーをはてなブックマークに追加

 2007年にリリースされたブルー&エグザイル名義でのアルバム『Below The Heavens』でのデビュー以降、様々なプロデューサーとのタッグ、あるいは自らのプロデュースによって数々の作品を生み出してきたLA・イングルウッド出身のラッパー、ブルー。最近では2015年に MED、マッドリブとのコラボレーションによるアルバム『Bad Neighbor』が話題となったり、昨年はヴァージニア出身のプロデューサー、ノッツとの『Gods In The Spirit, Titans In The Flesh』や、サーラーのシャフィーク・フセインとの『The Blueprint』など、かなりのハイペースで良質な作品を発表してきた彼が、今回、新たに手を組んだのがマッドリブの実弟としても知られるオー・ノウだ。ラッパーとしては2004年に〈ストーンズ・スロウ〉からリリースされたソロ・アルバム『The Disrupt』でデビューを果たし、プロデューサーとしても〈ストーンズ・スロウ〉周辺や地元オックスナードのアーティストを中心に、アンダーグラウンドからメジャーまで数多くのアーティストの作品に関わってきたオー・ノウだが、すでにブルーとも前出の『Bad Neighbor』などで共演を果たしている。とはいえ、このふたりががっぷり四つで1枚のアルバムを作るというのは当然、初めてのことであり、南カリフォルニアのアンダーグラウンド・シーンを代表する両者の夢のコラボレーションは、必然的に期待も高まる。

 イントロにてブルーがLAの主要なストリートの名前を羅列し、LAのギャング・カルチャーがこのアルバムのテーマのひとつであることを提示することで、本作の幕は開ける。イングルウッドで育ったブルーにとって、ギャングは日常の一部でもあり、これまでもたびたび曲の中でテーマにしてきたが、彼の目線でのLAストーリーが独特の語り口によって実にスタイリッシュに、アルバム1枚を通して綴られていく。ひたすらディープに突き進むマッドリブに対して、オー・ノウのトラックはアグレッシヴな部分とクールな一面がバランス良く融合しているのが特徴であるが、本作のテーマにも彼のサウンドは実にマッチする。アルバムのリード曲とも言える“The Lost Angels Anthem”はそんな両者のポテンシャルが最大限に引き出され、ファンキーで緊迫溢れるオー・ノウのトラックに、ブルーはパーカッシヴに言葉をはめ込み、極上のグルーヴを作り出す。ドラムとエレピのサンプリングトラックに、ブルーが巧みにセッションを仕掛ける“Straight No Chaser”なども実にドラマティックな展開で、両者の音楽性の豊かさがダイレクトに伝わってくる1曲だ。また、この曲に限らず、オー・ノウのトラックは映画のサウンドトラックとも通じるものがあり、ブルーがラップで語るストーリーの深みを彼のサウンドがより強く引き出しているようにも感じる。

 ブルー、オー・ノウ共に繋がりの深い MED を筆頭に、有名、無名含めて多数をフィーチャリング・ゲストとして迎えているが、特筆すべきはLAアンダーグラウンド・シーンのベテランであるアブストラクト・ルードとセルフ・ジュピター(フリースタイル・フェローシップ)の参加だ。本作における彼らふたりの存在は、90年代から脈々と引き継がれてきたLAアンダーグラウンド・シーンの延長上にブルーとオー・ノウがいるということの証明でもあり、彼らのゲスト参加は実に意味が深い。

 同じ南カリフォルニアの中でお互い出身地も微妙に異なり、音楽的なバックグランドやルーツも微妙な違うふたりであるが、そういったギャップがお互いにとって大きなプラスとなり、これまでのコラボレーターともまた一味違う、タイトル通りのLAならではの作品になったと言えよう。ここ最近は作品ごとにプロデューサーを毎回変えているブルーであるが、いずれまたオー・ノウとのコラボレーションを期待したい。


大前至