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øjeRum

Ambient

øjeRum

On The Swollen Lips Of The Horizon

Line

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デンシノオト   May 21,2019 UP
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 デンマークのコペンハーゲンを拠点とするダーク・アンビエント・アーティスト øjeRum の新作『On the Swollen Lips of the Horizon』が、音響作家リチャード・シャルティエが主宰する音響系レーベルの老舗的存在の〈LINE〉からリリースされた。
 このニュースを知ったとき øjeRum をリリースするというレーベルの審美眼に唸ってしまった。いっけん意外なキュレーションだが、音響レーベルの老舗〈LINE〉が送り出す必然性があるように思えたからだ。彼の音楽/音響にはエクスペリメンタル、アンビエントにおける2010年代後期的な「何か」がある。ダーク/ゴシックな感覚とでもいうべきか。これは極めて現代的なセンスである。

 øjeRum、本名はポウ・グラボウスキー(Paw Grabowski)という。2007年頃にフランスの〈Rain Music〉から音響フォーク『There Is A Flaw In My Iris』という作品をリリースしているが、現在のようなダーク・アンビエントへと変化を遂げ、大量のリリースを実践するのは、2014年に『He Remembers There Were Gardens』をセルフリリースしてからのことだ。以降、『Sange Til Døende』(2014)、『The Blossoming Of The Nothingness Trees』(2016)、『Needleshaped Silence』(2017)『Sometimes I See Myself Sleeping In A Stone Of Falling Eyes』(2018)、『Træerne & Intetheden』などのアルバムやEP、カセット、CDや7インチ盤の超限定盤リリースを膨大におこなってきたわけだ。
 くわえてヴィジュアル・アーティストでもある彼によるアートワークも美麗で、ゴシックな美意識で統一されている。CD-Rとアート写真をセットにした『A Certain Grief』(2018) のように75部しかコピーしないような私家盤に近い作品もあり、コレクションへの欲望を喚起してきた。ちなみにフランスのレンヌにあるギャラリー「Le Bon Accueil - Lieu d'arts sonores」において個展が開催されるなどヴィジュアル・アーティストとしての評価も高い。

 彼の膨大な作品の中で、2017年に発表された『Skygge』はCD作品であり、多くの耳に触れられる機会のあったアルバムである。美しい悪夢のようなゴシックなサウンドスケープがまとまったコンポジションで展開しており、「øjeRum の膨大なディスコグラフィの中で最初に聴くべきアルバムはどれか」と問われたら、「これまで」ならば『Skygge』と答えたであろう。
 この『Skygge』も含めて、øjeRum のフィジカルはほぼ売り切れとなっているものの、その多くは bandcamp などで聴くことができる。2019年もすでに『Silent Figure With Landscape』、『Syv Segl』、『Sange Til Døende {Pladeselvskab Reissue}』、『Nattesne』、『There Is A Flaw In My Iris』、『Don't Worry Mother, Everything Is Going To Be Okay』などの作品を送りだしてしているが、〈LINE〉にピックアップされたことで、さらに多くのアンビエント・音響マニアの耳に届くことになるのではないか。
 むろん著名レーベルからのデジタル・リリース作品だからといって、これまでの彼の作風となんら変わっているわけではない。そのサウンドは、闇夜で祈るかのごとき「崇高さ」を感じさせるアンビエンスだが、『On the Swollen Lips of the Horizon』も「ゴシック・ノスタルジア・アンビエント」とでも形容したいサウンドに仕上がっていた。〈LINE〉は、彼の作品・楽曲を「手書きのコラージュの視覚的な対応物を用いて、大気中および感情的に帯電した環境記録を作成する」とインフォメーションしているが、まさにそのとおりの音といえる。デイヴィッド・トゥープの語る「エーテルトーク」のようなアンビエントだ。
 アルバムには30分に及ぶ“on the swollen lips...”、22分35秒にわたる“...of the horizon”の長尺2曲と5分8秒ほどの“on the swollen lips... (excerpt)”が収録されている。ドローン、電子音、環境音が交錯し、まるで記憶にのみ存在する映画の音響空間のように霞んだ質感のサウンドスケープを生成していく。レーベルは「ウィリアム・バシンスキーとセラーのファンのための催眠的な周期的感情ジェスチャー」と書いているが、確かにバシンスキーセラーのように記憶を融解させてしまうような音響的質感を感じた。深いノスタルジアが、エーテルのように漂っているとでもいうべきか。記憶の夢、夢の記憶。夢幻のサウンドスケープ。そのアンビエンス、アンビエント……。

 本年2019年はザ・ケアテイカー、ザ・フューチャー・イヴ・フィーチャリング・ロバート・ワイアット、ヤン・ノヴァク、フェネス、サンO)))、ティム・ヘッカーの新作など、個性は違えどもアンビエントやドローンの傑作が多くリリースされているが、本作も負けず劣らず重要なアルバムだ。『Skygge』に次ぐ øjeRum の新たな代表作がここに生まれた。

デンシノオト