ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. R.I.P. Andrew Weatherall (news)
  2. R.I.P.飯島直樹 (news)
  3. Andrew Weatherall ──アンドリュー・ウェザオールが来日 (news)
  4. interview with Andrew Weatherall 「野心はあってもいいけどがんばるな」 (interviews)
  5. Beatrice Dillon - Workaround (review)
  6. There are many many alternatives. 道なら腐るほどある 第10回 ビジホで混ぜる「1のこな」──映画『パラサイト』と家父長制 (columns)
  7. Answer To Remember - Answer To Remember (review)
  8. Nightmares On Wax ──名作『Smokers Delight』の25周年記念盤がリリース (news)
  9. !!! (Chk Chk Chk) ──チック・チック・チックが GREENROOMFESTIVAL ’20 に出演 (news)
  10. Thundercat ──サンダーキャットがニュー・アルバムをリリース (news)
  11. ジョジョ・ラビット - (review)
  12. Andrew Weatherall - Convenanza (review)
  13. DJ Marcelle & Kampire (Nyege Nyege) ──オランダとウガンダから強力な初来日ゲスト、魅惑のパーティが開催 (news)
  14. felicity ──レーベル企画ライヴが開催、七尾旅人、羊文学、ROTH BART BARON が出演 (news)
  15. Disc Shop Zeroの飯島直樹さん、ご逝去の報 (news)
  16. TSUBAKI FM ──気鋭のインターネット・ラジオによる記念ツアー、最終日はなんと24時間ぶっ通し! (news)
  17. プリズン・サークル - (review)
  18. interview with shotahirama じぶんだけのオーセンティック (interviews)
  19. Ronin Arkestra ──マーク・ド・クライヴ=ロウ率いる浪人アーケストラが初の公演を開催 (news)
  20. Columns 日本語ラップ最前線 ──2019年の動向から占う日本のヒップホップの現在(前編) (columns)

Home >  Reviews >  Album Reviews > Carl Michael Von Hausswolff- Addressing The Fallen Angel

Carl Michael Von Hausswolff

DroneNoiseSound Art

Carl Michael Von Hausswolff

Addressing The Fallen Angel

Sähkö

Spotify HMV Amazon iTunes

デンシノオト   Jan 22,2020 UP
このエントリーをはてなブックマークに追加

 この『Addressing The Fallen Angel』は、スウェーデンのストックホルムを拠点とするヴェテラン・サウンド・アーティストにして、アート・キュレイターとしても著名なカール・ミカエル・フォン・ハウスウォルフ(1956年生まれ)が、2019年にリリースしたアルバムである。
 「CM von Hausswolff」名義でも知られる彼は80年代から活動を開始し、あの〈sub rosa〉、〈touch〉、〈raster-noton〉、〈iDEAL〉などの錚々たるレーベルからアルバムを発表してきた才人。本作『Addressing The Fallen Angel』はトミ・グロンルンドと故ミカ・ヴァイニオ主宰によるテクノイズ・レーベルの老舗〈Sähkö〉からリリースされた作品だ。
 くわえてカール・ミカエル・フォン・ハウスウォルフは音源作品のみならず、インスタレーション作品も制作し、「ドクメンタ」や「サンタ・フェ・ビエンナーレ」などの国際美術展などに参加している。『Addressing The Fallen Angel』もまたブルックリン「ピエロギ・ギャラリー」、メキシコ「ルフィーノ・タマヨ博物館」、ドイツ「カールスルーエ・アート・アンド・メディア・センター」で展示されたインスタレーション作品の音源化という。

 ハウスウォルフは、「電気および嗅覚などの刺激から、音響に加えて光などを組み合わせることで、観客の感覚を変化させる作品」を制作してきた。ゆえにこの種のエクスペリメンタルな音楽作品の中でも音楽から限りなく離れた音響作品となっている。いわば音の彫刻であり、音響によるアブストラクト・アートである。
 もちろん本作『Addressing The Fallen Angel』もまた極度に削ぎ落された痩せたドローンが持続するサウンドとなっている。テープが経年劣化で変化を遂げていったような音響は、ほかのドローン作家の作品にはないマテリアルな幽玄性とでもいうべきムードを放っている。音の肌理と変化に聴き入っていると、覚醒と陶酔の「はざま」の状態へと導かれていくかのようになる。
 本アルバムにもそのような硬派なサウンドオブジェが2曲収録されている。18分19秒におよぶ1曲め “Addressing The Fallen Angel (part one)” は、ドローン(持続音)に加えてテキストのリーディングが重ねられている。15分4秒ほどの2曲め “Addressing The Fallen Angel (part two)” は、機械的な持続音が次第にノイジーな響きへと変化するトラックだ。2曲それぞれドローンの向こうにラジオのノイズのようなサウンドが微細に重ねられたり、音量を微細に変化させたりするなど、シンプルながら効果的な手法を駆使している。近年の作品ではマニアの評価の高い『Squared』(2015/〈Auf Abwegen〉)や『Still Life - Requiem』(2017/〈Touch〉)に匹敵するテクノイズ/音響作品の傑作といえよう。
 これらのアルバムも含めてハウスウォルフの音響作品は、「無常/無情の世界」というか、「人間以降の荒野」というか、「ヒトのいない世界」というか、とにかく無機質な叙情が漂っている。なかでもテクノイズの総本山(?)〈Sähkö〉からのリリース作である本作『Addressing The Fallen Angel』は、非人間的な世界を感じさせてくれるようなミニマルかつハードコアな音響空間を構築していた。ドローンとノイズ、マシンとヒト、無常と無情の世界。
 その結果、ハウスウォルフのサウンドは、「聴いたはずなのに聴き終わった感覚が希薄」な音響の持続になっているように思えるのだ。何回聴いても聴き終えた感覚が希薄なドローン音響。もしくは音響の記憶喪失。そう、ドローンが永遠に続く感覚とでもいうべきか。だからこそ “Addressing The Fallen Angel (part one)” における「声」の存在が、より際立ってもくる。まるで人間とマシンの対比のように。

 ちなみに2019年のハウスウォルフは、コラボレーションも旺盛だった。ジム・オルークとのアルバム『In, Demons, In!』(〈iDEAL〉)、シガー・ロスのヴォーカル・ギタリストであるヨンシーとのユニット Dark Morph 『Dark Morph』(自主レーベル)などをリリースした。これらのコラボレーションでも彼の「無常/無情の音響世界」が見事に作用している。本作『Addressing The Fallen Angel』と共にぜひとも聴いて頂きたい逸品だ。

デンシノオト