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Peel Dream Magazine

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Slumberland

Indie RockShoegaze

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Moral Panics

Slumberland

デンシノオト   Feb 05,2021 UP

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 ニューヨークを拠点とするシューゲイズ/ドリーム・ポップ・バンドのピール・ドリーム・マガジンが2020年にリリースしたセカンド・アルバム『Agitprop Alterma』は、この時代のモダン・シューゲイズ・バンドらしく、ステレオラブなどの90年代的なインディ・ロック・サウンドを基底に、クラウトロックから60年代中期的なサイケデリック・ロックまでを臆することなく展開した見事なアルバムだった。リリースが米国インディ・レーベルの名門〈Slumberland Records〉ということも興味深い。

 ピール・ドリーム・マガジンは、ジョー・スティーヴンスのプロジェクトとしてスタートし、2018年にファースト・アルバム『Modern Meta Physic』を〈Slumberland Records〉からリリースした。この時点ですでにヴェルヴェッツ・チルドレン的な90年代リヴァイヴァルとでもいうべきインディ・ロックなのだが、そこには「60年代のリヴァイヴァルである90年代のインディ・ロックを10年代後半視点で再構成する」というような捻じれた感覚(つまりアルバム名にあるようなメタ)がある。おそらくいまの時代に90年代インディへの憧憬を示すということに批評性があるのではないか。
 それから2年を経てリリースされたセカンド・アルバムが『Agitprop Alterna』だ。ファーストの『Modern Meta Physic』ではジョー・スティーブンスの個人プロジェクトだったピール・ドリーム・マガジンだが、『Agitprop Alterna』ではよりバンド的な佇まいへと変化した。つまり参加したミュージシャンの存在感が重要になっているのである(メンバーの集合写真だったアーティスト写真にも表れている)。特にヴォーカルの Jo-Anne Hyun はツイン・ヴォーカルの重要な要である。彼女の声が重なることであのステレオラブを思わせるアンサンブルが生まれているのだから。さらにドラムスのブライアン・アルヴァレス(Brian Alvarez)とケリー・ウィンリック(Kelly Winrich)も、ときにクラウトロック的な曲も展開するピール・ドリーム・マガジンにおいて、その柱ともいえる重要なビートを鳴らしている。とうぜんジョー・スティーヴンスも、ギター、ヴォーカル、オルガン、ドラムマシンと曲・サウンド作りの中心として活躍だ。
 そんな新生ピール・ドリーム・マガジンが放つ『Agitprop Alterna』だが、なかでも1曲目 “Pill”、3曲目 “It's My Body”、9曲目 “The Bertolt Brecht Society”、11曲目 “Do It” などは格別の名曲だ。ツイン・ヴォーカルの妙、アナログ・シンセの音色、オルガン的な音色のドローン・バッキング、60年代サイケ・ロック的なサウンドなど『Emperor Tomato Ketchup』期のステレオラブやオリヴィア・トレマー・コントロールなどの90年代中期の米国インディ・レーベル〈エレファント6〉勢を思わせるエクスペリメンタル・ポップなバンド・サウンドを存分に展開していたのだ。

 そして『Agitprop Alterna』後にリリースされた「Moral Panics」にはさらに驚かされた。「Moral Panics」は2曲を追加したヴァイナル・エディションが2021年にリリースされているので、まさに今年の新譜でもある。
 「Moral Panics」は、特に1曲目 “New Culture” に打ち抜かれてしまった。マイ・ブラッディ・ヴァレンタインの “You Made Me Realise ”、もしくは『Isn't Anything』を思わせるシンプルにしてソリッド、かつ浮遊感のあるシューゲイズ的なサウンドなのだ。もしくはロケットシップが1996年にリリースした『A Certain Smile, A Certain Sadness』収録の “I Love You Like The Way That I Used To Do” が2020年初頭に転生したらこうなるのではないかと思わせるタイニー・シューゲイズ・サウンドだったとでもいうべきか。つまりこの曲には初期マイブラへのオマージュとして90年代のロケットシップ、00年代のザ・ペインズ・オブ・ビーイング・ピュア・アット・ハートを継承する意志を感じてしまったのだ。むろん『A Certain Smile, A Certain Sadness』も『The Pains Of Being Pure At Heart』も、〈Slumberland Records〉からリリースされたアルバムなので、90年代以降のインディ・ロックの系譜を強く感じてしまうのは当然だろう。
 続く2曲目 “Verfremdungseffekt” はミニマル・シンプルな曲と演奏はどこかヴァセリンズを思わせる。そして3曲目 “Dialectrics” に至ってはジャングリーなステレオラブかといった趣の曲調で堪らない。ヴェルヴェッツ・チルドレン的な曲・演奏に90年代インディ・ロックへの憧憬すら感じる5曲目 “Life at the Movies” もいうまでもなく最高だ。さらにはコーネリアスの “Tone Twilight Zone” や “Blazil” をほんの少しだけ思わせる7曲目 “The Furthest Nearby Place” もチル&アンビエントなモンド・トラックで実に心地よい。

 サウンドの「凝り方」としてはアルバム『Agitprop Alterna』は実に作り込まれている。まさにモダン・インディな音だ。対して『Moral Panics』はサウンドや演奏の「風通しの良さ」「自由さ」「曲のよさ」という意味で群を抜いた魅力を放っている。また80年代~90年代以降のインディ・ロックとの継承を意識しているようにも思えた。要するに二作ともに2020年から2021年のインディペンデントなロック/ポップのありようを実にヴィヴィッドに聴かせてくれるアルバムなのだ。
 つまり二作、甲乙つけがたい。2021年には二作をまとめたデラックス・エディションも配信されている。まさに必聴の作品である。

デンシノオト