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shame

Indie Rock

shame

Drunk Tank Pink

Dead Oceans / ビッグ・ナッシング

木津毅   Apr 20,2021 UP
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「shame + live show」で動画検索すれば、いま世界からもっとも失われているものがヒットするだろう。すなわち、満員になった小さなライヴハウスのステージで、野放図に楽器をかき鳴らし叫び散らす若者たちだ。学校に行けなくて教育や出会いの機会を奪われている学生の報道を見るたび僕は胸を痛めてしまうけれど、それと同じくらい、クラブやライヴハウスに行けない若者たちはどうしているのだろうと思う。2010年代中頃から顕在化しはじめ、現在ピークを迎えているように見えるUKを中心としたバンド・ブーム──そのほとんどがポストパンク的なものだ──は、「現場」が失われていることでむしろ訴求力を増しているようだ。シェイムはなかでもエネルギッシュなライヴとストレートにパンキッシュなサウンドで注目を集めたバンドであり、だから、彼らとそのオーディエンスはまさにいま「機会を失われた若者たち」としてここにいる。
 それにシェイムは、デビュー作の収録曲でテレーザ・メイ首相をおちょくったりするような分かりやすく反抗的な態度が受けていたところもある。最大の参照元のひとつにザ・フォールがあったという彼らは、音としてはブラック・ミディや〈ワープ〉と契約したスクイッドほどエクスペリメンタルではないものの、やはり反抗的な佇まいのホワイト・ファット・ファミリー周辺から出てきたというところも含め、自分たちの怒りや苛立ちをドライヴさせるためにパンク~ポストパンクを鳴らしているのだろう。再開発が進みパンデミック以前から(金のない若者たちの)「現場」が失われていたロンドンから、こうしたアティテュードのロック・バンドが登場し支持されたのは必然だった。

 ただ、彼らが若いエネルギーを発露させるロック・バンドとして人気を集めてきたということは、逆に言えばセカンド・アルバムが難しいということでもある。UKではとくに、デビュー作をメディアに持ち上げられたロック・バンドが続かないことがあまりにも多い。その点、シェイムは職人肌のジェームズ・フォード(シミアン・モバイル・ディスコ)をプロデュースに迎え、音のバラエティとサウンドの立体感を増すことで真っ当に成長を見せる道を選んだようだ。たとえば “Water in the Well” で方々から聞こえてくるユーモラスなパーカッションや、分厚いコーラス・パートへ突入するダイナミズムは、ファースト・アルバムから確実にビルドアップされたところだ。
 けれどもそれ以上に興味深いのは、『Drunk Tank Pink』をよく見ると浮かび上がってくる内省的なムードがパンデミック以降の閉塞感とシンクロしていることである。アルバム・タイトルはじっと眺めていると精神を落ち着かせるピンクのことで、バンドのフロントパーソンであるチャーリー・スティーンが自宅のクローゼットに塗った色のことだそうだが、それは過酷なツアー生活から心の平穏を取り戻すためのものだったという。歌詞を見れば、彼らの内側には行き場のない混乱が吹き荒れている。初期フォールズのように執拗かつミニマルなギター・リフではじまりカオティックなアンサンブルに突入していく “6/1” では「俺は自分が嫌悪しているすべてのものの象徴/それでも自分がずっとなりたいと夢見ていた者」という吐露からはじまり「俺は自分を憎み、自分を愛している」という叫びで終わるが、こうした分裂的な感覚がこのアルバムの肝だ。陰鬱なフィーリングを醸す “Snow Day” は偶然にせよ自己隔離期の孤独感を捉えているし(「いつものように会えないのなら、なぜ会うべきなのか?」)、ソリッドなギターと変拍子の応酬が不安定なグルーヴを生む “Harsh Degrees” では自分の意思で動けない苛立ちが蓄積される(「きみは俺の操り師/俺はきみの遊ぶオモチャ」)。もっともアップテンポで簡潔なパンク・ソングである “Great Dog” のような曲でさえ、よく聴けば下のほうでドローン音が鳴っているなど不穏な響きとなっており、なかば無理矢理に疾走するバンド・アンサンブルとも相まって抱えきれない不安が暴走していくようだ。
 そうした意味では、ミドル・テンポのなか濁った鍵盤音と迫力を増していくノイズが空間を覆っていくクロージングの “Station Wagon” はバンドにとってこれまででもっとも挑戦的なナンバーだ 。「新たな解決策を出さないと/新年の抱負を立てないと、まだ年末ですらないけれど」と投げやりに吐き出されるこの曲は、バンドや彼らのオーディエンスが抱える現在の行き止まり感と未来の不透明さをうまく捉えているように思える。だからこそ『Drunk Tank Pink』は2021年の子どもたちのためのロック音楽として鳴っているし、ここに収められた荒々しいパンク・ソングがライヴハウスで再び演奏されるときが待ち遠しい。“Station Wagon” ではそして、「腐っている暇はない/新車のステーション・ワゴンが旅に出ていく」と、同じように鬱屈する若者たちへのぶっきらぼうな励ましがこめられている。

木津毅

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