MOST READ

  1. Alvvays - Antisocialites (review)
  2. Kenichi Itoi - EXN / kafuka - Polyhedron (review)
  3. 女神の見えざる手 - (review)
  4. Mount Kimbie - Love What Survives (review)
  5. interview with Bicep 詩情豊かな上腕二頭筋 (interviews)
  6. yahyelと語り合うマウント・キンビーの魅力 ──篠田ミル(yahyel)×野田努 (news)
  7. Columns 生き残る者たちを愛すること ──Mount Kimbie『Love What Survives』の魅力を紐解く (columns)
  8. Martin Rev - Demolition 9 (review)
  9. Columns 即興音楽の新しい波 ──触れてみるための、あるいは考えはじめるためのディスク・ガイド (columns)
  10. Jack Peoples - Laptop Cafe (review)
  11. ギミー・デンジャー - (review)
  12. interview with YURUFUWA GANGゆるふわギャングがぶっ壊しにキタ! (interviews)
  13. Arca × Ryuichi Sakamoto ──アルカが坂本龍一をリミックス (news)
  14. KANDYTOWN - ──キャンディタウンがついにメジャー・デビュー (news)
  15. 汚れたダイヤモンド - (review)
  16. interview with IO - KoolBoyの美学 (interviews)
  17. special talk : Shota Shimizu × YOUNG JUJU 特別対談:清水翔太 × YOUNG JUJU (interviews)
  18. yahyel - ──この一風変わった名前のバンドをきみはもう知っているか? ヤイエルが500枚限定の初CD作品をリリース (news)
  19. Ben Frost ──ベン・フロストがスティーヴ・アルビニと共同録音した新作をリリース (news)
  20. flau ──レーベル10周年の回顧展を代官山蔦屋書店にて開催中 (news)

Home >  Reviews >  Film Reviews > TRANCE

Film Reviews

TRANCE

TRANCE

監督 / ダニー・ボイル
出演 / ジェームズ・マカヴォイ、ヴァンサン・カッセル、ロザリオ・ドーソン
配給 / Twentieth Century Fox
公開 / 2013年10月11日

公式サイト http://www.trance-movie.jp

文:久保憲司   Sep 02,2013 UP
このエントリーをはてなブックマークに追加

 出だしのベタなはじまり方におっ、ついにダニー・ボイルもセル・アウトしたかと思ったが、だんだんとトランスな感じになっていく展開はさすがである。しかし、新作『トランス』は難しい映画である。

 難しいと言っても難解とかじゃなく、おもしろいような、おもしろくないような、どっちなのだろうと判定するのが難しいという意味である。

 『トランス』はダニー・ボイルのデビュー作『シャロウ・グレイブ』と同じく、利己主義者がどんどんと泥沼にハマっていく小洒落たサスペンスなのだが、どうも『シャロウ・グレイブ』のようにシャープでない。『ビーチ』が『トレインスポッティング』のようにシャープじゃなかったように。

 催眠療法というネタを持ってきたところが、物語からシンプルさを奪ってしまったと思う。いや、催眠療法があるから物語にトランス感を生んで、ドラッギーな部分が不安感からくる気持ちよさを生むのだが、無理があると思う。

 催眠で人間をコントロールできないというのは、僕でも知っている一般常識なので。

 でも、世の中変わっているかもしれないですよね。主人公が催眠治療を受ける治療院はアメリカの高級な精神科医の病院みたいで、僕が知っている頃の催眠治療って、中華街の片隅にあるようなうさん臭いところでしたから。

 『トランス』を観て、僕もいまから催眠術の資格とって金持ちになろうかと思った。

 犯罪者も変わっていている。金持ちそうだった。

 ダニー・ボイルの映画はそうやって時代の変化をちゃんと描いていると思う。

 日本の変化は全然気づいてないけどね。『トランス』のオチのひとつが日本ではまだ全然だめなことをダニー・ボイルは知らない。日本で観た人はオチを説明されるまでクエスチョン状態だと思う。

 そのオチが『クライング・ゲーム』と同じで笑った。やっぱダニー・ボイル、イギリスの先輩監督、ニール・ジョーダンに影響受けているのかと思った。

 『クライング・ゲーム』の方は笑いとばすことじゃなく、深刻な問題ですけど。『トランス』は、えっ、そんな細かいことヨーロッパはまだ気にしているの、と思った。

 すいません、観てないと人には何の話かわからないですよね。でも、観たらこのネタは絶対大爆笑すると思う。

 難しいという意味はこういうことなのだ。恋人と観に行ったら、「いろいろ考えさせられるよね。」とオシャレにしゃべることもできそうな映画なのだが、友だちと見に行ったら、「なんかむちゃくちゃ過ぎない」とバカにして終わるような映画、一人で見に行ったら、友だちにどう説明したらいいのか悩む映画。

 ダニー・ボイルらしい映画だけど、もうちょっとシンプルにした方がよくなかったかいと思った。

文:久保憲司