ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. Westbam & Takkyu Ishino ──ウェストバムと石野卓球による東阪ツアーが開催 (news)
  2. Roger & Brian Eno ──ロジャー&ブライアン・イーノが初めてのコラボ・アルバムをリリース (news)
  3. Jagatara2020 ──80年代バブル期の日本に抗い、駆け抜けた伝説のバンド、じゃがたらが復活! (news)
  4. 渡邊琢磨 ──映画『ECTO』が生演奏つきで上映 (news)
  5. Four Tet ──フォー・テットがニュー・アルバムをリリース (news)
  6. Columns なぜスコット・ウォーカーはリスペクトされているのか (columns)
  7. Carl Michael Von Hausswolff - Addressing The Fallen Angel (review)
  8. JME - Grime MC (review)
  9. Oli XL - Rogue Intruder, Soul Enhancer (review)
  10. Columns NYクラブ・ミュージックの新たな波動 後編:進化する現代のレイヴ・カルチャー (columns)
  11. Nick Cave and The Bad Seeds - Ghosteen (review)
  12. 漢 a.k.a. GAMI監修『MCバトル全書』 ――名バトルからあの事件の裏側まで、現行ジャパニーズ・ヒップホップシーンのリアルがわかる『MCバトル全書』が発売中 (news)
  13. パラサイト 半地下の家族 - (review)
  14. Yaporigami ──山梨出身ベルリン在住の電子音楽家が〈Virgin Babylon〉より新作を発表 (news)
  15. Columns TINY POPというあらたな可能性 (columns)
  16. Jagatara2020 ──復活目前のじゃがたら、ライヴ会場先行販売ほか店舗限定特典&パネル展の開催が決定 (news)
  17. Columns そこではいったい何が起きていたのか ──ブレクジットとUK音楽シーン (columns)
  18. interview with Bo Ningen UK発ジャップ・ロック、その正体とは! (interviews)
  19. Brian Eno ──ブライアン・イーノが新曲を公開、保守党に任せれば何もかもうまくいく! (news)
  20. interview with Takuma Watanabe 呪いとしての映画音楽──渡邊琢磨 インタヴュー (interviews)

Home >  Reviews >  合評 > 神聖かまってちゃん- みんな死ね / つまんね

神聖かまってちゃん

合評

神聖かまってちゃん- みんな死ね / つまんね

Dec 22,2010 UP 三田 格加藤綾一橋元優歩水越真紀野田 努三田 格加藤綾一橋元優歩水越真紀野田 努三田 格加藤綾一橋元優歩水越真紀野田 努三田 格加藤綾一橋元優歩水越真紀野田 努三田 格加藤綾一橋元優歩水越真紀野田 努三田 格加藤綾一橋元優歩水越真紀野田 努三田 格加藤綾一橋元優歩水越真紀野田 努三田 格加藤綾一橋元優歩水越真紀野田 努
このエントリーをはてなブックマークに追加
12345

120%の真実であり、しかし120%の真実ではない文:野田 努


神聖かまってちゃん / みんな死ね
パーフェクト・ミュージック E王

Amazon iTunes


神聖かまってちゃん / つまんね
ワーナーミュージック・ジャパン E王

Amazon iTunes

「生きる日々、ずる休み/それはただ、燃えないゴミ」"口ずさめる様に"
 神聖かまってちゃんは虚無を生きているかもしれないが、虚無的ではない。千葉ニュータウンから登場したいかれたオアシスに聴こえるときもあるけれど、メロドラマティックな感情移入を拒絶するという意味でアンチ青春的とも言えるこの青春の音楽は、聞き捨てならない巧妙な言葉とメリハリのあるメロディ、際どい風刺精神とポップ志向、そしての子の変幻自在の声によって面白いように混乱を巻き起こす。おまえらの言ってることは何か違うんだよ、頭をかきむしりながら鋭い目で苛立ちを露わにするステージのの子を思い浮かべる。
「知っているからたまに狂っちまうんだ 」......"美ちなる方へ"
 ライヴで初めて"天使じゃ地上じゃちっそく死"を聴いたときには本当に身震いした。重たいベースラインに導かれて発せられる「いやだ!」という声は、華やかな渋谷の街を一瞬にして黙らせるようだった。露わになったとめどない感情......そして「死にたいな」という叫びが会場内のいたるところに突き刺さる。それは120%の真実であり、しかし120%の真実ではない。矛盾が爆発する。その瞬間、新しい「生きたい」が鼓動するのを僕は感じる。

 「ノー」と言うことで開ける未来がある、というパンクのクリシェにならって言えば、神聖かまってちゃんはこの国の支配的な力――「強い者しか生き残れない」という価値観に強烈な「ノー」を叫んでいる、と言えるだろう。弱さ、け落とされる感情、抑えつけられた思い、ヘドの塊や心療内科で処方される向精神薬......そんなものを寄せ集めながら、しかしそうした負を逆転していくような衝動を、あるいはその仕掛けを彼らの音楽から感じることができる。笑えるようで、しかし笑うに笑えない言葉が、ものすごい本気とものすごい冗談のあいだを素早く往復しているようだ。あるいはまた、男らさしや女らしさといったジェンダーを越えたところから聴こえるの子の中性的な声によるシャウトが、その「ノー」にさらに複数の意味を持たせているようにも思う。それから......ものの喩えとして、"ツイスト&シャウト"→"アナーキー・イン・ザ・UK"→"天使じゃ地上じゃちっそく死"と並べることもできるかもしれないけれど、当たり前の話、生きている時代も社会も違う。セックス・ピストルズの時代はもうちょっとシンプルだった。ステージの上でネットの書き込みを晒す必要などなかったのだから......。

 騒々しい『みんな死ね』、ポップに毒づく『つまんね』、どちらもマスターピースだ。"神様それではひどいなり"を聴く。「神様貴様はどこにいる /神様てめぇぶっ殺してやる /殺してやる」、ハハハハ、暗い気持ちも明るくなる。他にも良い曲がたくさんある。マッチョな時代へのアイロニー"男はロマンだぜ!たけだ君っ"、鬱病時代をシニカルに描く"僕のブルース"や"最悪な少女の将来"、そしてパワフルな"いかれたNeet"や"口ずさめる様に"......。2010年の12月、神聖かまってちゃんは世界の見方を変えてしまった。 

文:野田 努

»Next 橋元優歩