ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. Quit Your Band! ──イギリス人ジャーナリストによるJポップ批評、『バンドやめようぜ!』刊行のお知らせ (news)
  2. Melanie De Biasio - Lilies (review)
  3. AFX - London 03.06.17 [Field Day] / AFX - Korg Trax+Tunings for falling asleep / AFX - Orphans (review)
  4. Nicola Cruz ──エクアドルの電子音楽家、ニコラ・クルース初来日決定 (news)
  5. Nils Frahm ──ニルス・フラームが年明けにニュー・アルバムをリリース (news)
  6. L.A. Witch - L.A. Witch (review)
  7. Flava D ──フレイヴァ・Dが再来日、東京・大阪・高知を巡遊 (news)
  8. interview with doooo マッドでファニー、盛岡からやって来た気鋭のビートメイカー (interviews)
  9. Lee Gamble - Mnestic Pressure (review)
  10. Columns ハテナ・フランセ 第11回 フレンチ・エレクトロニック・ミュージック;メジャー編 (columns)
  11. パーティで女の子に話しかけるには - (review)
  12. interview with Yukio Edano つまり……下からの政治とはいったい何なのか (interviews)
  13. New Sounds of Tokyo 東京でもっとも尖っている音楽をやっているのは誰だ? (interviews)
  14. interview with Mount Kimbie 生き残ったのは誰だ (interviews)
  15. Oneohtrix Point Never ──OPNが新たなミックス音源を公開 (news)
  16. interview with IO - KoolBoyの美学 (interviews)
  17. 音楽と建築 - ヤニス・クセナキス 著 高橋悠治 編訳 (review)
  18. King Krule - The Ooz (review)
  19. Cid Rim - Material (review)
  20. Taylor Deupree & Marcus Fischer ──〈12k〉のテイラー・デュプリーとマーカス・フィッシャーが来日、東京・奈良・岡山をツアー (news)

Home >  Reviews >  Live Reviews > Andy Stott- @恵比寿リキッドルーム

Live Reviews

Andy Stott

Andy Stott

@恵比寿リキッドルーム

May 1, 2013

野田 努  
写真:小原康広   Mar 08,2013 UP
このエントリーをはてなブックマークに追加

 すぐ隣で踊っているのがゲンイチで、その隣には渡辺健吾が......って、こ、これは......いったい、そしてライヴの最後にスピーカーからはジャングルが飛び出す。
 おい、いまは何年だ!? 1992年? 2013年だ。が、しかし......。
 ここにあるのが実はポスト・ハードコア・レイヴだと言ったら君は一笑に付すだろう。1991年~1992年のUKハードコアすなわちレイヴ伝説はもう過去こと。だが、レイヴの亡霊はブリアルのエレジーを介して、まばゆい太陽から寒々しい暗黒に姿を変えて甦った。それをインダストリアル・ミニマルと人は呼んでいる。アンディ・ストットはこの動きの火付け役であり、キーパーソンだ。昨年の『ラグジュアリー・プロブレムス』は日本でも異例のヒット作となって、リキッドルームという大きなキャパでライヴをやるくらいの注目と人気を集めるにいたったわけである。オリジナル世代もいたが、フロアには若い世代も混じっていた。

 まずはこの現象に関して簡単に説明してみよう。たとえば1991年~1992年あたりのテクノの作品のジャケを並べてみる。ジ・オーブでもサン・エレクトリックでもエイフェックス・ツインでも良い。初期のオウテカでも〈トランスマット〉のコンピでも、その時代にものなら何でも。続けて、アンディ・ストットの「パスド・ミー・バイ」「ウィ・ステイ・オールトゲザー」あるいはデムダイク・ステアやブラッケスト・エヴァー・ブラックあたりのジャケを並べてみる。ほら、20年前の色彩豊かなアートワークは灰色の美学へと、太陽の物語は血みどろの惨劇へと転換されたのがわかるでしょう。
 この新しい世代の美学に近しいものが20年前にもある。初期のジェフ・ミルズや初期のベーシック・チャンネル、あるいはアンディ・ストットのフェイヴァリットのひとつであるドレクシアなど......(ストットの初期の影響とマンチェスターのシーンについては紙ele-kingのvol.9に掲載の彼のインタヴューを参照)。

 かつて花田清輝が指摘しているような、風俗化したアヴァンギャルドのなれの果てとしてのホラー映画、『死霊のはらわた』のごとき、おぞましい映像の断片をバックに、スローなピッチのミニマル・ビートが脈打っている。ベーシック・チャンネルをマイナス8でミックスしながら、上物はアインシュツルツェンデ・ノイバウテンめいた不吉極まりない音響が飛んでいる。『ラグジュアリー・プロブレムス』で聴けるあの女性の声がなければ世界は永遠の闇に閉ざされていたかもしれない。が、この誇張されたアンダーグラウンド感覚は、今日の明るいクラブ文化が失ったものかもしれないな......と思った。そう、この怪しさ、このスリル、この不健全さ。ビートルズからブラック・サバスへ、ピンク・フロイドからスロッビング・グリッスルへ、23スキドゥーからシャックルトンへ、レイヴからインダストリアル・ミニマルへ......。

 会場で会ったベテラン・クラバーのY君が言った通りだった。これはサイケデリック・ミュージックであり、レイヴ・カルチャーであり......、いや、もちろんメタファーとして言うが、異教徒のそれ、亡霊として生き延びているそれだった。筆者も生ける屍体(社会から抹殺された者たち)のひとりして踊った。なるほど、身体が勝手に動く。これはマンチェスターからのアンダーグラウンド宣言だった。ゴシックでもインダストリアルでもなんでもいいではないか、そこにレイヴがあるのなら。もうこうなると、デムダイク・ステアも行きたい!

野田 努