ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. August Greene - August Greene (review)
  2. Gonno & Masumura - In Circles (review)
  3. Brett Naucke - The Mansion (review)
  4. 078 KOBE 2018 ──神戸のフリーフェスにてURがライヴ出演 (news)
  5. Against All Logic - 2012-2017 (review)
  6. Gonno & Masumura ──ゴンノ&マスムラ、テクノとアフロビートで宇宙を目指す (news)
  7. IDM definitive 1958 - 2018 ──IDM/エレクトロニカの大カタログ刊行のお知らせ (news)
  8. interview with Kaoru Inoue 人はいかにして、このハードな人生を生きながらゆるさを保てるか? (interviews)
  9. SILENT POETS ──サイレント・ポエツ、奇跡的メンツの「スペシャル・ダブ・バンド・ライヴ・ショー」決定 (news)
  10. Tom Misch - Geography (review)
  11. Lolina - The Smoke (review)
  12. STRUGGLE FOR PRIDE ──伝説のアーバン・ハードコア・ノイズテラー、SFP新作/そして1stが追加曲ありで再発 (news)
  13. interview with Unknown Mortal Orchestra 暗闇の先のメロウネス (interviews)
  14. KANDYTOWN - ──キャンディタウンがついにメジャー・デビュー (news)
  15. interview with Phoenix - ──フェニックス、来日記念インタヴュー (interviews)
  16. R.I.P. Cecil Taylor すべての棺桶をこじ開けろ (news)
  17. Terekke - Improvisational Loops (review)
  18. Moodymann ──ムーディマンがニュー・アルバムをリリース (news)
  19. Columns ダニエル・エイヴリーの新作が仄めかすもの (columns)
  20. interview with Subarashika この素晴らしか世界 (interviews)

Home >  Reviews >  Live Reviews > CARRE x SAKURA KONDO 〈GREY SCALE〉- @恵比寿 KATA

Live Reviews

CARRE x SAKURA KONDO 〈GREY SCALE〉

IndustrialNoise

CARRE x SAKURA KONDO 〈GREY SCALE〉

@恵比寿 KATA

April 18, 2015

文:倉本諒  
写真:Ryosuke Kikuchi   May 21,2015 UP
このエントリーをはてなブックマークに追加

 はじめて僕がロサンゼルスはエコーパークに部屋を間借りした頃、夜な夜なジョイントの煙にくすぶられてはネオン管の光に魅せられ自転車で近所を徘徊していたわけだが、気づけば毎度近所のギャラリーから聴こえる爆音に引き寄せられて、頭のおかしな連中と夜が更けるまで騒ぐハメになったし、当時の自分にとってその馬鹿馬鹿しい体験は強烈なものであった。

〈GREY SCALE〉──都内を勢力的に活動するインダストリアル・デュオ、CARREとヴィジュアル・アーティストであるSAKURA KONDOによる〈KATA〉でのエキシビジョンに足を運び、そんな過去の体験が更新されてゆくのを強く感じた。本展はSAKURA氏による平面作品へのCARREのサウンド・トラックである同名タイトルの音源発売を記念したイヴェントであり、彼女のグラファイトとアクリルを主とした大小さまざまなモノクロームのグラフィック作品に囲まれ、CARREのMTR氏による巨大構造体が中心に据えられた〈KATA〉の空間で期間中限定的に彼らがパフォーマンスを行なうというものであった。

 CARREの二人から本展で彼らが6時間ブッつづけでパフォーマンスを行うと聞いたときは耳を疑った。僕も彼らも親交が深い、オルタナティヴ・メディアであるヴィンセント・レディオの協力もあり、その姿はブロード・キャストでも配信されていたのでお茶の間からも彼らの底無しの集中力を体感できたわけだが、いやはや常軌を逸していた。僕はゆるりと自宅にて作業をしながらその様子をチラチラとうかがいながら会場に向かったのである。

 クライマックスを向かえる終盤に会場に到着してなるほど、今回の彼らのロングセットが単なる無茶な試みではないことを実感した。CARREのサウンドもSAKURA氏の平面作品も抽象的ではあれど、観覧者がそこから得るイメージの輪郭はいっさいぼやけることはない。それはサウンドトラック/サウンドスケープといった凡百の雰囲気系表現とは確実に異なる力強い存在感だ。そこには彼らの確固たる美意識や思想が見事に自然な形で具現化されていた。ゴリゴリと机上でドローイングを増幅させつづけるSAKURA氏の横で、NAG氏がベース/ドラムマシンで丁寧に紡ぐBPM70に満たない低速かつ金属的な音像、MTR氏が奏でる特異なシンセジスによって形成されるCARREのサウンドは重くはあれど不思議と楽観的である。聴者は表面的な感情の先にある混沌の海原を心地よく漂流するハメになるのだ。この日の彼らのセットは普段よりも流れるように展開していったと僕には感じられたが、後でCARREの二人と話したところ、6時間という尺が精神・肉体にもたらす変化が如実に表れたに過ぎないとのこと。どうやらCARREもSAKURA氏も3人とも休憩無しで完走したようなので、あの場を訪れた人々と彼らの心身が渾然一体となった表出を僕は幸運にも目撃できたのだと確信している。

 今回の〈GREY SCALE〉展での彼らの試みは、単なるエキシビジョン+パーティーといった形式的な企画とは異なる揺るぎない完成度を誇るマルチな現場提供に成功した。すべての人間に対して開かれた現場でありながら、日常に埋もれがちな大切な“気づき”やクロスオーバーするシーンに溢れるインスピレーションの泉だ。まーたやられたよ畜生。そう思いながらクロージング・パーティーに彼らの演奏を邪魔しに行ったのは省略。

 MTR氏主催によるレーベル、〈マインド・ゲイン・マインド・デプス(MGMD)〉より間もなくリリースされる『GREY SCALE』、毎度期待を裏切ることのない最高のパッケージングと国内最高峰のライヴ・エレクトロニクス・サウンドにぜひとも触れてほしい。

文:倉本諒