interview with The Horrors | ザ・ホラーズ、約10年の白歴史
April 28, 2014

取材:岩渕亜衣

 ザ・ホラーズが3年ぶりとなる4枚めのアルバム『ルミナス』をリリースした。2005年に結成され、ダークなガレージ・パンクと徹底してゴス的なヴィジュアルでセンセーショナルにデビューした彼らだが、そのイメージに留まることなくアルバムごとにさまざまな音楽的探究を行い、取り入れた知識をサウンドとして具現化し、変化しつづけてきた。彼らにとって初期のイメージはコントロールできなかった若気の至りでもあり、いまとなっては少し恥ずかしさも感じているようだ。しかし、ここまでのキャリアにおいては周囲に流されたり時流に迎合したり安易にルックス面で路線変更したりしたわけではけっしてない。20才前後からレコードの収集やDJをしたりしながらマイペースに吸収してきた知識、そこから自然発生した興味を資本とし、何より持ち前のセンスで独自のホラーズのサウンドを作り出しているのだから、その変遷はどれも輝かしい〈白歴史〉になっている。


The Horrors - Luminous

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 今作『ルミナス』は、ダンス・アルバムだ。グルーヴ感のあるビートとサイケデリックなサウンドが全編を覆い、ファリス・バドワンのヴォーカルもいつになく甘く、気怠く、ポジティヴだ。現在は世界のフェスティヴァルでもヘッドライナーを務めるほどの存在になった彼らだが、この、暗がりできらめくような密室感のあるダンサブルな作品によって、よりオーディエンスとの距離を縮めるはずだ。変わりつづける彼らの2014年の現状を切り取ったこの作品もまた、ホラーズの「白歴史」として更新されていくだろう。

 今回インタヴューに答えてくれたのは、ファリス・バドワン(Vo)とリース・ウェッブ(B)。インタヴューがはじまる前、レコード・コレクター/DJとしても名を馳せる音楽博士のようなリースはわたしがプレゼントしたガレージの7インチ・ディスク・ガイドに目を輝かせて熱心に読みふけったり、アートスクール出身で絵の個展を開いたこともあるファリスは自分のお気に入りの極細のボールペンでひたすら緻密なイラストを描いていたりと、両者とも穏やかで落ち着いたなかに好きなものへ寄せる真摯な熱意が感じられた。インタヴューでもさまざまに表現を変えたりしながら、伝えたいことをとても丁寧に考えて答えてくれた印象だった。ザ・ホラーズが日本にもファン・ベースを根強く持ち、その人気を一過性ではなくじわじわと増しているのも、そういうところに理由があるのかもしれない。

ただの仲良しが集まっただけのギャング──そういうバンドだったし、いまもじつはそうだしね。(リース・ウェブ)

個人的にはザ・ホラーズはデビュー当時から大ファンで、これ私物なんですけど……(デビュー当時にザ・ホラーズが表紙を飾った『NME』を見せながら)いまこれを見てどう思います?

リース・ウェッブ(以下R):この写真撮らなきゃよかった……(笑)。7年前だね。

この時といまと、音楽に向かう気持ちに変化はありましたか?

ファリス・バドワン(以下F):物事の進め方っていう意味では何も変わってない気がするよ。熱意とか熱さとか、それが僕らには大事だから。最初のアルバムの当時は自分たちもライヴをやることに一生懸命でそのやり方を模索していたところがあると思う。ライヴをやりながら発展していったようなところがあって、そのやり方ってじつはいまも変わっていない。表現力が増したとか、腕が上がったことでよりやりたいことに近づけるようになったという部分、根っこにある気持ちは変わってないと思う。ファースト・アルバムの頃からとにかくやりたいアイデアがいっぱいあって、それをどんどん実験してみたいという意欲があって、それに突き動かされていたというところはまったく変わらないし、でもあのアルバムではなかなか実現しきれなかった部分もあるけど、でもそこをふまえて次があるという点ではすごく意味のある作品だったなと思うよ。

でもちょっと写真だけは恥ずかしいと。

F:いやいや、べつに恥じるところはないんだけど(笑)、自分たちが思っていた自分たちとはちがう形で表現されている写真が一部あるなと。とくに小綺麗な形で出ちゃっているのが多い気がして。というのも、ライヴにおける当時の僕らって、初歩的でアグレッシヴでヴァイオレントですらあるようなバンドだったんだけど、一部のカメラマンの手にかかるとそれが小綺麗にまとめられちゃって、作り込まれているようなイメージになってしまっているものがあったりするんだよね。実際とちがったところがあると思うよ。もっと自分たちはラフなはずだったのにってね。

R:自分たちもまだわかってなかったんだよね。当時の自分たちのステージでのあり方と写真のイメージがちがうのを、自分たちでもどうすればいいかわかっていなかったかもしれないから。

当時の写真も初期衝動的で素敵ですけどね。

R:僕らもこういう写真は嫌いじゃないし、イメージ的にいいなと思うところもあるんだけど、当時の自分たちの表現として正確さにおいては欠けるのかなと思うんだよね……。

メディアに作られてしまっているなという感じはあったんですか?

R:作られてしまったというよりは、一部誤解されるかなって。スタイリッシュでお膳立てされたような印象を与える写真が一部あって、でもそれは本来の僕らの姿とはちょっとちがって、僕らの音を聴いたことがなかったり会ったことがない人が見たら誤解するのかなって。そういう意味で見せ方として不正確だった部分はあると思うな。ファッション的なバンドとか服装にこだわるバンドみたいなイメージを与えそうな写真に対して僕らはそういう印象を持ったことはたしかだよ。 ただの仲良しが集まっただけのギャング──そういうバンドだったし、いまもじつはそうだしね。ただ、ときとともに人間は変化するから、いまの僕らだったらさすがにあれは無理だと思うし、まったく意味をなさないと思うけど、当時の僕らはああいう部分があったっていう点ではリアルさもあるだろうね。だから、そこまでの抵抗感はないよ。昔とすっかり距離を置いているということではなくて、あれはあれで重要な時期だったと思うし、あの頃だって実際にショーに足を運んでくれる人たちには実際の僕らの姿は伝わっていたわけだし。あの頃を否定するつもりも忘れようとしているつもりでもない。単純にいまの僕らはちがうなって思うよ。

では話が変わりますが、リミックス・アルバム『ハイヤー』(2012年)をはさみ前作『スカイング』(2011年)から3年ほどありましたがその間は何をしていましたか?

R:そのうちの2年間はほぼツアーでとられていたよ。フェスもあったりとか……。詳細は省くとして(笑)、いったんレコーディングに入ったあとにまたフェスも入ったりして、3年の間で事実上18ヶ月はツアーに出ていたよ。で、やっとスタジオに入れたなと思ったら夏フェスのシーズンが来てしまってまた外に出るっていう感じで、けっこう途切れ途切れだったんだよね。ライヴに忙しかったからなかなかフォーカスを絞ってレコーディングに専念することができなくて、3年はあっという間だったよ。基本的に自分たちが完全に納得するものができるまではレコードを世に出さないっていう僕らの姿勢があるから、長い時間はかかったけど、べつに焦る必要もなかったから納得がいくまで時間をかけようというスタンスでできたよ。

『ハイヤー』のリミキサーの人選は自分たちで行ったのですか?

R:うん、そうだよ。

個人的にはピーキング・ライツ(Peaking Lights)の起用が興味深かったです。そのあたりのシーンにも興味があるんですね?

R:そうだね。そういったシーンにはつねに目を光らせているし、ピーキング・ライツは最近のアーティストのなかでは僕たちのフェイヴァリットかな。サウンド的にもすごくおもしろいことをやっているし、ダブの影響を取り込んで、ホーム・スタジオを持っていて……たぶん結婚はしてないと思うけどカップルなんだよね? そのスタジオで手作りのシンセサイザーを作ったりテープに録音したり、そういうやり方も興味深いよ。他のリミキサーに関しては、普通のリミキサーとはちょっとちがうメンツになっているよね。ピーキング・ライツもバンドとしてライヴ活動をしている人たちでミキサーではないし、コナン・モカシン(Connan Mockasin)もいわゆるアーティストだし、ちょっと毛色のちがう人を選んだんだよ。

では最新作『ルミナス』についてなんですが、まず、このタイトルにした理由は?

F:(ずっと『NME』を読んでいたファリスが)いやあ……。それにしても、これを見てたら、いまはずいぶんいなくなっちゃったバンドが多いなあと思って。僕らもそんなに長くやっているつもりはなかったけど、考えてみれば9年でしょ。でもなあ、その9年の間にずいぶんバンドが現れては消えたもんだなあと思いながら読んだよ。
 で、『ルミナス』に関してだけど、曲作りのプロセスそのものなんじゃないかなと思うよ。エネルギーが発散されて、そのときに光が放たれるっていう感覚、僕らの曲作りは昔からそうだけど、とにかく自分たちを表現したいって。有機的な作業を経て最終的な形まで、曲が自然に発展していくそのプロセスを表現した言葉かな。

アルバムの発売を一度延ばし、ミックスにじっくりと時間をかけたようですが、こだわった部分、意識した部分は?

F:じつは延期した理由はミキシングのためにということではなかったんだ。というのも、僕らの制作って同時進行なんだよね。とくに“フォーリング・スター”とかはミキシングをしながらもまだレコーディングして、録ってはまたミキシングして、という形で。そのふたつを分けて考えていないから、ミキシングに入ってもなお曲が発展して、徐々に曲が完成していくっていうやり方なので、ミキシングのために延ばしたっていうわけではなかったんだよ。

今作では、非常にダンサブルに仕上がっていると感じましたが、そのように意識したんですか?

R:僕らがあらかじめこういう方向に、って座って話し合ったわけではなくて、まずは作業をはじめてみて、それがどこに向かっているかを見極めていったんだけど、最初の段階ではまったく何もなくて白紙のキャンバスがそこにあっただけど、その中から自分たちが何にエキサイトできるかなと探っていったんだけど、わりと早い段階で気がついてみたら自分たちがエネルギーの発散とか動きたくなる感覚とかに傾倒していることに気がついて、それを追求していくことになったんだ。いわゆる踊れるレコードになったのがその結果なんだけど、フェスティヴァルの会場でやるのも想定しているけど、今回はナイトクラブとかダンスフロアで聴いても楽しめるような音が頭の中にあったから、その点では意識的だったと言えると思うよ。最初は無意識だったけど、だんだんと曲作りの焦点になっていった。

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それにしても、これを見てたら、いまはずいぶんいなくなっちゃったバンドが多いなあと思って。(ファリス・バッドワン)

7年前ですらいたバンドがいなくなっちゃってることを考えると、そのさらに前にもいい音楽がたくさんあったっていうことを知らせるのは大事かなと思っているよ。(リース・ウェブ)

〈ザ・フライ・アワーズ〉でサーストン・ムーアと共演したようですが、いきさつは?ソニック・ユースをはじめとする彼の音楽についてそれまでどう思っていましたか?

R:とくにジョシュ(G)がソニック・ユースの大ファンで、たぶん彼にとっていちばん好きなバンドなんじゃないかな。ついこの間もジョシュとそういう話をしていたんだけど、ギターをはじめたきっかけがソニック・ユースだったって言ってたよ。ああいう、当たり前のギターではなくて、ペダルを噛ませたりノイズを鳴らしたりチューニングを変えてみたりっていうところで、一般的なギターの認識とはがらりと違うことをやったバンドだってね。ああいうバンドを聴いたのははじめてだったんだって。
 〈ザ・フライ・アワーズ〉の授賞式ではお互い演奏することがわかっていたから、まずはそのステージでいっしょに共演しようかっていう話と、レコードにも参加してくれないかって話を持ちかけたんだ。それまで会ったことなかったんだけど、言ってみたら気さくにいいよって言ってくれたんだ。実際に、ギター一本ぶらさげてスタジオに来てくれたんだよ。サーストンは、ゆっくりゆっくり準備するんだよね(笑)。こんなことがあってさー、とか話しながらね。2回やればじゅうぶんかなって思ったんだけど、せっかくだからって3回通しで弾いてもらって。で、そのあとお酒飲みに行って。飲みながらNYのいろんなバンドの話をしてもらったりしながらね。すごく楽しかったよ!

〈オール・トゥモロウズ・パーティーズ〉や〈オースティン・サイケ・フェス〉などのフェスティヴァルへの参加で受ける刺激はありますか? わたしは以前、ザ・ホラーズがデビューの年に〈SXSW〉へ行ったことがあるのですが、あなたたちが熱心にいろいろなバンドのライヴを観てまわっていたのを見かけましたよ。

R:今年も〈オースティン・サイケ・フェス〉がすごく楽しみなんだよ。週末にフェスに行くとだいたい自分たちの出番が終わったら帰ってきてしまうことも多かったり観たいバンドの出る日が違ったりして、なかなか他のバンドを見ることができないままだったりするんだけど、〈オースティン・サイケ・フェス〉はラインナップもいつも充実しているし、マイ・ブラッディ・ヴァレンタインとかブライアン・ジョーンズタウン・マサカーとかそういうバンドがばーっと出ているところに行ったらもうとにかく見たいよね。ロンドンでももちろん音楽シーンは充実しているしライヴもたくさん観れるけど、フェスに行ったら一気に観られるからね。僕らは相変わらずライヴを観に行くのが大好きなバンドだから、ああいう機会にはどんどん観るようにしているよ。

フェイスブックで、連載のようにしてお気に入りの曲のユーチューブ・リンクをあげて紹介していたり、レギュラーのDJイヴェントをずっと続けていたりして、たくさんの音楽を聴いて紹介しつづけているのもとても素晴らしいと思います。ホラーズを好きな若いファンたちも、あなた方のルーツであったりインスピレーションを受けた音楽を聴いて興味を広げていくでしょう。そのようによい音楽を紹介しつづけることには使命のようなものを感じているのでしょうか?

R:僕らが紹介しているものは、ホラーズに直接関係があるものとは限らないんだけどね。好きだと思うもの、聴いているものをみんなとシェアしたくてやっているよ。指一本でいろいろなものが聴けてしまう時代だけど、それでも聴き逃してしまういいバンドとかいい曲はたくさんあると思うので、それをぜひ紹介したいなと思うよ。僕らに直接影響を与えているかというとちょっとちがうものもあるけど、僕らのようなバンドに興味を持ってくれる趣味のいい人たちなら気に入ってくれるだろう、というものを紹介しているよ。さっきもファリスが言ってたけど、7年前ですらいたバンドがいなくなっちゃってることを考えると、そのさらに前にもいい音楽がたくさんあったっていうことを知らせるのは大事かなと思っているよ。使命というほどではないけどね。

いまでもレコードは買いつづけていると思いますが、ロンドンでお気に入りの店は? また、フィジカルな録音物へのこだわりはありますか?

R:最近ロンドンのお気に入りのレコード・ショップは閉まっちゃったんだよね……。イントキシカ(Intoxica)とか……。

F:マイナス・ゼロ(Minus Zero)とかね。

R:世界のどこに行ってもレコード店は減っちゃっていて残念だね。

F:ボストンのあの地下のところも……、なんだっけね。

R:リリースに関して言うと、アートワークも含めてアナログのそんざい可能性を僕は信じているよ。流通形態がみんなMP3とかダウンロードとかになっているのはわかっているんだけど、売上のごくわずかだとわかっていても、アナログの存在感は僕は強く感じているし大事にしたいね。

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 ザ・ホラーズが3年ぶりとなる4枚めのアルバム『ルミナス』をリリースした。2005年に結成され、ダークなガレージ・パンクと徹底してゴス的なヴィジュアルでセンセーショナルにデビューした彼らだが、そのイメージに留まることなくアルバムごとにさまざまな音楽的探究を行い、取り入れた知識をサウンドとして具現化し、変化しつづけてきた。彼らにとって初期のイメージはコントロールできなかった若気の至りでもあり、いまとなっては少し恥ずかしさも感じているようだ。しかし、ここまでのキャリアにおいては周囲に流されたり時流に迎合したり安易にルックス面で路線変更したりしたわけではけっしてない。20才前後からレコードの収集やDJをしたりしながらマイペースに吸収してきた知識、そこから自然発生した興味を資本とし、何より持ち前のセンスで独自のホラーズのサウンドを作り出しているのだから、その変遷はどれも輝かしい〈白歴史〉になっている。


The Horrors - Luminous

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 今作『ルミナス』は、ダンス・アルバムだ。グルーヴ感のあるビートとサイケデリックなサウンドが全編を覆い、ファリス・バドワンのヴォーカルもいつになく甘く、気怠く、ポジティヴだ。現在は世界のフェスティヴァルでもヘッドライナーを務めるほどの存在になった彼らだが、この、暗がりできらめくような密室感のあるダンサブルな作品によって、よりオーディエンスとの距離を縮めるはずだ。変わりつづける彼らの2014年の現状を切り取ったこの作品もまた、ホラーズの「白歴史」として更新されていくだろう。

 今回インタヴューに答えてくれたのは、ファリス・バドワン(Vo)とリース・ウェッブ(B)。インタヴューがはじまる前、レコード・コレクター/DJとしても名を馳せる音楽博士のようなリースはわたしがプレゼントしたガレージの7インチ・ディスク・ガイドに目を輝かせて熱心に読みふけったり、アートスクール出身で絵の個展を開いたこともあるファリスは自分のお気に入りの極細のボールペンでひたすら緻密なイラストを描いていたりと、両者とも穏やかで落ち着いたなかに好きなものへ寄せる真摯な熱意が感じられた。インタヴューでもさまざまに表現を変えたりしながら、伝えたいことをとても丁寧に考えて答えてくれた印象だった。ザ・ホラーズが日本にもファン・ベースを根強く持ち、その人気を一過性ではなくじわじわと増しているのも、そういうところに理由があるのかもしれない。

ただの仲良しが集まっただけのギャング──そういうバンドだったし、いまもじつはそうだしね。(リース・ウェブ)

個人的にはザ・ホラーズはデビュー当時から大ファンで、これ私物なんですけど……(デビュー当時にザ・ホラーズが表紙を飾った『NME』を見せながら)いまこれを見てどう思います?

リース・ウェッブ(以下R):この写真撮らなきゃよかった……(笑)。7年前だね。

この時といまと、音楽に向かう気持ちに変化はありましたか?

ファリス・バドワン(以下F):物事の進め方っていう意味では何も変わってない気がするよ。熱意とか熱さとか、それが僕らには大事だから。最初のアルバムの当時は自分たちもライヴをやることに一生懸命でそのやり方を模索していたところがあると思う。ライヴをやりながら発展していったようなところがあって、そのやり方ってじつはいまも変わっていない。表現力が増したとか、腕が上がったことでよりやりたいことに近づけるようになったという部分、根っこにある気持ちは変わってないと思う。ファースト・アルバムの頃からとにかくやりたいアイデアがいっぱいあって、それをどんどん実験してみたいという意欲があって、それに突き動かされていたというところはまったく変わらないし、でもあのアルバムではなかなか実現しきれなかった部分もあるけど、でもそこをふまえて次があるという点ではすごく意味のある作品だったなと思うよ。

でもちょっと写真だけは恥ずかしいと。

F:いやいや、べつに恥じるところはないんだけど(笑)、自分たちが思っていた自分たちとはちがう形で表現されている写真が一部あるなと。とくに小綺麗な形で出ちゃっているのが多い気がして。というのも、ライヴにおける当時の僕らって、初歩的でアグレッシヴでヴァイオレントですらあるようなバンドだったんだけど、一部のカメラマンの手にかかるとそれが小綺麗にまとめられちゃって、作り込まれているようなイメージになってしまっているものがあったりするんだよね。実際とちがったところがあると思うよ。もっと自分たちはラフなはずだったのにってね。

R:自分たちもまだわかってなかったんだよね。当時の自分たちのステージでのあり方と写真のイメージがちがうのを、自分たちでもどうすればいいかわかっていなかったかもしれないから。

当時の写真も初期衝動的で素敵ですけどね。

R:僕らもこういう写真は嫌いじゃないし、イメージ的にいいなと思うところもあるんだけど、当時の自分たちの表現として正確さにおいては欠けるのかなと思うんだよね……。

メディアに作られてしまっているなという感じはあったんですか?

R:作られてしまったというよりは、一部誤解されるかなって。スタイリッシュでお膳立てされたような印象を与える写真が一部あって、でもそれは本来の僕らの姿とはちょっとちがって、僕らの音を聴いたことがなかったり会ったことがない人が見たら誤解するのかなって。そういう意味で見せ方として不正確だった部分はあると思うな。ファッション的なバンドとか服装にこだわるバンドみたいなイメージを与えそうな写真に対して僕らはそういう印象を持ったことはたしかだよ。 ただの仲良しが集まっただけのギャング──そういうバンドだったし、いまもじつはそうだしね。ただ、ときとともに人間は変化するから、いまの僕らだったらさすがにあれは無理だと思うし、まったく意味をなさないと思うけど、当時の僕らはああいう部分があったっていう点ではリアルさもあるだろうね。だから、そこまでの抵抗感はないよ。昔とすっかり距離を置いているということではなくて、あれはあれで重要な時期だったと思うし、あの頃だって実際にショーに足を運んでくれる人たちには実際の僕らの姿は伝わっていたわけだし。あの頃を否定するつもりも忘れようとしているつもりでもない。単純にいまの僕らはちがうなって思うよ。

では話が変わりますが、リミックス・アルバム『ハイヤー』(2012年)をはさみ前作『スカイング』(2011年)から3年ほどありましたがその間は何をしていましたか?

R:そのうちの2年間はほぼツアーでとられていたよ。フェスもあったりとか……。詳細は省くとして(笑)、いったんレコーディングに入ったあとにまたフェスも入ったりして、3年の間で事実上18ヶ月はツアーに出ていたよ。で、やっとスタジオに入れたなと思ったら夏フェスのシーズンが来てしまってまた外に出るっていう感じで、けっこう途切れ途切れだったんだよね。ライヴに忙しかったからなかなかフォーカスを絞ってレコーディングに専念することができなくて、3年はあっという間だったよ。基本的に自分たちが完全に納得するものができるまではレコードを世に出さないっていう僕らの姿勢があるから、長い時間はかかったけど、べつに焦る必要もなかったから納得がいくまで時間をかけようというスタンスでできたよ。

『ハイヤー』のリミキサーの人選は自分たちで行ったのですか?

R:うん、そうだよ。

個人的にはピーキング・ライツ(Peaking Lights)の起用が興味深かったです。そのあたりのシーンにも興味があるんですね?

R:そうだね。そういったシーンにはつねに目を光らせているし、ピーキング・ライツは最近のアーティストのなかでは僕たちのフェイヴァリットかな。サウンド的にもすごくおもしろいことをやっているし、ダブの影響を取り込んで、ホーム・スタジオを持っていて……たぶん結婚はしてないと思うけどカップルなんだよね? そのスタジオで手作りのシンセサイザーを作ったりテープに録音したり、そういうやり方も興味深いよ。他のリミキサーに関しては、普通のリミキサーとはちょっとちがうメンツになっているよね。ピーキング・ライツもバンドとしてライヴ活動をしている人たちでミキサーではないし、コナン・モカシン(Connan Mockasin)もいわゆるアーティストだし、ちょっと毛色のちがう人を選んだんだよ。

では最新作『ルミナス』についてなんですが、まず、このタイトルにした理由は?

F:(ずっと『NME』を読んでいたファリスが)いやあ……。それにしても、これを見てたら、いまはずいぶんいなくなっちゃったバンドが多いなあと思って。僕らもそんなに長くやっているつもりはなかったけど、考えてみれば9年でしょ。でもなあ、その9年の間にずいぶんバンドが現れては消えたもんだなあと思いながら読んだよ。
 で、『ルミナス』に関してだけど、曲作りのプロセスそのものなんじゃないかなと思うよ。エネルギーが発散されて、そのときに光が放たれるっていう感覚、僕らの曲作りは昔からそうだけど、とにかく自分たちを表現したいって。有機的な作業を経て最終的な形まで、曲が自然に発展していくそのプロセスを表現した言葉かな。

アルバムの発売を一度延ばし、ミックスにじっくりと時間をかけたようですが、こだわった部分、意識した部分は?

F:じつは延期した理由はミキシングのためにということではなかったんだ。というのも、僕らの制作って同時進行なんだよね。とくに“フォーリング・スター”とかはミキシングをしながらもまだレコーディングして、録ってはまたミキシングして、という形で。そのふたつを分けて考えていないから、ミキシングに入ってもなお曲が発展して、徐々に曲が完成していくっていうやり方なので、ミキシングのために延ばしたっていうわけではなかったんだよ。

今作では、非常にダンサブルに仕上がっていると感じましたが、そのように意識したんですか?

R:僕らがあらかじめこういう方向に、って座って話し合ったわけではなくて、まずは作業をはじめてみて、それがどこに向かっているかを見極めていったんだけど、最初の段階ではまったく何もなくて白紙のキャンバスがそこにあっただけど、その中から自分たちが何にエキサイトできるかなと探っていったんだけど、わりと早い段階で気がついてみたら自分たちがエネルギーの発散とか動きたくなる感覚とかに傾倒していることに気がついて、それを追求していくことになったんだ。いわゆる踊れるレコードになったのがその結果なんだけど、フェスティヴァルの会場でやるのも想定しているけど、今回はナイトクラブとかダンスフロアで聴いても楽しめるような音が頭の中にあったから、その点では意識的だったと言えると思うよ。最初は無意識だったけど、だんだんと曲作りの焦点になっていった。