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最近はふたり組のバンドが目に付く。スーサイドを最新ヴァージョンにアップデートしたようなウェット・ヘアーもそうだし、トーク・ノーマルもそうだ(昨年末に観た巨人ゆえにデカイもそうだった)。昨年末に発表したデビュー・アルバム『シュガーランド』はiPodに入れてよく聴いている。彼女たちの音楽は、カンが残した名曲のひとつ"ピンチ"をアップデートしたような、トライバルな反復性と重厚なノイズ、そしてニヒルなヴォーカリゼーションに特徴を持っている。ドラマーのアンドリヤ・エンブロによるトライバルなビートにはボアダムス・フォロワーたちのブルックリンを感じることもできる。で、調べてみたら実際に彼女は77ボア・ドラムに参加していた(もうひとりのメンバー、ギターのサラ・レジスターはマスタリング・エンジニアとしてそれなりのキャリアを持っている)。とにかく僕は、この音楽の"エネルギー"に打ちのめされたのである。街を歩いているとき、電車に乗っているとき、この音楽を体内に注入するとまるでカンフル剤のように機能する。ノイズでありながら、ダンサブルなところも良い。
『シュガーランド』が好評だったこともあり、2008年にCDRのみで発売されていた5曲入りがヴァイナルで登場した(それとダウンロード、いまのところCDはなし)。A面の3曲――目が覚めるようなノイズではじまる1曲目の"グリニン・イン・ユア・フェイス"における歌とトライバル・ビートの掛け合い、"ユリーカ"におけるも不協和音とマシナリーなビート、ESGを彷彿させる"レモネード"も素晴らしいが、このバンドの可能性を感じるのはB面に収録された2曲だ。"33"でクラウトロックの反復を寒々しく凍らせたような、あるいはホラー映画のサウンドトラックめいた音を展開すると、続く"レスト・ウィズ・ミー"は実な巧妙にミニマリズムとドローンを取り入れて、いわば"IDMスタイルを通過したヴェルヴェッツ"のような音を創出している。
これはニューヨークのアンダーグラウンドにおける伝統的ノイズ・ロック、その最新版。
野田 努