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野田 努 Nov 08,2013 UP
マウ・マウは、DAFの初期メンバー、ヴォルフガング・シュペルマンス(g)とミヒャエル・ケムナー(b)のふたりを中心としたノイエ・ドイッチェ・ヴェレのバンドで、1982年の1枚のアルバム『クラフト』と2枚のシングルを残したまま歴史から消えたバンド。今回、東京の〈スエザン・スタジオ〉が、その『クラフト』11曲と録音はしたもののお蔵入りとなっていた幻のセカンド・アルバム『Auf Wiedersehen』の楽曲10曲、そしてシングル曲“Herzschlag”を加えた構成でリイシューした。『クラフト』自体が、1982年に出たきり、30年以上も知る人ぞ知る隠れ名盤となった。また、追加されている幻のセカンドの10曲など、これまで聴きようのなかったもの。しかも、レーベルのサイトの直販で買えば、シュペルマンスがマウ・マウス解散後にジャッキー・リーベツァイト(カンのドラマー)らと組んだプラザ・ホテル名義の唯一の作品「Bewegliche Ziele」のCDも付いている。すでに発売から日数が経っているのでコアなドイツ好きはゲットしているようだが、まだご存じではない方のために紹介しておきましょう。
中古で高額な作品の内容が良いとは限らないのは当たり前だが、マウ・マウは素晴らしい。『クラフト』は、DAFとワイヤーが出会ったようなミニマリズムがあり、ファンクがドイツのポストパンクに染みついているところも他にはない魅力となっている。ワンコードの、リズミックなシュペルマンスのギターとケムナーのベースの絡みが最高だ。ふたりの演奏は、DAFの名曲“ケバブ・トラウム”のオリジナル・ヴァージョンや〈ミュート〉からのセカンド・アルバムでも聴けるが、マウ・マウは、1980年あたりのDAFのサウンドのもうひとつの洗練された発展型だと言える。
『Auf Wiedersehen』は、エレクトロニックな要素が大幅に入ったニューウェイヴ・ディスコ・スタイルで、『クラフト』よりもポップになっている(サックスもフィーチャーされている)。1983年というと、ニュー・オーダーの「ブルー・マンデー」ではないがリップ・リグ&パニックもキャバレ・ヴォルテールもパレ・シャンブルグも、ニューウェイヴがいっきにディスコに走っている。『Auf Wiedersehen』もまさにその時代の音だが、やはりここにもファンクのセンスがあって、しかもそれはノイエ・ドイッチェ・ヴェレらしい反復の美学とドイツ語のあの独特の空気感のなかにある。
野田 努