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Album Reviews

Various Artists

Various Artists

Project: Mooncircle 10th Anniversary

Project: Mooncircle

三田 格      Apr 05,2012 UP

 マイク・ガオとダイスケ・タナベのスプリットやDZA、古いところではオンラ&ケツアルのアナログ化にロボット・コッチ周辺など、話題のリリースが続くベルリン・ベースのヒップホップ・レーベルから10周年記念ボックス・セット。フィジカルはホワイト・ヴァイナル4枚組+ダウンロード14曲=46曲で、それらを一括して配信で買うと5400円も安くなる(......って、利益の分配は一体、どうなっているのだろう?)。

 スクリームやフライング・ロータス以降、ヒップホップやブレイクビーツを扱ってきたレーベルがじわじわと変容しつつあるのは周知の通りで、いわゆるジャジーでコンシャスとか、そんな感じだった月の輪計画もダブステップやクラウド・ラップなども取り入れた総合的なビートを扱うレーベルへと完全脱皮(1年半前にリリースされた編集盤『ムーン・カムズ・クローサー』。勢いだけだったら、かつての〈ワープ〉や〈ニンジャ・チューン〉が企画したレーベル・コンピレイションに匹敵するドキュメントだといえる。

 全体にどこか思慮深いというのか、それぞれのリリースでは明るく派手なところをアピールしているプロデューサーも示し合わせたように落ち着いた曲を提供し、そういう意味では、あくまでも「ジャジーでコンシャス」なレーベルを貫いているともいえる(明るい曲もあるけれど、なぜか暗い曲はない)。クリストフ・エル・トルエントやジャービタットが編み出すテクスチャーは実に良く練られていて、それこそ〈ワープ〉が「家で聴くテクノ・ミュージック」を構想した『アーティフィシアル・インテリジェンス』の21世紀モデルとでもいいたくなる。あるいはそれにモワックス『ヘッズ』を掛け合わせた感じとも。〈オール・シティ〉や〈ハイパーダブ〉からリリースされてもまったく不思議ではないというか。

 レーベルの看板といえるロボット・コッチは振幅の激しいダブステップだけでなく、ジョン・ロビンソンとのロボット・ロビンソンを新たに結成し、かつてはハドソン・モーホークとタッグを組んでいたマイク・スロットもインドネシア系らしきディアネ・バディエをヴォーカルに迎えて、うっとりとするような桃源郷を創り出す。昨年末の「ホールド・オンEP」が大ヒットだったKRTSはやはりデトロイト・タッチを邁進し、順調にリリースを重ねている1000ネームスはもはや独特の境地。ステイトレスからキッドカネヴィルのソロ、ダブステップのメモトーンとスーシュが組んだメムーシュ、レイン・ドッグ、ロング・アーム、オムニット......あー、全部、紹介するのはさすがに面倒くさい。サブスタンシャルをフィーチャーしたシン(CYNE)など、〈ベータ・ボディーガ〉傘下ボタニカ・デル・ジバロとの付き合いも深いので、その辺りのエントリーもちらほら。

 "ファイネスト・イーゴ"で注目のダイスケ・タナベのほかにはフランスでつくられた日本人ビート・メイカーの編集盤『日の出合唱団』にも収録されていたイチローもどこかギクシャクとした"カエデマツシマ"を提供。これは、もしか......しなくてもAV女優の松島かえでのことでしょうw(ダウンロード・セクションにはイナーサイエンスも)。ちなみにイチローのファースト・アルバムには"コバヤシ・ケイジュ"とか"タキガワ"といった固有名詞を使った曲名が多い。
 
 オソロしいのは、半分ぐらいは新人じゃないのかなと思うんだけれど、完成度がまったく引けを取っていないことで、むしろ新しい発想のほうがいまは世に出やすく、明らかにいまはチャンスなのだろう。人気はあるのかもしれないけれど、Dデイ・ワンや40ウィンクスのほうが古く感じられてしまうのもそのせいだろう。

三田 格