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Album Reviews

Miami Angels in America

Miami Angels in America

A Public Ranking

Night People

倉本 諒      Apr 23,2012 UP

 本誌5号にてドッグ・レザー(Dog Leather)のインタヴューにも名前があがったボルチモアの男女ふたり組、ノイズ・フォーク・デュオ、エンジェルス・イン・アメリカ(Angels in America)の新作テープは(ナイトピープル)よりドロップ。
 エンジェルス・イン・アメリカのエスラ嬢(Esra)に出会ったのは本誌5号でも触れた昨年のSXSWでのハウス・パーティの夜で、その日はもうホント、マジ混沌を極めていた。いや、たしかにロスからオースティンまでの風景がループしているかのような砂漠を僕のバンドのペーパー・ドライバーのふたりと無免許で無職のフランス人(もちろんハイウルフです)を乗せて18時間の運転を経て、スリープ∞オーバー(Sleep∞Over)やピュア・エクスタシー(Pure X)をサポートし、サウザント・フット・ウェイル・クロー(Thousand Foot Whale Claw)として活動するアダムとマットに到着後はじめて出会ったにも関わらず、快く寝床を提供してくれただけでなく、最高に強烈なウィードを大量に御馳走になり(ニューメキシコ、テキサスはメキシコとの国境がすぐ近くにある事ことあり、検問が厳しいので同ふたつの州では違法であるメディカルウィードをロスから持っていくことを僕は前もってキャメロンとゲドに口すっぱく止められていたので、これは効いた)、ロクに寝ずに次の日遊び回った末がこのパーティだったので、僕の疲労と体内に循環するTHCの量は半端じゃなかったことを差し引いたとしても、この日のパーティは狂っていた。
 集合時間にだいぶ遅れ、〈NNF〉主宰のブリットに軽く怒られながら(僕はこの日自分のバンドのサポート・ギターを彼に頼んでいた)、僕はこの日のパーティに集まっていた連中にあんぐりさせられていた。前日すでに会っていたが、サヴェージ・ヤング・テイターバグ(Savage Young Taterbug)のチャールズが引き連れて来たクルーはまるでゴミ捨て場の妖精のようで、洗っていない一線を越えた彼らの服が放つクラスティな甘い香りが部屋には充満していて、「ジョイント吸おうよ。拾ったタバコを混ぜたから味ちょっと変だけど、えへへへへ」と語りかけながら、つねにテンパっているように見えるトレーシー・トランス(Tracy Trance)のタイラーは、カシオトーンで超絶テクを披露し、僕の度肝を抜くものの、何故誰も彼の絶対拾ってきたであろうワンピースとハイヒールにはツッコまない事が不思議でならないし、ソーン・レザー(Sewn Leather)、ドッグ・レザーことグリフィンのママに「うちの息子のソーン・レザーとDJドッグディック(DJ Dog Dick)はご存知なの?」と訊かれた僕とブリットは裏庭でその日のライヴのリフと展開を話していたものの「母ちゃんが犬チンって言っちゃうのかよ!」という思い出し笑いで、練習にならないし、そんな状況だから僕の手もおぼつかなくなり、キッチンの床にまき散らしてしまったビールを拭いていたところをいつの間にか横で手伝ってくれていたエスラのはにかんだ笑顔に僕のハートは一気に持っていかれた。
 彼氏にメチャメチャ睨まれながらも、僕は朦朧とした意識のなか、彼女との会話を弾ませることに全神経を集中した。「PYG(ショーケン、ジュリーのアレ)のレコードをずっと探しているのよ! 見つけたらぜひ私のためにゲットしてよ!」と言われ、何でそんなもん知ってるのかとそのときは思ったものの、(もちろんボリスのカヴァーで知ったのだろうが)たしかに彼女のエンジェルス・イン・アメリカの前作のレコードと今回のテープを聴いていると何となく合点する。冒頭でノイズ・フォークと形容したのは、このバンドは弾き語りではなくシンセ・ノイズだからだが、全身全霊を込めて絶叫する彼女のポエトリー・リーディングをきいて背筋に走る冷たいものは日本のあの時代のズブズブでドロドロの怨念フォークのそれだ。
 そもそもDJドッグ・ディックといいソーン・レザーといい、ボルチモアのこのノイズ+ポエムという方法論は、パンクは楽器を弾けなくてもいい、ヒップホップはビートと哲学があればいい、という流れの最終型にあるんじゃないかと思ってしまうのは大袈裟だろうか? エンジェルスやドッグディックはシンセこそ使っているもののソーン・レザーやまた先ほど話に出たサヴェージ・ヤング・テイターバグなんかほぼカラオケだし、それは本人のポテンシャルがすべてであり、それがショウとして成立しちゃってるのだ。

 話をあの日の夜に戻そう。自分のライヴも終え、エスラともさらに打ち解けてきた僕はようやく彼女の電話番号とアドレスを交換するために自分の携帯を取り出した。そこにブランク・リアルム(Blank Realm)のサラが現れ、「兄貴に迎えに来てもらいたいから電話かりるわね」と携帯を取られてしまった。もう読者は気付いているだろうが、このレビヴューを書いているのも、もし今後ボルチモアに行く機会があり、彼女のところに転がり込む日が来るならば何かあればいいなと期待しているからに過ぎないのだ。
 あの日の僕の最後の記憶はテイターバグの連れであるサムのワンマン・プロジェクト(名前失念)がゴーグルと猫耳、そしてもはやハミチンとかそういうレヴェルではないブーメランを装着し、ステージで絶叫していた。現在ヨーロッパをツアー中のエンジェルス・オブ・アメリカとソーン・レザーはきっとあのような混沌とした日を過ごしているに違いない。あぁ、ライフ・イズ・カオス。

倉本 諒