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Album Reviews

Kuedo

Kuedo

Severant

Planet Mu

野田 努      Jan 19,2012 UP

 ムーヴメントの解釈は十人十色というか百人百様というか、人によって違うものだけれど、年末にゴス・トラッドを取材して気がつかされたことは、彼のダブステップ解釈が音楽のスタイルではなく、違ったバックボーンの人たちが一同に会していたということである。ああー、たしかにその話は昔他の誰かからも聞かされた覚えがある。異なった階層、異なった趣味、異なった人たちが出会うという点ではゴス・トラッドの主張の通り、ダブステップはレイヴ・カルチャーの理念を再現していたということになる。まだシーンがアンダーグラウンドだった時代は。
 2006年のブリアルの主張を思い出す。彼はダブステップはメインストリームに進むべきではないと繰り返していた。が、欧米ではダブステップはメインストリームとなり、こうしてあらたな分裂がはじまった。昨年リリースされたセパルキュアのデビュー・アルバムのようなアンダーグラウンドの折衷主義(ポスト・ダブステップ、UKガラージ、ダウンテンポ、ハウスそしてテクノなど)なども分裂後の動向の好例のひとつだ。ベテランのリスナーはハウスが"ディープ・ハウス"と、テクノが"エレクトロニカ/インテリジェント・ダンス・ミュージック"というタームで選別されはじめた頃を思い出せばいい。

 そしてベテランのリスナーに向けては、クエド(ヴェックストの名義でも知られる)のデビュー・アルバム『セヴァレント』を説明するのも簡単だ。これは要するに、ダブステップ/グライム世代における20年前のブラック・ドッグ・プロダクションズやグローバル・コミュニケーションのようなものである。『セヴァレント』は、ダンスフロアの熱狂の軌道修正という意味でも、そして夢想的な上もののシンセサイザーやスモーキーな感覚においても、〈ワープ〉の『アーティフィシャル・インテリジェンス』のダブステップ・ヴァージョンと言える。当たり前の話、さすがに当時ほどの楽天性はないものの......というか、むしろ絶妙なセンスでグライムの黙示録的な終末感が展開されているというのに、つまり本人にはそのもつもりはないだろうけれど、僕には古典的な〈ワープ〉サウンドの新世代による再解釈としても聴けてしまう。マイケル・パラディナスが、そして佐藤大や稲岡健がこれを嫌いなはずがない。『ピッチフォーク』はOPNなどと比較しているが、どうだろう。こちらのサウンド・プロダクションの骨格をなしているのはクラブ・ミュージックだ。『セヴァレント』はダブステップとグライムによって更新されたエレクトロニカないしはチルアウトなのである(たとえば2曲目と3曲目などは涙ものです)。

 もうこの際だから、90年代の豊かさを再発見する意味でも、〈ワープ〉をライセンスしているビートインクあたりがこの時代の音源を再発をするのもいいのではないだろうか。クエドから入った若いリスナーが1991年から1994年あたりまでの〈ワープ〉に代表されるUKのテクノ(あるいはまたアイトホーフェンのテクノ)を好きになるのは目に見えている。この手のサウンドに関しては当時の日本からも〈ダブレストラン〉や〈トランソニック〉、〈サイジジー〉といったレーベルを中心に良い曲がたくさん生まれているわけだし。

野田 努