「S」と一致するもの

[Drum & Bass / Dubstep] by Tetsuji Tanaka - ele-king

1 Sub Focus / Could This Be Real[Drum&Bass RMX]/Triple X | Ram

 昨年のハイライトとも言うべきファースト・アルバム『Sub Focus』によってエクストリーム・レイヴ・ドラムンベースの確固たる地位を確立、それを不動のものにしたのがサブ・フォーカスである。そのもっとも待望されていたリリースによってドラムンベース界に新たな核が生まれたというわけだ。もっとも、プロデューサー・デビューから6年もの年月を費やして発表となったファースト・アルバムは、彼の類まれなる才能から考えると少々遅かった感は否めないのだが。
 彼の起源は2003年〈Ram〉のサブ・レーベル〈Frequency〉から発表された「Down The Drain/Hotline」である。当時のトラック・メイキングはまだ未成熟かつ方向性が定まっていない、ごく平凡なサイバー・ドラムンベースだった。もちろんその当時は、現在のようなスター・プロデューサーとしての確約はないに等しい存在として扱われている。彼に転機が訪れたのは、そう、2005年。その年のアンセム・ザ・イヤーとなったばかりではなく、2000年代を代表するトラック"X-Ray"の発表である。
 ドラムンベース界のみならず、その恍惚感溢れるトランシーレイブな作風で世界中のダンスフロアを掌握、稀に見るビッグ・アンセムとなった。その後、水を得た魚の如く立て続けに"Airplane"、"Frozen Solid"などの"ロック"チューンを発表。そして彼の地位を不動のものにした決定的なリリースがプロディジー"Smack My Bitch Up"のSub Focus RMXだった。そのリミックスはまるで新旧レイブ・サウンド伝道師の世代交代のようで、ドラムンベースをより多方面に押し上げてもいる。そしてその後の活躍は言わずと知れている。いまや名実ともにドラムンベース界のトップ・プロデューサーに君臨するのだ。
 さて、彼のファースト・アルバムからシングル・カットが待望されていた2曲がついにリリースされた。アルバムに収録された"Could This Be Real"のオリジナルは、現在のクラブ・シーンを席巻しているトレンド、エレクトロ・タッチから触発されたフロア直系のアーバン・ブレイクスだったが、シングル・カットのためにドラムンベース・リミックスへと自身でリワーク。ハーフ・ステップさながらのビート・プロダクションに流麗なレイヴ感漂うエレピを注入し、ハイブリッドでソフィスティケートされたシンフォニック・レイヴ・サウンドへと昇華させている。
 "Triple X"に話を移そう。これはまさに"X-Ray"の続編、誰もが待ち望んだ真のレイヴ・ミュージック、即ちこれがエクストリーム・レイヴをもっとも体現したトランシー・フロア・サイバーの最高傑作と呼ぶに相応しい。今後この作品はダンスフロアで皆を待ち続けることとなるであろう。

2.  Disaszt, Camo & krooked / Together[DC Breaks RMX]/Synthetic | Mainflame

 オーストリア、ウィーン発の新鋭レーべル〈Mainflame〉からレーベルのフロントマン、ディザスト(Disaszt)と若手ナンバ-1の呼び声が高いケーモ&クルックト(Damo & krooked)のサイバー・スプリット! "Together"では〈Viper〉、〈Frequency〉などシーンのトップ・レーベルのリリースからMINISTORY OF SOUND主宰DATAなどメジャーのリミックス・ワークなども手掛けるDJサムライ & DJクリプティックのエレクトロ・サイバー・ユニット、DC・ブレイクス(DC Breaks)が担当。レーベル・カラーであるカッティング・エッジでエレクトリックなサイバー感を継承しつつ、よりシンプルに交感し合う各々のサンプル群と、そして女性ヴォーカルが絶え間なくフォローするエレクトロ・ニューロ・ファンクとなっている。昨年からドラムンベースの新しいトレンドとして定着しつつあるエレクトロ・ドラムンベースだが、今作はまさにそれを体現している。まったく"いまこの瞬間の"ダンスフロア・シンフォニーで、レーベルのシンボル的トラックである。
 ケーモ&クルックト"Synthetic"は、〈Mainflame〉からもうすぐ発売されるファースト・アルバム、『Above The Beyond』の前編的トラックとなった。エレクトロ・ドラムンベースの若手急先鋒ケーモ&クルックトだが、今年はさらなる飛躍を期待されるだろう。彼らはすでにDJフレッシュ(DJ Fresh))、アダムF(Adam F)の〈Breakbeat Kaos〉から「Can't Get Enough/Without You」、ロンドン・エレクトリシティ率いる〈Hospital〉から「Climax/Reincarnation」、フューチャー・バウンドの〈Viper〉から「Cliffhanger/Feel Your Pulse」など、多数リリースが控えており、今後最注目のアーティストである。筆者が現在提唱しているエレクトロ・ドラムンベースが、ケーモ&クルックトやショックワン、フェスタなどによって閃光の如く輝き続けるムーヴメントになることを望んでいる。

 

3. Danny Byrd Feat Liquid / Sweet Harmony/Jungle Mix | Hospital

 ザリーフ&ダニーバード(Zarif & Danny Byrd)、"California"で昨年、最高のプロデュース・センスをまた見せつけたダニーバード! ハイコントラストとともに〈Hospital〉の制作理念をもっとも体現しているひとりであり、彼の高揚感溢れるキャッチーな作風はいまや誰にも真似できない、まさにダニーバード・サウンドとして定着している、キャリア10年以上の〈Hospital〉所属のベテラン・プロデューサーだ。
 筆者もDJのとき、必ずと言っていいほどお世話になっている。とくに昨年のザリーフとの共作やファースト・アルバムでのFT.ブルックスブラザーズ"Gold Rush"など......彼の作品をプレイするとき、いつも決まって、自身が中盤の窮地に陥っているケースが大半だ。なぜかと言えば......それだけ個の作品のみであらゆる場面を乗り切る力を持っている唯一のトラック、それがダニーバードの音楽だからである。彼には作品を出すたび毎回脱帽し、尊敬の念を抱き続けている。レコードを置き、針を落とすだけの偉大なキラー・トラックを量産し続けているのだから!
 そして今作"Sweet Harmony"は、初期のレイヴ感溢れるエレピ、FT.リキッドのソウルフルなヴォーカルを効果的に配した遊び心満載のキャッチーなフロアトラックとなった。原点回帰したかのような初期作風感漂うサンプル使いにダニーバードの懐の深さを再認識させられた。もちろんこれもフロアで爆発的人気を得るだろう。
 B面"Jungle Mix"は、ここ最近のダニーバードお気に入り(?)"Shock Out"でも垣間みれたおなじみのオルタナティヴ・プロダクションである。彼特有の変則アーメン・ビートにキャッチーなギミック・サンプルで否応無しにフロアをロックする、正真正銘のパーティ・チューンだ。90年代中期頃、一世を風靡した"Smokers Inc"や"Joker"のエッセンスが多分に感じられ、古き良きジャングル文化が彼によって現代に甦ったと言えよう。
 さらに本年度はダニーバード・フォースカミング・リリースで、みんなが待ち望んでいるあの曲"Paperphase"が〈Breakbeat Kaos〉からついにリリース。あのエレクトロ・ドラムンベース最強兄弟、FT.ブルックス・ブラザーズがまたタックを組み、懐かしのフレンチ・ディスコを思い起こさせるフィルター・ハウス・ドラムンベースに仕上がっている。
 まだリリース前だが、2010年のアンセム・ザ・イヤーをこれで決まりだ。

Animal Collective - ele-king

 これはちと古い。2009年の11月にリリースされた、「秋は優しく」なる題名の5曲入りのシングルで、その年のアルバム『メリーウェザー・ポスト・パヴィリオン』がUKではナショナル・チャートの26位にまでランクされた動物集団の勢いを感じる作品となった。1曲目の"グレイズ"は......陽気なフォークダンスである。どう考えてもストロボライトを浴びながら踊るというものではない。男女がスキップしながら手を取り合って踊っている姿が目に浮かぶ。

 ちょうどのこの原稿を書いている少し前には、彼らの2003年の『キャンプファイヤー・ソング』が再発されている。僕はこのCDは、『サング・トングス』を聴いたときに素早く探し回り、『ヒア・カム・ジ・インディアン』とともに買っている。60年代半ばのビーチ・ボーイズのアルバムに『パーティ!』というビートルズの曲のアコギによるカヴァー集があって、それはまるで学校の教室でクラスメートを集めながらワイワイがやがや、ビートルズの歌を歌って盛りあがっているような作品なのだけれど、『キャンプファイヤー・ソングス』はいわばそのアシッド・ヴァージョン。僕は......勝手ながらD・リゼルギン酸ジエチルアミドに浸りながらギターをかき鳴らす青年たちを夢想した。そうでなければ、あの1曲目の狂おしい不明瞭さに関して、他にいったいどんな説明が可能なのだろう。そして僕は、ストレートにそれを"キャンプファイヤー・ソングス"と言い切ってしまった動物集団のセンスに興味を抱いた。

 ちょうどこの頃は、文化のたこつぼ現象なる言葉が流行っていて、とにかく小宇宙ばかりが連なってばかりで面白くないと、そんなことが巷で言われていた。たしかに音楽のシーンでも90年代的なレイヴ・カルチャーはすっかり細分化され、互いに交わる兆しもなかった。そんな時期に、アニマル・コレクティヴはまさに小宇宙の司祭になろうとしていた。『キャンプファイヤー・ソングス』は、どう考えてもわずか数10人の音楽だ。しかし、コミュニティは小規模になったかもしれないけれど、親密性は高まっているのではないかとも思うのだ。ただ無闇に人の数だけ多ければ良いってものではない。そう考えれば、僕は日本のSFP周辺の連中の大きくなることへの警戒心と自律した小宇宙への欲望と、この時期のアニマル・コレクティヴの心地よい閉塞性は似ているようにも思えるのだ。

 アニマル・コレクティヴの"フォール・ビー・カインド"は、『メリーウェザー・ポスト・パヴィリオン』がそうであったように、『キャンプファイヤー・ソングス』の頃の閉塞感はない。良くも悪くも彼らはポップ・バンドとして商業的にも成功しつつあるし、その世界も広がりを見せている。シングルの2曲目の"ホワット・ウドゥ・アイ・ウォント? スカイ"がそれを如実に物語っている。グレイトフル・デッドの曲をサンプリングしているこの曲は、動物集団にとっておそらく最初の、わかりやすいポップ・ソングだ。

 "オン・ア・ハイウェイ"は、ダビーなエレクトロニクスと彼らのコーラスによるメランコリア。最後の"アイ・シンク・アイ・キャン"はクラウトロックのダークな引用で、陰鬱なエレクトロニクスと動物たちのコーラスとの協奏曲だ。
 「フォール・ビー・カインド」は『メリーウェザー・ポスト・パヴィリオン』の延長線上にある。パンダ・ベアの最初のソロ作品が好きな人は『キャンプファイヤー・ソングス』の再発を買ったほうがいいだろう。しかし、彼らの陽気なサイケデリアを楽しみにたいなら、このシングルも悪くはない。

V.A - ele-king

 私は反省こめて書きますが、ジャンク~スカム・リヴァイヴァルとしての「関西ゼロ世代」を強調するあまり、その背景のポスト・ニューウェイヴ、つまり80年代インディ・カルチャー(とその発展型である90年代オルタナティヴ)と彼らの断絶をうまく描いてこなかった。ペンペンズや砂十島NANIやオオルタイチは90年代と00年代のグラデーションのなかでは多彩であったせいでかえって、私は彼らの逸脱へむかう気持ちを既視感に引き寄せたところはなくはなかったが、真保☆タイディスコの『住mばsyo着るmの絡まって』を去年聴いたときアンダーグラウンドのそのまた下に走る活断層がはっきりとズレたことをさとったのだった。私は音楽の素養をいいたいんじゃない。彼女がタイから持ち帰ったという非西洋的な快楽のベクトルは、DJ~トースティング(?)を通して不可逆的に彼女の身体に流れこんだグルーヴは彼女の身体性を変容させていて、Jポップ~クラブの押韻と言葉と歌のメロディを書き換え90年代までと切断するポップ・ソングを作りあげることに資しているとファーストを聴いて考えたのです。10年前までは文化人類学の残り香があった音楽の輸入形態も10年後にようやく路傍に晒されたというか、バイリ・ファンキでもクンビアでもアジアのクラブ・カルチャーでも、アーティストとリスナーの間を直接行き来する音楽は批評のハイアラーキーになじみがたく、自然発生的な解釈(曲解、誤解)はローカリティさえ攪乱する、ニコ動的な個人レベルの加工貿易の観をていしている。この10年の音楽のトレンドは欧米のメディア主導型のラベリングと、局所地的ですらないマイ・ブームの集積のようなベクトルが併走した年代で、これに勝手知った「タコツボ化」などといういい方で目を瞑るわけにはいかない。赤瀬川源平じゃないが、ツボの内側に張られたラベルが反転して宇宙を包むことだって、考えようによってはあるわけで、音楽は意外にスリリングだ、という現状を〈クマル〉のレーベル・コンピであるこのアルバムは伝えてくる。これに先だった真保☆タイディスコの旦那のシャブシャブの『SONOFX』はどこか遠くを見つめたくなる、幻の名盤解放同盟のいい方を借りれば「いい湯加減」の、グライムに異文化コミュニケーションのフィルターがかかったような快(怪)作だったが、有象無象が集った『クマル・エキスポ・2010』では状況はいっそう錯綜している。デ・デ・マウスへのアンサーともとれる『SONOFX』収録のフィルタード・バラッド "Katatsumiru"の真保☆タイディスコによるアップリフティングなリミックスをはじめ(私の五歳の娘は一度聴いてこの曲を憶えました)、このなかでは比較的名の知れた参加者だろうシャブシャブとオオルタイチのオバケジャーとか、ほかにもneco眠るのバイオマン、ガルペプシとシャブシャブによるガルシャブはリズムコンシャスである意味クールなトラックを披露したかとおもえば、京都シーンからはスズメンバが参戦し、スズメンバのMU-TONはシャブシャブとのパンパス・エスカルゴスなるユニットに増殖していく。真保☆タイディスコはラキラキ、ニジベンテンなど複数のユニット名を使いわけているが、フリクションのレックの非正統的な後継と目されるべき(ホントかよー)リズムから帰納されたヴォーカル・トラック(ドイツ語あり)はダブ・ステップの影をチラつかせながら、野田努よれば「女性の時代」だった00年代の殿(しんがり)をつとめるようにもみえ、総体的にはシャープな1枚になった。

Chart by DISC SHOP ZERO 2010.01 - ele-king

Shop Chart


1

G.RINA

G.RINA MELODY & RIDDIM #1: mashed pieces MELODY & RIDDIM / 日本 / 2009.12.25 »COMMENT GET MUSIC
シンガーでありプロデューサー、トラックメーカー、DJでもあるG.RINA自身が立ち上げたレーベルの第1弾。ダブステップの名曲の数々をレゲエでいうリディムと捉え、そこに自作のメロディを乗せたストリートアルバム的内容。アイデアの斬新さだけに頼ることの全くない、オリジナルと別の輝きを持った楽曲としての完成度の高さに、彼女の多面的才能の豊かさを改めて実感。G.RINA流の新しいリズム&ブルーズの萌芽。

2

LIGHTNING HEAD

LIGHTNING HEAD TRAFFIC JAM / NOW I DELIVER (VERSION) / 2009.12.11 »COMMENT GET MUSIC
元ROCKERS HI-FI、BIGGABUSHとしても知られるLIGHTNING HEADの7インチ限定300枚。A面はSTEPHEN MARLEYのヒットをファンキー・レゲエ・ブレイクビーツにカヴァー。トロンボーンのトボケ味なリフ、途中ではアフロなノリも出てくる最高の仕上り。B面はR.HI-FIの名曲リミックス。ゆったりしたムードのオリジナルを、L.HEAD印のダンスホール・ビートで料理。

3

DISTANCE / PINCH

DISTANCE / PINCH CLOCKWORK / ONE BLOOD, ONE SOURCE (REMIX) TECTONIC /イギリス / 2009.12.11 »COMMENT GET MUSIC
B面の盟友PINCHが07年に発表した名作『UNDERWATER DANCEHALL』収録曲のリミックスが特に素晴らしい。ラスタ・シンガーRUDEY LEEを迎えた曲で、RHYTHM & SOUND~BURIAL MIXラインとは全く別の方向からディープなダブへとリミックス。サブ・ベースの歌うようなラインとドラムの感触の対比、そしてその空間にハメられる。

4

SOOM T

SOOM T DIRTY MONEY E.P. JAHTARI / ドイツ / 2009.12.03 »COMMENT GET MUSIC
驚くべき多方面からの支持を受けつつ、いよいよ2月に初来日を果たすDISRUPTとSOOM TのコラボEP。「アンタのキタナイ金なんて要らないわよ!」というサビが印象的なタイトル曲は、この夏に引っ張りダコだった各地フェスやクラブでも大人気だったという曲。ファズが掛かったようなビット・レートの低いダブ・ビートと、SOOM Tの独特な声で繰り出される、歌うようなトースティングが不思議と絶妙な相性。

5

UNTOLD

UNTOLD FLEXIBLE BRAiNMATH / イギリス / 2009.12.15 »COMMENT GET MUSIC
個人的には2009年にその動向/サウンドが最も気になったプロデューサーのひとりUNTOLDの新曲が、ZOMBYやSBTRKTなどもリリースするBRAiNMATHから限定でリリース。もはやUNTOLD印と言える、ヒプノで骨折気味のビートが生む不思議なトライバル感を、真空度高めにグルーヴさせた曲。80年代終わりから90年代頭の実験的ハウス?テクノにも通じる感触。

6

ECHO_TM feat. ECHO RANKS

ECHO_TM feat. ECHO RANKS SKYLARKING KANU KANU / ポーランド / 2009.12.27 »COMMENT GET MUSIC
現在エジプトはカイロ在住のHATTI VATTIが立ち上げたレーベル第1弾、限定300枚。ポーランドのプロデューサーECHO_TMによる、ニュールーツ系レゲエの作品で知られるシンガーECHO RANKSを迎えたディープな音像のミニマル?テック・ダブ。RHYTHM & SOUND?BURIAL MIX直系ではあるけれど、よりレゲエ寄りになっている微妙な感じが◎。裏のリミックスはドイツのBIODUB。

7

KALBATA

KALBATA OH GOSH / KARL BUTTER BOTANIKA / イスラエル / 2009.12.27 »COMMENT GET MUSIC
WARRIOR QUEENを迎えたSOUL JAZZからのシングルが大人気だったイスラエルのダブステッパーKALBATAの最新シングル。エレクトロな感触が前面に出つつのダンスホール・ビートのA面は、クドゥロや高速のMCが乗るグライムとも相性が良さそう。B面ではさらにエレクトロ感を増し"テッキーな"というのとはまた違うテクノな感触のトライバル・グルーヴを聴かせてくれる。

8

MJ COLE feat. SEROCEE

MJ COLE feat. SEROCEE AO PROLIFIC / イギリス / 2009.12.27 »COMMENT GET MUSIC
2ステップで有名なMJ COLEによるUKファンキー。TODDLA Tとも組むMC、SEROCEEのレゲエ・ベースのフロウが洗練されたトライバル・ビートを野蛮にグルーヴさせるオリジナル、ベースが上昇を繰り返す自身のリミックスも良いが、そこにカーニヴァルなムードも加わって01?02年のレゲエ味ブレイクビーツが大盛り上りだった時代の感触も思い出させてくれるZED BIASによるリミックスが楽しい。

9

ION DRIVER

ION DRIVER WHAT SITUATION RICOCHET / イギリス / 2009.12.27 »COMMENT GET MUSIC
「レイヴ後のモハーヴェ砂漠で日の出の音を録音したら」なんて資料にはありましたが、そうイメージすると妙にハマる5曲入。トライバルだったりサイケなチルアウトだったりゲットー・ベースなグルーヴもありつつの、ディープでプログレッシヴなテッキー・ビーツ。これも"ダブステップ以降"のひとつの形を示す重要な1枚となりそう。

10

JOKER

JOKER CITY HOOPER / OUTPUT 1-2 TECTONIC / イギリス / 2009.12.27 »COMMENT GET MUSIC
メジャー・アーティストのリミックスを手がけるなど、そのサウンドもすっかりトレードマークとなった新世代JOKER待望の新曲は地元ブリストルのTECTONICから。スロウでへヴィなグライム?R&B風トラックに、お得意のロボティックなシンセが歌うA面。B面は、このレーベルらしいディープさも出たトラックで、中盤以降のリズムの変化も◎。爆音で聴けば、この音の解像度にやられること間違いなし。

Charts by JAPONICA 2010.01 - ele-king

Shop Chart


1

AMAZIAH

AMAZIAH SLOWLY CLAREMONT 56/UK / 2010/1/4 »COMMENT GET MUSIC
大人気CLAREMONT 56の人気コンピ"ORIGINALS"最新第4弾に収録されていたスローモーなロッキン・ディスコの大傑作、AMAZIAH"SLOWLY"を片面一曲仕様で収録した限定10インチが入荷!全世界300枚、しかも国内ではジャポニカ独占少量入荷というレア化必至のアイテムです!これは見逃せませんよ!

2

MARK E

MARK E WHITE SKYWAY UNDER THE SHADE/UK / 2010/1/14 »COMMENT GET MUSIC
MARK E新作!A面収録の"WHITE SKYWAY"は持前のへヴィなビートとグイグイと持っていかれる抜群のビルドアップ感を兼ね添えたスペイシーなビートダウン・トラックを披露!相変わらずいいとこ取りなウワネタ・サンプルのミニマル感もばっちりです!B面にはこちらもスペイシーなジャジーなリフに包まれながら進行する高揚感がたまらないディープ・ハウス・トラック"NOCTURN"を収録!

3

KINGDOM☆AFROCKS

KINGDOM☆AFROCKS イチカバチカーノ JAPONICA/JPN / 2009/12/20 »COMMENT GET MUSIC
ライブハウス/クラブに野外フェスまで数多くのイベントに出演、その熱いライブパフォーマンスが全国のダンスミュージック・フリークスの間で注目を集め、あのアフロ界の重鎮トニー・アレンも太鼓判を押す日本最強アフロバンド、キングダム☆アフロックス待望のファースト・シングル!今年リリースされたファースト・アルバムが日本全国、海外でも話題を呼んでいるBASED ON KYOTOのプロデューサーDAICHIによるリミックスも収録!

4

COFFEE & CIGARETTES BAND

COFFEE & CIGARETTES BAND ELECTRIC ROOTS 001 ELECTRIC ROOTS/JPN / 2009/12/24 »COMMENT GET MUSIC
BIRDSは定番ブレイク"EDWIN BIRDSONG/RAPPER DAPPER SNAPPER"をベース・サンプルに、小気味良いリズムで進行するドラムが重なりあうブレイクビーツ~ニュー・ディスコ・トラック!ヘヴィ・ドラムに 80'Sなヴォイス/シンセ・サンプルを随所に入れつつ巧みなドラムの抜き差しで展開をつけるヒップホップ・トラック"HEAVY SWING"、ビートダウン・マナーなビート構築にウワネタ・ループがハマる全方位対応型クロスオーヴァー・トラック"JAMS"と、どれも隅々までC&C BANDの細かい拘りが行き届いた全3トラック収録!

5

V.A.

V.A. TTJ EDITS #26 TTJ/FRA / 2009/12/25 »COMMENT GET MUSIC
RICHARD VILLALOBOSが2006年にPLAYHOUSEよりリリースした37分超えの長編大作クラシック"FIZHEUER ZIEHEUER"の元ネタを天才TODD TERJEがリエディット。乾いたパーカッションとフリーキーなフォーン、トランペットが織り成すオリエンタルな世界観を、原曲の雰囲気を壊すことなく相変わらずの抜群のセンスで展開させています。これは何が何でも押さえておきたい!

6

UNKNOWN

UNKNOWN ANGOLA -/FRA / 2010/1/11 »COMMENT GET MUSIC
ヒットを連発する"DAI"シリーズより、またも強力な一枚が到着しました!CARLCRAIGのリミックスが大きな話題を集めたCESARIA EVORAの大名曲"ANGOLA"を大胆使用!今でも耳にするエスニック/アフロの傑作ディープ・ハウスを使用し見事にダンサンブルなトライバル・ハウスに仕上げた傑作トラックです!今回も間違いなく話題となりそうですよ!

7

SETENTA

SETENTA APARIENCIAS HOT CASA/NL / 2010/1/14 »COMMENT GET MUSIC
パリのラテン・ディスコ・ファンク・バンドSETENTAによるクロスオーヴァー・サウンド全開の最高すぎる7inch!ラテン/ブラジリアンなジャズ・ファンク~ディスコ風味の"APARIENCIAS"はギターやエレピ、パーカッションによるトロピカルな味付けいい塩梅な爽快グッド・ナンバー!B面には疾走感溢れるパーカッシヴ・ビート、ラテン~アフロ・ヴォーカルとが爽快感を際立てるラテン・ジャズファンク・ディスコ"SONRISA"を収録でこちらもかなりいい出来です!

8

SCOTT FERGUSON

SCOTT FERGUSON EVOLUTION OF A REVOLUTIONARY EP FERRISPARK/US / 2010/1/11 »COMMENT GET MUSIC
デトロイト近郊ハイランドパークを拠点に、マニアックなディープ・ハウス作品をリリースしてきた人気を集めてきたベテランSCOTT FERGUSONの新作が到着!GIL SCOTT-HERON"THE REVOLUTION WILL NOT BE TELEVISED"のアジテーションを使用し、エモーショナルな漆黒のアーバン・ディープ・ハウスを展開!大推薦ビート・ダウン!

9

SLOW MOTION REPLAY

SLOW MOTION REPLAY THINK BETTER / RAGGED MUSTANG SOUL SOURCE/JPN / 2009/12/15 »COMMENT GET MUSIC
THE CHAMP×"THINK TWICE"とベタに大ネタを組み合わせながらもイナタさや違和感が全くなく逆に洗練されたタイトなグルーヴを織り成す超絶マッシュアップ・ブレイクスに仕上がった"THINK BETTER"!そしてB面にはアフロ・ジャズ傑作"CURTIS AMY/MUSTANG"を下敷きにし、ラグドなビートにグルーヴィなジャズ・アンサンブルで迫るジャジー・ブレイクビーツ"RUGGED MUSTANG"を収録!

10

KEZ YM

KEZ YM BUTTERFLY EP YORE / GER / 2009/12/14 »COMMENT GET MUSIC
KEZ YM新作!!THEOやKDJにも通じるスペイシーなシンセ・コードに黒光りした声ネタを被せたデトロイティッシュ・ディープハウス"BRIDGE TO BRIDGE"やピッチダウン・ハウス・トラック"LOW TIDE"等収録ですが、中でもやっぱりレアグルーヴ感に重点を置いた生な質感が最高すぎるブレイクビーツ・ハウス"BUTTERFLY"がとび抜けてます!!日本人離れしたこの黒い感覚やばいです。

Shop Chart


1

MARK E

MARK E Mark E Works 2005-2009 MERC / UK / 2010/1/6 »COMMENT GET MUSIC
RE-EDIT、NU DISCO、BEATDOWN。2000年代の潮流となった新しいHOUSEの形が産んだ、天才プロデューサーMARK Eのベスト盤にして1STアルバム。JISCO、RUNNING BACK、GOLF CHANNELやCREATIVE USEからの覆面プロジェクトの音源まで収録した「BEST」の名に恥ない選曲。低音のグルーヴが毎回素晴らしく、個人的にも彼の作品はオススメです!!!

2

RYO MURAKAMI

RYO MURAKAMI Lost It EP PANRECORDS / GER / 2009/12/26 »COMMENT GET MUSIC
今、日本人MINIMAL│TECHNOプロデューサーの中で、一番脂が乗っている男といえば、このRYO MURAKAMI!!! 練られた上で配置されたであろう、モダンなシンセと音ネタ使いのバランスはベテランの域。ヴァイナルならではの硬質でメタリックなリズムと相まってフロアでは相当鳴ります。LEROSA(OSTGUT、APNEA)REMIXを収録し、こちらもっ絶妙なテンションでGOOD!!!!

3

JPLS

JPLS Depths MINUS / CAN / 2009/12/19 »COMMENT GET MUSIC
RICHIE HAWTINのアナザーサイド、PLASTIKMAN直系、「DEEP FROM DARK」スタイル全開のアルバム!! 軽快なリズムが利いたトラックを多くリリースするMINUSの中で、最も異質。ノリのいい、ミニマル・テクノからは相当離れた暗すぎる質感を施されたトラック群が並ぶ作品。隣室から蹴られない程度に音量を上げて、焼酎でも飲みながら、暗い部屋で聴くのにオススメです。

4

VILLALOBOS

VILLALOBOS Contempt PLAYHOUSE / GER / 2009/12/22 »COMMENT GET MUSIC
VILLALOBOSのPLAYHOUSEからのリリース作が一挙再発!!! この機会に全部買っとくのがコレクターとしてのマナーなんでしょうが、個人的にはコレをPUSH!! ヴァイナルの端から端まで目一杯溝を使い、繰り返しの美学を刻み込んだ15分ver.と22分ver.を収録。オリジナル・リリースは、LADOMAT2000から'95年(!)。早すぎです。どうかしてます。

5

SPACE RANGERS

SPACE RANGERS Keep On Movin' EDWIN BERG / US / 2009/12/28 »COMMENT GET MUSIC
「D-Train / Keep On」と、「New Jersey Connection / Love Don't Come Easy」をRE-EDIT!名曲D-Train"Keep On"のDUB VERSIONの流麗なピアノ部分からの展開はオリジナルでは3分弱しかないのでたいてい2枚使いが主流ですが、これは見事なEDITで使い勝手のいい1枚です!

6

MARIO BASANOV

MARIO BASANOV Apres 4 FUTURE CLASSIC. / AUS / 200912/26 »COMMENT GET MUSIC
リトアニアの新鋭クリエイター、Mario Basanovによる傑作です!!オリジナルは朝方に似合うドリーミーシンセポップ。それをEskimoからの2枚のシングルが大ヒットしたDowntown Party Networkがリミックス!ドリーミーな世界観全開の仕上がり!

7

SOCIAL DISCO CLUB

SOCIAL DISCO CLUB Acid Town HANDS OF TIME / UK / 2010/1/12 »COMMENT GET MUSIC
ポルトガルのSOCIAL DISCO CLUBのNEW!!LIPS"FUNKY TOWN"使い?というよりEDITという趣ですが、これが見事な仕上がり!ACID HOUSEなボトムに印象的なシンセを見事に合わせ、決して上げネタとしての使用ではなく、ぐいぐいと引っ張っていくという感じの構成がお見事!

8

V.A.(MANMADE SCIENCE FT. JOHN THROWER,SOULPHICTION,PHLEGMATIC...)

V.A.(MANMADE SCIENCE FT. JOHN THROWER, SOULPHICTION, PHLEGMATIC...) Motorsoul Vol. 1 PHILPOT / GER / 2009/12/26 »COMMENT GET MUSIC
「ポスト」デトロイト、ディープハウスのレーベルとして、ここ数年注目を集めるドイツのレーベルPHILPOTが2005年にリリースしたコンピレーションのデッドストックを発見!!!! 説明不要SOULPHICTIONや、その変名JACKMATE、MANMADE SCIENCE、ベテランTODD SINESやMOLEなど実力者のみが集う良質のアンダーグラウンド・ハウスコンピレーション!!!

9

DJ QU

DJ QU Party People Clap DECONSTRUCT MUSIC / US / 2009/12/14 »COMMENT GET MUSIC
NY地下シーン「台風の目」的存在のLEVON VINCETが運営するDECONSTRUCTからの、絶品インダストリアル・ハウス。DJ QUによるTRACKをLEVON VINCET、JUS ED等がREMIXしたWパック。全トラックの硬派っぷりに惚れ惚れしますが、ANTHONY PARADSOLE & FRED P による、"沼系ACID HOUSE" REMIXがイイ!!!

10

YOUANDME

YOUANDME Ornaments Symphony ORNAMENTS / GER / 2009/12/15 »COMMENT GET MUSIC
未だ詳細不明ながら、マニアを中心に信頼の広がりを見せる「ORNAMENTS」が初のCDをリリース。YOUANDMEよる、レーベル音源をMIXしたオムニバスといった体裁ながら、渋くダブ要素と硬質なインダストリアルなサウンド・メイキングでまとめられたクールな楽曲郡は、家で聴いても、何ら損なわれることはないです。限定333枚のスチール缶ケース。お見逃し無く。

[Techno] #2 by Metal - ele-king

 あけましておめでとうございます。相も変わらず労働とクラブ徘徊の生活を送っています。どうか今年もよろしくお願いします!
 ちなみに昨年の大晦日から新年はTHE KLO(BE-WAVE)→DJ NAMIDA(BE-WAVE)→中原昌也(BONOBO)→DJ WADA(SOUNDBAR+)→MIXMASTER MORRIS(SOUNDBAR+)といった流れでした。良い幕開けです。遅ればせながら野田さんに勧められ、ディスクユニオン限定のヘア・スタイリスティックスを買いました。ジョン・ケージを越えてます。恐れ入りました。
 さて、クラブ中毒者およびヴァイナル中毒者のためのテクノ系の12インチ、クリスマスから新年もリリースは好調で、いくつも面白いものが出ています。

1 Acid Pauli / Nymbiotic/Symbiotic | Smaul(GER)

90'Sのジャーマン・テクノを象徴するような無機質なレイヴ・サウンドを〈ディスコ・B〉(ミュンヘンの老舗のテクノ・レーベル)からリリースしていたマルタン・グレッシュマンことアシッド・ポールが、こんどは自身のレーベル〈スマウル〉からのリリース。作風はがらりと変わってソフトでシンプルなハウスを響かせている。
  A面はガムランを基調に、蛙の声や水音など自然音を巧みに取り込んだ個性的な響きのトラック。B面では哀愁をおびたストリングスのサンプルを使った落ち着いたディープ・ハウスが中盤のブレイクからプログレ調に変化していく珍妙なトラックを展開する。アイディアとネタ一発だが、それがまさに今日的な"リエディット"の形。そしてこれがまたフロアでは効力を発揮する。

2 Acid Pauli / Marvin / The Real Sidne | Bootleg

ちょっと古いけど、こいつも是非紹介したい。先にも挙げたアシッド・ポールの一作前のリリース。クラブで聴いている人も多いと思うが、マービン・ゲイの"ホワッツ・ゴーイング・オン"のヴォーカルがそのまま使用された、まるでシルクのように滑らかなディープ・ハウスだ。DJにとってはとても使いやすく、ヴォーカル・パートが入ってくるタイミングが遅いので前の曲からゆっくりとミックスすることができる。
  現場でかけてみると面白いのが、大ネタにもかかわらず歓声があがるような盛り上がりではなく、ほかほかした良い空気が流れるところです。曲のスピードを変えても音程がぶれない、サンプラーの機能向上がもたらした奇跡の1枚。もちろんヴァイナル・オンリーです。

3 Anthony Collins / Away From Home | Mule Electronic(JPN)

フランスの〈フリークン・チック〉に代表される新しいタイプのシカゴ・ハウス勢のなかで、目覚ましい活躍を見せているのがこのアンソニー・コリンズだ。DJあるいはダンス・マニアのあいだでいまいちばん信頼されているトラックメイカーのひとりでもある。
  A面ではレーベルのカラーに合わせてミニマルを意識したのか、彼の得意技であるシカゴ経由のディスコ・テイストは影を潜め、中低域の音の運びが上手いダビーで深みのあるテック・ハウスを展開している。B面ではピアノとシンセとホーンのからみが絶妙な、ジャジーなフィーリングのディープ・ハウスを展開する。ブラック・ミュージックとしてのハウスを求めている人にはドンピシャな音でもある。明るすぎず、綺麗すぎず、ほど良い塩梅です。

4 Telefon Tel Aviv / Immolate Yourself Remixies | Bpitch Control(GER)

トータスのジョン・マッケンタイアによるレーベル〈ヘフティ〉からオールドスクールなエレクトロを基調に数々の傑作を放ってきたテレフォン・テル・アビブのアルバムからのカットで、これはそのリミックス集。レーベルはベルリンのエレン・アリエン率いる〈ビッチ・コントロール〉から。豪華な面子がそろったお買い得盤である。
  A1はレーベルが期待を寄せる新人トーマス・ムラーによるダークなエレクトロを基調にした金属的な質感のアシッド・ハウス。おかずのパーカッションがいまのフロアの気分を象徴している。
  B1は人気の女性ミニマルDJ、ミス・フィッツによる原曲のヴォーカルを活かしたダビーなミニマル・ハウス。現在のミニマル・シーンを代表する〈パーロン〉からリリースされた前作の延長上で、よりシンプルに音の運びを意識したトラックに仕上がっている。この人の作る曲は、サンプルにエフェクトをかけたものが基調で、安易といえば安易なのだが、いまのDJならではのネタ感が良い。今回も毎度おなじみのブラック・ジャズからのサンプル使いだ。
  B2はベルグハインの人気DJ、ベン・クロックによるソフトでグルーヴィーなテック・ハウス。ハード・テクノに傾倒していた作風から見事なシフト・チェンジ。ただ体の動かし方にはテクノを感じる。後半に入ってくる多幸感のあるシンセがトランシーで心地よい。

5 Bauhaus / Bauhaus O1 | Bauhaus(GER)

ドイツの歴史的に有名な美術学校「バウハウス」の名前がホワイト版にスタンプされただけの、アート志向のハウス。アーティストは不明。音は、太いキックとザラついたハット、中高域のノイズで引っ張るインダストリアルな質感のハード・ミニマル。レディオ・スレイヴに代表される90年代テイストのテクノをモチーフにしている。いわば懐古主義的なトラックとも言えるだろう。ネーミング、楽曲、スタイル、すべてが現在のテクノを支配する"ミニマリズム"の美学に基づかれている。

6 Deepbass & Roman Toletski / Dark Beat(Remixies) | Dark Beat(UK)

UKの新しいレーベル〈ダーク・ビート〉よりストイックなハード・テクノが登場。A面はUKテクノ・シーンのベテラン、マーク・ブルームによるリミックス。ハットの抜き差しとホワイト・ノイズで引っ張り、後半には覚醒的なシンセが展開する、ほどよく走ったミニマル・テクノ。うすら遠くに聴こえる女性の声の入れ方にセンスの良さを感じる。
B面は、グラスゴーの〈ソーマ〉で活躍するパーシー・エックスによるエディット・セレクト名義でのリミックス。"The Orb Theory"という意味深なタイトルが付けられている。パーカッションを主体としたグルーヴィーなミニマル・テクノで、ジェフ・ミルズのように裏と表が入れ替わる繊細なトラック。マーク・ブルームといい、トム・ミドルトンといい、UKではベテラン勢を中心にテクノがふたたび盛り上がってきている。

7 Gary Beck / Over To You | Bek Audio(UK)

こちらはグラスゴーの新鋭ゲイリー・べックが自身で立ち上げた〈べック・オーディオ〉からの新譜。A面は中高域のフランジャーのかかったホワイト・ノイズで淡々と引っ張るミニマル・テクノ。
  B面は原曲とほぼ同じ構成でノイズを強調したエディット・セレクトによるリミックス。人気のプログレッシヴ・ハウスDJ、ロコ・ダイスのトラックのように柔軟なグルーヴながら、ハードにもソフトにも使える1枚で、まさにDJフレンドリー。基本的に展開の少ない地味な曲だが、聴かせ方次第ではDJのピークタイムにも使えまる。次世代も負けてはいない。

8 Gaspard De La Vega & Jenius / Beauty On Water Ep | Perplex Recordings(GER)

ドイツのテック・ハウスレーベル〈アワー・ヴィジョン・レコーズ〉などで活躍する新鋭ギャスパー・デ・ラ・ベガ&ジー二アスによる新作が〈パープレックス〉よりリリースされた。
  予定調和なデトロイティッシュ・テクノを聴かせるA1、B2はおいといて、B1のゆったりしたパーカッションにセクシーな女性ヴォーカルが絡むダブ・ハウスが面白い。ディレイによるダブ処理で音の"トビ"が強調されている。大箱でかかったら、スモークがバッチリはまりそうなイメージの曲だ。大げさで、ばかばかしくって、落差があるところが良い。先鋭的な試みや繊細構成はないものの、大箱でプレイされるために作られたプログレッシブ・ハウスのタフさが充分に滲み出ているクラブ・トラックだと言える。立体的で体感的な音楽。

9 NSI / Eitherway | NSP(GER)

NSIとは、テクノ・ファンにはサン・エレクトロニックの名前で古くから知られるベルリンのベテラン、マックス・ローダーバウアー、そしてリカルド・ヴィラロボスとのプロジェクト、オド・マシンをはじめ、ジーク・ウーバー・ディー・ゾンネ(Sieg Uber Die Sonne)のメンバーとしても活動するトビアス・フロイントによるユニット名である。NSIは2005年から活動をはじめ、すでに4枚のシングル、2007年には〈サッコ〉からは1枚のアルバムを発表している。
  本シングルは全編生楽器の演奏を中心に繰り広げられ、それをエレクトロニクスによって加工した音響的なツール集とうい体裁をとっている。ルチアーノの〈カデンツァ〉からリリースされたシングルではミニマル・ハウスのフォーマットを借用していたが、ここではどこまでも実験的でダンスを目的としたクラブ・ツールは1曲もない。かろうじてB1が曲として機能している程度だ。フリー・フォームなクラウト・ロック・バンド、ファウストを想起させる。新しいフル・アルバムが早く聴きたい。

10 Jacques Palminger / Tuedeldub Remixe | Pudel Produkte(GER)

これは酷いジャケット。プードル犬が糞を垂れている。ハンブルグのパフォーマーンス集団スタジオ・ブラウンのメンバーとして活躍するジャックス・パルミンガーのニュー・シングルだ。『鳥屋の梯子と人生はそも短くて糞まみれ―ドイツ民衆文化再考(アラン・ダンデス)平凡社』を参照しよう。
  新しいドイツのテック・ハウスを模索する〈パープレックス〉よりによると、ドイツ人にはスカトロジーを題材としたジョークを好む傾向があり、プードル犬が糞を垂れるモチーフも昔から頻繁に使われているそうだ。それはこの盤は、まさにドイツ人らしいユーモアの妙例なのだろう。
  A1は原曲のポエトリーを活かしたシャックルトンによるリミックスで、装飾はそぎ落とされ、ベースとドラム最小限のシンセという骨格だけで聴かせるダブステップ。ベースの抜き差しが、まるでダブの始祖キング・タビーを彷彿させる。
  A2はローレンスによる多幸感溢れるダウンテンポ・トラック。まるで元日の空のように美しく澄みきった穏やかさが魅力だ。B1はヘイ・O・ハンセンによるアシッド感のあるディレイがかったブロークンビーツ。B3はピーター・プレストによるメランコリックなピアノのメロディが印象的なエレクトロニカ。B2、B4はヴォーカルのみの短いスキット。現在のドイツの風俗が凝縮されているだけでなく、サウンド的にもとてもクオリティが高いリミックス集となっている。

 やっぱいいわ、いい。まったく目新しくはない。変わらないと言えば変わらない。すでに知っている人はよーく知っている、いかにもデリック・メイのミックスなんだけど、あらためて聴いてやっぱいい。とくに最初の入り方がかっこよすぎ。3曲目までのミックスが本当にうまいんだよな~。キックの入れ方とか、わかってるけど、そこで「ぐぃっ」って持っていかれる。少々強引だが、みんなこれにやられるんだ。未来的でエレガントな響きがあって、力強いキックが聴こえる。ハウスの恍惚とファンクの美学、そしてオーガズムへの飽くなき追求が「これでもか!」と言わんばかりに展開される。

 先日僕は青山のCAYでやっている〈ギャラリー〉に踊りに行ったが、DJたちはみんなレコードを使っていた。いまでは貴重だが、そこには疑いようのない人間味がある。デリック・メイのこのミックスも、コンピュータで正確にピッチ合わせをするこのご時世においてはいくぶん荒っぽいが、そこが良いのだ。微妙にずれているところとか、EQとか、いかにも"生"だ。もちろん"生"はクラブで体験するものだが、デリック・メイにとって公式の2枚目のミックスCDなんだから楽しみに待とう。タイトルは『Heart Beat Presents Mixed By Derrick May(TRANSMAT from DETROIT)× Air(DAIKANYAMA TOKYO)』だそうです。(......な、なんなんだ、この長さは!)。

 発売は1月20日予定です!

CHART by Electro-Violence Distribution 2010.01 - ele-king

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ROTATOR/JIMMY S/SOMTEK/FEXOMAT...

ROTATOR/JIMMY S/SOMTEK/FEXOMAT... TNI 12 TERROR NOIZE INDUSTRY / スイス / 2009/12/30 »COMMENT GET MUSIC
BREAK CORE IS BACK!と言うか、そのブランドのみが先行し中身まで理解されることなく忘れさられてしまった感のあるブレイクコア。HARDCOREやSPEEDCOREの中の小さな一パートでしかなかったBREAKCOREがIDMやノイズとクロスし、突き抜けて行ったのが大まかな流れ。フォーマットに縛られることなく究極なサウンドを追求する姿勢、アーチストがいる限り終わらない。ハナたらしまくりでデジタラシな音響グラインドFEXOMATがクソ。

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SLYDTEK / MEID / BASIL

SLYDTEK / MEID / BASIL OUANAIGAINE 10 OUANAIGAINE / フランス / 2009/12/23 »COMMENT GET MUSIC
ASTROFONIK傘下でアホアホなマッシュアップ、トボけたネタ使いで人気のOUANAIGAINEレーベル最新作。そのありえないネタ使いも魅力のうちなんだが、特にDJ MEID、最近成長著しいロシアのBASILなどのシーケンスの妙技に注目すると、TRIBEが高度に綿密に仕掛けられたダンスミュージックだということがよくわかる。楽しく、そして深く聴かせる一枚。

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KELTEK

KELTEK WORLDS ENDS (V.I.P.) AMALGAM / イギリス / 2009/12/30 »COMMENT GET MUSIC
TECH ITCH、ELEMENTS OF NOIZE、PANACEA他当時テックステップと呼ばれていたサウンドにルーツを持つダークステップ。UKのメインストリームのドラムンベースと懸け離れて行くことによって、その存在をより際立たせている。テックステップの初期衝動をブレイクコアを通過したスキルでブラッシュアップ、よりダークにメタリックに。SPEEDCOREやFLASHCOREにも通じる攻撃性、破壊力。

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SYTRI-X

SYTRI-X METALIKEA SYTRI-X / フランス / 2009/11/14 »COMMENT GET MUSIC
FREE STYLE LISTENサブのKICK FOR KILLリリースで話題のニューカマー、遂に自身のレーベル、その名もSYTRI-Xをドロップ。トライブの超絶リミックス・スキル、ハードコアでいてファニーなマッシュアップ・サイドをお楽しみください。第一弾とあって気合が入りすぎたのか、メタリKにGバスター、ジョニーBとありえないヤバさで聴かせます。

5

SPIRAL TRIBE

SPIRAL TRIBE THIS IS TRANCE NETWORK REPRESS / フランス / »COMMENT GET MUSIC
NETWORK23レーベルの名作や周辺アーチストの激レア未発表曲までをも発掘、紹介するNETWORK REPRESSも早くも23作目。記念すべき今回は'94年FORCE INC.からリリースの4曲入りアルバムTHIS IS TRANCEよりのカット。お宝アイテムが最高の音質で聴けます。

6

TLB / SPARKS / VIKO / PARANOIAK 12

TLB / SPARKS / VIKO / PARANOIAK 12" ARCHITEK 19 ARCHITEK フランス / 2009/12/23 »COMMENT GET MUSIC
フリースタイルリッスンのショーケース的サブレーベル、ARCHITEK最新作!トップのTLBから、VOKO@LABO14、ニューカマーPARANOIAK、ラガものからシンセでハメまくりのハードコアトランス、キック命のハードダンスまで、一気に聴かせます、使えます!今からTRIBE聴かれる方は、この辺からいかが?

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KEJA / KAN10 / OZYSTIK 12

KEJA / KAN10 / OZYSTIK 12" 3672 1 07 3672 1 / FRANCE / 2009/12/30 »COMMENT GET MUSIC
エレクトロ(ハウス)とは対極に位置する仏アングラTRIBE/HARDTEKのシーンにあっても異色な存在のMACKITEK。時にブレイクコアやスピードコアさえも凌駕するテクノパンクスとも呼ばれるその過激さ、カオス。そんな彼らがSPIRAL TRIBE他先達に敬意を表し、ダンスミュージックとしてのTEKNOを突きつめるべく立ち上げたサブレーベル最新作。変態テクノとういうありきたりな表現では、到底語りつくせないOZYSTIKの変則、倍速トラックに絶句。

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LA FOUDRE

LA FOUDRE LE CHAOS ORDINAIRE NO-TEK / FRANCE / 2009/11/14 »COMMENT GET MUSIC
10数年前ここ日本でも一部の好きものから絶賛されていた元祖EXPERIMENTALハードコアテクノ・レーベルEXPLORE TOIの残党がしれーっと復活です。SPEEDCOREをよくわからない方もいるかもしれませんがガバ臭い方ではなくノイズアヴァンギャルドでハナタラシまくりのアレです。以前のそれとの違いを強調する意味で本人らはTRIPCOREやFLASHCOREとのキャッチを使っておりますが、言いえて妙、聴けば納得です。極悪ハードコアギャルMOUSEの大名曲のリミックスもなぜか収録の限定300枚。

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BIOCHIP C.

BIOCHIP C. ANTIMATTER EP OFF BITS / FRANCE / 2009/11/14 »COMMENT GET MUSIC
アシッドと言えばフランスです。ご存じない方も多いかもですが、DJ ESPの名曲、未発曲のみを発掘リリースするレーベルがあったりと、かなりマニアック。今回紹介するのはハードコアPSYCHIK GENOCIDEを擁するAUDIO GENICによるACID専門レーベル、OFF BITS最新作。ハードコア(テクノ)大御所THE SPEED FREAKことバイオチップCがフレンチコアのグルーヴ感や攻撃性を損なうことなく、暴れまくってます。

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AARON SPECTRE

AARON SPECTRE AMEN,PUNK EP OMEKO / JAPAN / 2009/12/10 »COMMENT GET MUSIC
2005年リリース。全世界のブレイクコアチャート一位を獲得した傑作中の傑作。仏PEACEOFFレーベルオーナーのフランク(ROTATOR)も来店時にどっさり買い付けていきました。今やオークションでも高値のレア作。デッドストック数枚のみ。

Flashback 2009 - ele-king

『100%RAP』は怠け者による最高のサウンドトラックである

 アルバム・チャートを作るのが楽しくて、ハマってしまった。CDを部屋中から集め、サンプル盤しかないものは新宿のタワレコに買いに行き、ついでにUSのヒップホップやR&Bを中心に結構な枚数を新しく手に入れた。そして、帰省していた年末年始を挟んで、昨年末から今まで聴きまくっている。僕は2009年も相変わらず日本のヒップホップをメインに追い続けたが、総合的にこのジャンルは1年を通して刺激的であり続けた。世の中の不安定な情勢をまるでエネルギーにするかのように、凋落するこの国の経済と反比例するかのように、進化を続けた。いまこの音楽を聴かないと何年か先に間違いなく後悔することになるだろう。もちろんすべてを完璧に追えているわけではないし、僕にも好き嫌いは当然ある。ただ、時間と気持ちとお金に多少でも余裕があれば、気になったものを聴いておいて損はない。

 おそらく北米のインディ・ロック・シーンがそうであるように、ムーヴメントとしての面白さが現在の日本のヒップホップ・シーンにはあるのだろう。00年代後半、特に2009年の成熟ぶりには特筆すべきものがあった。それについてはこれから語ろう。ただ言っておくと、それは「最先端」とか、そういう言葉に納まる類のものではない。そんなスノビズムを拒絶するような泥にまみれながら輝く文化としてある。日本のヒップホップ/日本語ラップの魅力は、音と言葉で時代の変化や現実を克明に生々しく伝えるメディアとして機能している点にもある。だから、この国においてマイナーなジャンルであることに悲観することはないし、セールスとか、数値では計れない次元で目の醒めるような音楽的独創性と鋭い社会批評性を保っているこの文化に携わる人間には自信を持って堂々としていて欲しい。

 批評家の矢部史郎は00年代初頭に言った。「マイナーを滅ぼすことはできない」と。そもそもこの国の経済そのものがガタガタなのだし、じたばたしてもはじまらない。SEEDAのリリックを引用するならば、「WE FUCKIN MAJOR インディーズだがメジャー WE DA OFFICIAL FUCKIN MAJOR」("Get That Job Done")ということになるのだろう。僕らは2009年も素晴らしい音楽とちゃんと出会えている。産業について考えることも大事だけれど、音楽を語る言葉を豊かにして、小さな蠢きをひとつの文化として活性化させることの方がよっぽど意味のあることだ。

100%RAP
鎮座DOPENESS

 さて、前置きが長くなったが、僕はアルバム・チャートの1位に鎮座DOPENESSのファースト・ソロ・アルバム『100%RAP』を選んだ。このユーモアたっぷりの43分あまりのアルバムをトップにすることにまったく迷いはなかった。ジェイ・Zの『ザ・ブループリント3』を押さえての1位というのにも意味がある。もちろん賛否両論はあるだろうが、これはひとつのメッセージだ。たしかに『ザ・ブループリント3』は圧倒的だし、これぞヒップホップといった、エネルギッシュなアルバムだ。音は古くて新しく、ヴィヴィッドな時代性があり、しかもグローバルに波及するパワーがある。それでも僕は、鎮座DOPENESSの、植木等のスーダラな楽天性をこの時代に引っ張り出してきた嗅覚と、ファンキーでソウルフルなラップ、この国でしか生まれ得ない素晴らしく雑食的な感性――ダンスホール、ファンク、ソウル、フォーク、歌謡曲から忌野清志郎まで――を支持したい。鎮座DOPENESSの世界観をうまく捉えた菱沼彩子のキュートなイラストもとても良かった。『ザ・ブループリント3』がオバマ大統領就任に胸躍らせるアフリカン・アメリカンによるヒップホップだとしたら(冒頭の"WHAY WE TALIKIN` ABOUT"を聴いて欲しい)、『100%RAP』は政権交代以降、いまや一国のトップさえ経済成長に疑問を呈する国の怠け者による最高のサウンドトラックと言える。ボブ・マーリー風に言えば、「EVERYTHING IT`S GONNA BE ARLIGHT」という感じか。朝寝坊と電話で上司に遅刻の言い訳をする"朝起きて君は..."を聴くと、自分の苦い過去を思い出しつつ、笑ってしまう。こういう可笑しみのあるストーリーを書けるのも鎮座DOPENESのオリジナリティだ。

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 アメリカでは、ドレイク、キッド・カディ、ワーレイはギャングスタ・ラップを更新する新たな時代のスター(3人は、昨年、米『GQ』誌の「Gangsta Killers」という記事でフィーチャーされた)としても注目を集めている。鎮座DOPENESS、PSG、S.L.A.C.K.(PSGのメンバー。ラッパー/トラックメイカー)の登場はその動向との奇妙なシンクロニシティがあって、00年代、この国のアンダーグラウンドで市民権を得た、上昇志向をキーワードとする所謂ハスリング・ラップ/ハードコア・ラップとは別の流れを今後生み出す契機に間違いなくなるだろう。昨年末、鎮座DOPENESSが、MSCの所属するレーベル〈Libra〉が主催するフリースタイル・バトルの全国大会〈UMB〉で優勝したのもその予兆と言えるかもしれない。

鎮座DOPENESS

 マクロに視れば、今の日本(あるいは諸外国)はアメリカの金融危機の余波による不況といった景気循環のひとつの局面ではなく、資本主義というシステムが再考されるべきレヴェルに達していると言う学者もいるぐらいで、事実、自分たちのライフスタイルを根本的に変えないと生き残れない時代に突入しているとの実感をヒシヒシ肌で感じている。実際、昨年末、アメリカで黒人若年層の失業率が34.5%に達したというニュースが報じられた。日本はまだそこまで絶望的な状況ではないけれど、頭ではわかっていても、いつまでも右肩上がり幻想が体から抜けない人はこれから生き残るのは難しいだろう。元々のこの国のありように何の期待もしていなかった(社会に無関心というわけではない)僕は逆に気楽な気持ちでいる。むしろ期待に満ちている。鎮座DOPENESS、PSG、S.L.A.C.K.の低空飛行は、そんな気分にしっくりくるものがある。彼らへの期待も高まるというものだ。

 PSGのデビュー・アルバム『DAVID』と、弱冠22歳のS.L.A.C.K.のセカンド・アルバム『WHALABOUT』は、本当にわくわくしながら聴いた。S.L.A.C.K. の甘いソウルの感性やトリッキーなビートは、スラム・ヴィレッジやマッドリブを彷彿とさせるが、団塊の世代や大人に毒づく"ANOTHER LONELY DAY"のドキッとするような物言いはパンキッシュですらある。これは僕の今年の1曲だ。まったく末恐ろしい若者が登場したものだ。『David』に破壊力のあるミキシングやマスタリングが施されればもっと良かったと言う人の意見には賛同するけど、とはいえ彼らのユニークなアイディアやSF的発想力には目を見張るものがある。また、ヒップホップ、ハードコア、レゲエが衝突するCIA ZOOのラッパー/トラックメイカー、TONOのファースト・ソロ『TONO SAPIENS』の、カッコ良い! という言葉が思わず口からついて出てくるような疾走感には痺れた。スピードという点においては、トゥー・フィンガーズと同じぐらいの速さがあっただろう。彼ら新世代のアクトは、前時代的な所謂海外コンプレックスを独自のやり方で克服しようとしているように見える。そんな彼らの試みはまだ過程にあるものの、邦楽や日本文化への偏重から来る閉塞とは明らかに別の次元で鳴っている。

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 他にもいろいろあった。DJ BAKUによる日本語ラップ・オムニバス『THE 12JAPS』には強い変革の意志を感じたし、KILLER-BONG(K-BOMB)の日々の実験と奔放なサンプリング・センスの成果をまとめた『LOST TAPES』には相変わらず輝くものがあった。年末におこなわれた、K-BOMBが所属するTHINK TANKの、ダブやフリー・ジャズの感性をヒップホップ・ライヴに落とし込んだタイトな復活ライヴには興奮したが、あの黒く狂った息吹はより多くの人の耳に吸い込まれていくことだろう。(今年のイヴェントだが)先週末、プライヴェートのこんがらがった日々から来るであろう痛々しさと力強さを剥き出しにしたRUMIの『HELL ME NATION』の告白的なリリース・ライヴから目を逸らすことができなかった。RUMIの、女性の加齢について大胆に切り込むラップは特別なものだ。あんな風に女性が肌の小皺と弛み(!)について歌う姿を僕は他で聴いたことがない。マッチョ男を縮み上がらせる、あの勇気にはマジで恐れ入る。応援するな、という方が無理な話だ。

 ぶっちゃけて言うと、最近なんとなく気づいたのだけど、僕は00年代に一度、音楽が「必要ない」生活を知らず知らずのうちに送っていたのだと思う。曲がりなりにも音楽ライターという肩書きの人間が何を言っているんだと思われる方もいるだろうが、当たり前の話、音楽を追いかけるよりも優先しなければならないことや不意に訪れるアクシデントや熱狂が時に人生には起こるし、だからこそ音楽を強く欲することもできる。さらに言えば、つまらない「ミュージック・ラヴァー」とか「音楽ファン」には絶対になるものかという妙に捻くれた気持ちと既存の窮屈なシーンなるものへの違和感から生じた性急な音楽への愛の表現は、町中で大騒ぎしたり、踊りまくるエネルギーへと変換されていたのだ。まあそこには政治的な動機やもっと様々なモチヴェーションがあったのだけど、細かいことは原稿のテーマとずれるので書かない。今でもそんな一方的な音楽へのむちゃくちゃな想いは心の底にあるものの、ここ1、2年、もう少し素直に音楽ファンとしての気持ちを大事にしようと思えるようになった。

 だからというわけではないが、2009年はここ数年でいちばんCDを買った年だった。他の年と比較してもダントツに買った。メジャー/インディともに面白いものがたくさんあった。配信への移行が進み、CDが売れないと言われる時代に逆行するようにレコード屋によく出かけた。CD/レコード文化を守ろうとかいう大それた使命感などはないが、前よりCDを買う経済的余裕が出てきて(たいした余裕じゃないけど。2、3年前はあの経済状況でよく生活できてたなぁ)、しかもこれまで以上に音楽を聴くのが楽しかった。単純に音を求めていたし、新譜を聴くことに喜びを感じていた。

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 正月の帰省中、高校時代にレディオヘッドやニルヴァーナのコピーまでしていた結婚間近の地元の男友達が、婚約者の運転する車の中で流行りのアイドル・グループの曲を「セクシーだよねー」と何気なくかけていて、音楽との付き合い方も変わるものだなと思ったのだけど、それが良い悪いとかじゃなくて、彼との関係も含め、あぁ、お互い随分変わったなと感慨深かった。僕が生きている社会と彼の社会はまったく別のところにあるという当然の事実を、ブラコン歌謡風の軽快なダンス・チューンを車内で聴きながら感じていた。突き詰めれば、そういう距離感や現実認識の中で僕は音楽について考えている。

 そこでKREVAの『心臓』は、このチャートの中で唯一あの車の中で鳴っていても違和感なく聴けたはずだなと思った。『心臓』は絶妙なバランス感覚を有していて、密室的なラヴ・ソング集としても、ある意味ブラコン歌謡の最新形としても、R&B寄りのヒップホップ・アルバムとしても聴ける。つまり、大衆音楽として強度のあるアルバムだ。去年、家で繰り返し聴いた1枚だ。他方、KREVAが参照したのと同じUSアーバン・ミュージックやスタジアム・ロックばりの派手なギターを消化してオリジナルなサウンドを作り上げたSEEDAの通算7枚目のアルバム『SEEDA』は、自民党と民主党の固有名を挙げてストレートな政治批判を展開する "DEAR JAPAN"がいい例だが、SEEDAの内省と外(社会)に向かう気迫が融合したアヴァン・ポップな作品だった。騒々しく飛び交うシンセ音には圧倒されっぱなしだったが、今にも安室奈美恵がセクシーに歌いだしそうな"FASHION"のキャッチーさにもやられた。どちらが知名度の意味でポピュラーかと言えば、もちろんKREVAだが、どちらにポップ・ミュージックとしての突破力を感じるかと言えば、僕はSEEDAに軍配を上げたい。

 S.L.A.C.K.やKREVAやSEEDAらのメロウでスウィートなテイストを持った楽曲はソフトな耳ざわりと裏腹に挑戦的な試みでもある。年末、オリコン・デイリーチャートで最高5位を記録したSEEDAの復活シングル「WISDOM」はその路線におけるひとつの結実だろう。シングルでは、七尾旅人とやけのはらの甘く切ない「ROLLIN` ROLLIN`」も最高だった。00年代中盤、MSCやSEEDAがファッション化していたストリートという概念に対抗的で野性的なニュアンスを注入して、ストリート・ミュージックとしてのヒップホップを再定義して以降の次なる展開の予感さえ感じる。昔はストリートなんて言葉は白々しくて使いたくなかったけど、彼らの出現以降、その言葉を使うことにそこまで躊躇しなくなった自分に今さらながら気づいたりもした。

 まだまだ書きたいこと、突っ込むべきことは山ほどあるが、時間切れ。ムーヴメントと言うにはまったくてんでばらばらなこのシーンが10年代に果たしてどんな展開をみせるかは予測がつかないが、僕はアンビバレンツな、一筋縄では行かない気持ちを抱きながら、この国の大きな情勢から見れば、ほんの小さい、マイナーなムーヴメントをいまはどこまでも肯定しよう。それは去年1年間で熟成された気持ちで、2008年までは言えなかったことだ。2010年も刺激的な年になるに違いない。



■Top 20 Hip Hop albums of 2009 by Shin Futatsugi
1. 鎮座DOPENESS/100%Rap(W+K東京LAB /EMI)
2. Jay-Z/The Blueprint 3(Roc Nation/ユニバーサル)
3. PSG/David(ファイルレコード)
4. Seeda/Seeda(Concrete Green)
5. S.L.A.C.K./Whalabout(Dogear Records)
6. Drake/So Far Gone(October's Very Own)(mixtape)
7. Kid Cudi/Man On The Moon:The End Of Day(G.O.O.D/ユニバーサル)
8. Tono/Tono Sapiens(CIA REC)
9. Two Fingers/Two Fingers(Big Dada/Paper Bag Records)
10. Rumi/Hell Me Nation(Popgroup)
11. Mos Def/The Ecstatic(Downtown/Hostess)
12. ECD/天国よりマシなパンの耳(Pヴァイン)
13. Killer Bong/Lost Tapes(Blacksmoker)
14. Skyfish/Raw Price Music(Popgroup)
15. Shafiq Husayn/Shafiq` En A-Free-Ka(Rapster)
16. Keri Hilson/In A Perfect World...(Mosley/Interscope/ユニバーサル)
17. Kreva/心臓(ポニーキャニオン)
18. DJ Baku/The 12Japs(Popgroup)
19. Killa Turner/B.D.&Roverta Crack/Nipps/the sexorcist presents Black Rain(Tarpit Records)
20. Raekwon/Only Built 4 Cuban Linx... Pt.2(Ice H2O/EMI)

次点
The-Dream/Love VS. Money(Def Jam/ユニバーサル)
Wale/Attention Deficit(Interscope/Allido)
Rihana/Rated R(Def Jam/ユニバーサル)
Pitbull/Rebelution(RCA/Jive)
Ghostface Killah/Ghostdini Wizard Of Poetry In Emerald City(Def Jam)
Common/Universal Mind Control(Geffen/ユニバーサル)
Dudly Perkins/Holy Smokes(SomeOthaShip/E1)
スチャダラパー / 11(エイベックス)
Issugi/Thursday(Dogear Records)
O2/Stay True(Libra)
鬼 /獄窓(赤落PRODCUTION)
Juswanna/Black Box(Libra)
SD Junksta/Across Tha Gami River(Yukichi Records)
V.A/Chocolate Factory#2(Ing Records)
Zen-La-Rock/The Night Of Art(Awdr/Lr2)
般若/Hanya(昭和レコード)
サイプレス上野とロベルト吉野/Wonder Wheel(Almond Eyes/Pヴァイン)

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