「HIKARU」と一致するもの

hikaru yamada and the librarians - ele-king

 1988年生まれの山田光はもっとも若い世代に属するマルチリード奏者/即興演奏家であり、プリペアド・アルトサックスを用いた演奏を中心に活動を行ってきた。サックスの中に鉄塊を置き、それがマウスピースに取り付けた強力な磁石に反応することによって偶発的に生まれる倍音の響きをコントロールしようとしたものや、ベルの縁に金属板を被せることで「さわり」の効果を施したもの、あるいはマイクを差し入れることで、気息がサックスの音として成型される以前の、楽器それ自体のふるえと内部の気流を音楽の場へと連れ出そうとしたもの、等々。そうした先鋭的な──というのは常識から外れた先端を指すのではなく、つねに現在の常識に対して批判的な疑いを抱きつづけているという意味での鋭さ──音楽に携わってきた彼が、ヴォーカルを担当する穴迫楓とともに組んだポップ・ユニットの、本作品は初の全国流通盤である。ライヴでは白石美徳のドラムスを加えたトリオ編成で、山田はサックスやギターを用いた生演奏も行うものの、本盤においては全トラックがサンプリングのみを用いてつくられており、音盤ならではの音楽が展開されている。

 トラックはキーワードとなる言葉を含む楽曲だけを素材にするといったふうに、それぞれ特定のコンセプトのもとに生み出されている。たとえば7曲めの“Divide, Rule and Love”は、シカゴ音響派のグループであるタウン・アンド・カントリーの“Bookmobile”を基調にしながら、スウィングル・シンガーズの“The Well-Tempered Clavier Book 2”から抽出したコーラスがアップテンポ・スイングのリズムと絡み合うのが特徴的な楽曲だが、これは「book」という単語がキーワードであり、この言葉を含む楽曲だけがサンプリングの対象になっている。あるいはジョーイ・ネグロがリミックスしたアシュフォード&シンプソンの“Love Don't Make It Right”から取られたキックの配置のゆらぎがJ・ディラを思わせもする8曲めの“Don't Throw Themselves Away”は、「don't」という単語のつく楽曲だけを選んでサンプリングされている。そうした明確な主題がある一方で、再構築された音楽からは「book」や「don't」といった様相を聴き取ることができないことを鑑みれば、これらのテーマはあくまで楽曲を制作するための口実にすぎないのだろう。素材の選別をキーワードを含むかどうかという偶然性──それは多分に即興的である──にいちど委ねることによって、主体的な判断を弱めているのである。

 上に挙げた例にとどまらず、山田光は時代も場所も異なるあらゆる音楽をサンプリングする。ジャズ、ロック、ディスコ、アイドル、さらにはタンザニアのポップスや種々の民族音楽から入江陽という新しい才能まで。しかしその選択はキーワードとなる単語が含まれたすべての楽曲からなされているわけではない。ここでは山田光がどのような音楽を聴いていて、それをどのように「所有」してきたかといった履歴が基盤となっているからである。それは音楽が情報化した現代に生きる人間が時折抱く幻想への、あらゆる音はすでにそこにあり、つねに参照可能だという妄信への痛烈な批判となっている。聴取可能な音楽の量がどれほど増えようとも、ひとが体験できる量はたかが知れているのである。そこには接触の契機がなければならない。そしてこの点において、同じカットアップ・サンプリング・リミックスといった手法を用いたシミュレーショニズムが作者の名のもとに創られた作品からのアプロプリエーションに眼目があったのとは異なって、ここでは聴者の実存的な生が主眼となっているのである。山田光という固有の生を生きるライブラリーから、即興演奏家ならではの感覚をもって取り出された音素材を用いて、彼は極上のポップスを生み出している。

Your Favorite Music About Rain - ele-king

 梅雨入りどころか、先週は記録的な大雨。靴下まで濡れるし、傘は面倒だし、電車やバスに乗っても、街を歩いていても、良い気持ちになれません。
 しかし音楽は、これまで、数多くの雨にまつわる曲を生んできました。下手したら、晴天の曲よりも多いかもしれません。“雨に唄えば”、“セプテンバー・イン・ザ・レイン”、“悲しき街角”、スコット・ウォーカーの“イッツ・レイニー・トゥデイ”、ボブ・ディランの“激しい雨”、忌野清志郎の“激しい雨”、ザ・ビートルズの“レイン”、レッド・ツェッペリンの“ザ・レイン・ソング”……、エコー&ザ・ビバインーメンの“オーシャン・レイン”、プリンスの“パープル・レイン”、アデルの“セット・ファイヤー・トゥ・ザ・レイン”……ザ・サルソウル・オーケストラにもトム・モウルトンのミックスした“サン・アフター・ザ・レイン”があります。アンダーグラウンド・レジスタンスにもアシッド・レイン・シリーズの“ザ・レイン”というハード・テクノがあります。ブリアルの“アーチェンジェル”には、真夜中の雨の気配が横溢しています。宇宙を創造するサン・ラーには、“ザ・レイン・メーカー”があります。
 とにかく雨の音楽は、あまりにも多くあります。ニーナ・シモンの“アイ・シンク・イッツ・ゴナ・トウ・レイン・トゥデイ”、マディー・ウォーターズの『アフター・ザ・レイン』やザ・テンプテーションズの『ウィッシュ・イット・ウッド・レイン』、さもなければザ・レインコーツを聴きたくもなるでしょう。
 雨は、ザ・ビートルズの“ロング・アンド・ワイディング・ロード”に歌われているように、往々にして、敗北、試練、冷たさ、孤独、人生の悲しみなどの暗喩として使われます。自分に相応しすぎるので、ここはひとつ「雨ニモマケズ」で……、いや音楽ファンらしく、雨のまつわる音楽を聴きながら過ごしましょう。エヴリシング・バット・ザ・ガールが『雨のない砂漠のように』と言ったように、雨が降らなければ乾いてしまうのです。ムーディーマンの盟友、ノーマ・ジーン・ベルには“ラヴ・ミー・イン・ザ・レイン”という曲があります。
 それでは、ぜひ、読者のみなさまからの「私の好きな雨の音楽」もメールして下さい。

My Favorite Music About Rain

野田努

1. RCサクセション – 雨上がりの夜空に
2. Horace Andy - Ain't No Sunshine
3. The Beatles - Fixing A Hole
4. Mute Beat - After The Rain
5. Ashra - Sunrain
6. Velvet Underground - Who Loves The Sun
7. Carpenters - Rainy Days And Mondays
8. The Jimi Hendrix Experience - Still Raining Still Dreaming
9. Herbie Hancock Rain Dance
10. Faust ‎– It's A Rainy Day Sunshine Girl

伊達トモヨシ(Illuha, Opitope)

Steve Reich - It's Gonna Rain

ライヒの初期作品は理論的にはラップトップで簡単に再現出来るんだろうけど、その音楽の持つ力はきっと再現出来ない。ライヒの作品を聴くと初期から現在に至るまで、理論的な音楽では再現出来ないものが音楽の中にしっかりと存在しているといつも思う。「音楽とは何なのか?」という根源的な命題を提起するから、僕は今でもたまに思い出しては彼の音楽を聴く。
「雨の音楽」ということで真っ先に思い浮かんだのは、この歌の曲名というよりも「rain,rain,rain」という音の響きだった。ライヒは何故、数ある音の中から"It's gonna rain"を選んだのか。雨の音楽というテーマをもらうまで、そのことを考えて聴くことはなかったけど、少なくともライヒ自身はあえてこの言葉と音を選んだに違いない。おそらく雨の音のミニマリズムに端を発しているであろうこの曲は、雨という現象を表す単語が「レイン」という響きを含む単語でなかったら、この音楽は生まれなかったんじゃないかと思う。
 三部作になっているこの音楽において最初の「rain,rain,rain」というレゾナンス、つまり「ウィーンウィーンウィーン」という音楽的な反響の存在によって、音楽的な成功を納めていて、この曲の存在があってこその作品で、正直なところ後の2曲は技巧的ではあっても音楽として1曲目ほどの力はない。雨というミニマリズムと「レイン」という音楽的な単語の偶然の一致に対する驚きが、この音楽を作品にまで至らしめたように感じられてならない。音楽の言語起源説を想起させるこの作品は、論理や言語では表現しえない、音楽でなければならない理由が存在しているライヒならではの音楽だ。
 今日はたまたま雨だったので、雨音のなかでこの歴史的な音楽を聴いてみた。雨音という自然現象のなかに内包されたミニマリズムの美しさを抽出して作品化するという芸術のあるべき姿を僕はこの曲に見る。梅雨時の低気圧によって低下する免疫能がもたらす憂鬱も、雨音のミニマリズムへの歓喜で乗り越えられる。

ヨーグルト

Malcom Mcdowell - Singin' in the rain

 すぐ頭に浮かんだのは、マルコム・マクダウェルが映画『時計じかけのオレンジ』のなかでアドリブ全開で奇妙なダンスを繰り広げながら、マルコムの仲間達が縛り上げた無抵抗の老人を何度も蹴り飛ばす場面。
 「雨に唄えば」を朗らかに歌いながら、強盗と強姦を犯すマルコムマクダウェル。まったく褒められた行為ではなく、むしろ最悪な状況を映し出しているのに、映像の美しさと「雨に唄えば」のノー天気なメロディーと、マルコムのすっとぼけた歌声が凄惨な場面を中和しているような不思議な後味が残り、時計じかけのオレンジを見たあとは、雨が降ると脳裏をマルコムマクダウェルがよぎるようになったのは自分だけではないはず。
絶対にこんな奴に自宅に強盗に来て欲しくはないんだけど…… 


山田光(hikaru yamada and the librarians)

 パッと思いついたのがブリリアント・グリーンとThis Heatの曲しか無く、これではマズいということで、”rain”と打ち込んだ自分のiTunes検索窓から雨空を見上げて思い出した曲を挙げさせて頂きます。

Rhodri Davies Ko Ishikawa - Three Drops Of Rain / East Wind /Ocean
ヴァンデルヴァイザー楽派のアントワーヌ・ボイガーによる笙とハープのためのコンポジション。空白も多いが今聴くとちゃんと標題音楽に聴こえる。つまり梅雨にボーっと聴いても最高!

Gil Evans & Lee Konitz - Drizzling Rain
邦題が驟雨とつけられた菊地雅章の曲。リー・コニッツと晩年のギル・エヴァンスのデュオですがこれはほんとにオススメです。素朴で手探りなピアノは貴重。梅雨そのものに浸れそうな曲想。気分転換にはならない。

Cory Daye - Rainy Day Boy
雨の音と雷がちゃんとサンプリングされている都市音楽。外goしましょう!

小畑ミキ - 雨はいじわる
一人GSというジャンルが昔あったそうで、グループサウンズ風の楽曲を歌う60年代のアイドルの人。最近では自殺したと思われてたフレンチポップのアイドルがFacebookに現れてファンを驚かせた事件などありましたが、この人もシングル6枚出して引退後は消息不明、その後自身の犬猫写真をアップしているサイトにアイドル時代のことを書いて再発見されていました。(現在は削除)。

Dominique Barouh et David McNeil - Sur Un Barc, Sous La Pluie
ピエール・バルーの元妻の歌唱による可愛い曲。邦題が“ベンチで、雨の中”。可愛くて雨のなかで聴いても空気変わります。ドミニク・バルーさんが歌っている曲はこの世に4曲しかないのですが、そのうち1曲をまだ聴けていません。持ってる人いたら連絡ください。

木津毅

1. Tom Waits - Downtown Train
2. Bonnie “Prince” Billy - Raining in Darling
3. The National - England
4. R.E.M. - I’ll Take The Rain
5. Bruce Springsteen - Wreck on The Highway
6. Rihanna - Umbrella feat. JAY-Z
7. Bob Dylan - Buckets of Rain
8. Buddy Holly - Raining in My Heart
9. 尾崎紀世彦 - 雨のバラード
10. BJ Thomas - Raindrops Keep Fallin’ on My Head

 必ずしも雨は降っていなくてもいい。でも雨の歌では歌い手の心は濡れていてほしい……と思って選んだら、(リアーナも含めて)どこぞのおっさんのような並びになってしまいました。けれども雨の歌は、中年がむせび泣くようなウェットな感覚をかばってくれるのでこれでいいのです。おそらく。「ダウンタウン・トレインに乗れば 今夜、きみに会えるだろうか/すべての俺の夢が まるで雨のように ダウンタウン・トレインに降り注ぐ」……。

竹内正太郎

金延幸子 - 空はふきげん

ブレイディみかこ

1.The Beatles - Rain
2.The Pogues - A Rainy Night In Soho”
3.Eva Cassidy - Over The Rainbow

 天候に恵まれない国に住んでいると、いつの間にか自分も人と会った時にまず天気の話から入る。という悪癖を身に着けていることに気づきますが、いつも天気について文句を言っているUKの人間にジョン・レノンが喝を入れたのが “Rain”。「雨だろうが晴れようが心の持ちよう一つだ」という歌詞はブリット・グリットの真骨頂。サウンド的にも、ビートルズはオアシスがやってたCHAVアンセム路線をオアシスよりうまくやることができたバンドだったとわかります。
 “A Rainy Night In Soho”は、”Fairytale of New York”の雨の日版。これを聴くと、詩人としてのニック・ケイヴは秀才で、シェーン・マクゴワンは天才なんだと思います。
 エヴァ・キャシディが歌った“Over The Rainbow”は、ただもう声のトーンが好きで。雨の多い英国では虹を見る機会も多く、従って願いをかけるチャンスも多いですが、一度も叶ったことはありません。

与田太郎

The Kinks - Rainy Day In June(1966 Pye Records)
The Pogues - A Rainy Night In Soho(1986 Stiff Records)
The Men They Couldn’t Hang - Rain, Steam & Speed (1989 Silvertone)

 今年の梅雨はW杯に釘付けで過ごします。どうでもいいことですが、The Men They Couldn’t Hangのこのアルバムはローゼズの1stと同じ年に同じレーベルから出ました。

GONNO

Frankie Knuckles - Rain Falls
Jon Hopkins - Colour Eye
山下達郎 - スプリンクラー
Torn Hawk - Money Becomes Only Itself
Suzanne Kraft - VI
Jon Hassel - Rain
Central Line - Waling Into The Sunshine

ダエン(duenn label)

John Hassell_Brian Eno - Delta Rain Dream
Steve Reich - It's Gonna Rain
Ellen Allien - Sun The Rain(Tim Hecker Remix)
Bebu Silvetti - Spring Rain
The Beatles - Rain
西田佐知子-アカシアの雨がやむとき

 雨の中では霧雨が好きです。そんな雨好きアンビエントっ子な私がセレクトしてみました。よろしくどーぞ!

大久保潤

The Beatles - Rain
Burt Bach - Raindrops Keep Fallin' On My Head

 いずれも少年ナイフのカヴァーが好きです。

橋元優歩

1. Julianna Barwick & Ikue Mori - Rain and Shine at the Lotus Pond
(‎FRKWYS, Vol. 6) - Rvng Intl.
2. Baths - Rain Fall (Cerulean) - Anticon
3. Serengeti & Polyphonic - My Patriotism (Terradactyl) - Anticon
4. 多田武彦 - 雨
5. Pavement - Carrot Rope - Domino
6. Anna Ternheim - Summer Rain (alternate take feat. Nina Kinert, Ane Brun, First Aid Kit and Ellekari Larsson of The Tiny)

松村正人

Rain Tree Crow - Rain Tree Crow - Virgin / 1991
Stanley Cowell - Musa - Ancestral Streams - Strata East / 1974

 レインツリーは別名モンキーポッドといい、雨を予知し雨が来る前に葉をたたむのでこの名前になったらしいが、ほんとうは陽の光に反応し明るいと葉を開き暗くなると閉じる。アメリカネムノキともいい、大江健三郎の連作短編の題名にも同じことばがあるけれどもそちらは想像上の「雨の木」だろう。それより日立製作所の「この木なんの木」の木といったほうが通りがいいだろうか。
 レイン・トゥリー・クロウは1991年に結成した、デヴィッド・シルヴィアン、ジャンセン、バルビエリ、カーンからなる、つまりジャパンのリユニンであり、アルバム1枚で終わってしまったが、一昨日のような梅雨寒の日にこの冷たく湿った彼らの音楽はしっくりくる。小糠雨にふさがれた昨日のような日は雨の曲ではないけれどもスタンリー・カウエルの絹でできた驟雨のようなソロ・ピアノをいつまで聴いていたいが、私は梅雨のはっきりしない天気は好きではない。極寒か酷暑かどっちかにしてほしい。

三田格

1. フィッシュマンズ - Weather Report - Polydor(97)
2. Missy Elliott - The Rain(Supa Dupa Fly) - Elektra(97)
3 . Gazebo - I Like Chopin(小林麻美/雨音はショパンの調べ) - Baby Records(83)
4. Madness - The Sun And The Rain / Stiff Records(83)
5. Rihanna - Umbrella - Def Jam Recordings(07)
6. The Rolling Stones - She's A Rainbow - London Records(67)
7. Cornelia - Stormy Weather - Exceptional Blue(12)
8. Jon Hassell + Brian Eno - Delta Rain Dream - Editions EG(80)
9. Howard Devoto - Rainy Season - Virgin(83)
10. Ashra - Sunrain - Virgin(76)
11. ヤプーズ - 大天使のように - テイチクエンタテインメント(88)
12. Roxy Music - Rain Rain Rain - Polydor(80)
13. J.D. Emmanuel - Rain Forest Music - North Star Productions(81)
14. 大沢誉志幸 - そして僕は途方に暮れる - Epic/Sony(84)
15. Madonna - Rain - Maverick(93)
16. Normil Hawaiians - Yellow Rain - Illuminated Records(82)
17. 川本真琴 - 雨に唄えば - Antinos(01)
18. John Martyn - The Sky Is Crying(ElmoreJames) / Independiente(96)
19. 山下達郎 - クリスマス・イブ - ワーナーミュージック・ジャパン(83)
20. Felix Laband - Rain Can - African Dope Records(02)
次 RCサクセション - 雨の降る日 - ユニバーサルミュージック(13)
or Felt - Rain Of Crystal Spires - Creation Records(86)

 年間で300から400近くの映画を観るけれど、そのうち50本は邦画に当てている(週に1本ということですね)。洋画は10本観て5本が外れ だと感じ、邦画は10本観て9本が外れだと感じる。この時に覚える深い脱力感を乗り越えてなお前進できるネトウヨが果たしていまの日本にどれだけ いるだろうかと思いつつ、それでも僕が邦画を観ているのはもはや怖いもの見たさとしか思えず、なかば平衡感覚を失いながら「『女子ーズ』観た?」 などと木津くんにメールしてしまう(返信は「そんなコワいもの観ませんよー」という常識ライン)。そのようにして右翼も遠巻きにさせる邦画界では ありますが、ひとつだけ名作の法則があります。洋画だと食事のシーンがよく撮れている作品はたいてい名作だと言われるように(粉川哲夫しか言ってない?)、邦画は「雨」がよく撮れている作品は名作の可能性が高く、最近だと、あまり好きな監督ではなかったのに(つーか、『ユリイカ』を観て3日も偏頭痛で寝込んだというのに)青山真治監督『共食い』が非常によかった。ATGのような憂鬱を表現する「雨」ではなく、激動を伝える「雨」が よく撮れていて、その意味が最後にわかるところも驚きだった。……しかし、それにしても、ほかにサンド、デムダイク・ステア、レインコーツ、カン、 ユーリズミックス、クインシー・ジョーンズ、チャンス・ザ・ラッパー…と、レイン・ソングはあり過ぎでしょ〜。マニック・ストリート・プリー チャーズによる『雨にぬれても』のカヴァーは途中までペイル・ファウンテインズにしか聴こえないのはご愛嬌。

シノザキ サトシ(禁断の多数決)

The Cascades - 悲しき雨音
武満徹 - Rain Spell
Ashra - Sun Rain
Ellen Allien - Sun the Rain
Gene Kelly - 雨に唄えば
Madonna - Rain
谷山浩子 - 催眠レインコート
Jon Hassel and Brian Eno - Delta Rain Dream
B・J・Thomas - 雨にぬれても

高橋勇人

1. LIBRO - 雨降りの月曜
2. Don Cherry - Until The Rain Comes
3. Pharaoh Sanders - After the Rain
4. MarkOne - Rain Dance
5. Little Dragon - Stormy Weather
6. Jephe Guillaum and Joe Clausell - The Player Acoustic Mix-
7. Pinch - Angels in the Rain
8. Nick Cave & The Bad Seeds - Ain’t Gonna Rain Anymore
9. Leonard Cohen - Famous Blue Raincoat
10. Prince - Purple Rain

the lost club

the lost club - ”rain”

照沼健太

Beck - Mutations

しんしんと降る雨が、あきらめ、寂しさ、悲しみ、心地よさといったさまざまな色に染まりながら、やがて止んでいく。そんなアルバムだと自分では思っています(妄想)

白井 哲

荒井由実 - ベルベット・イースター

二木信

井上陽水 - 夕立

天野龍太郎

Burial - Dog Shelter
cero - 21世紀の日照りの都に雨が降る
Chance The Rapper - Acid Rain
Faust - It's A Rainy Day, Sunshine Girl
Randy Newman - I Think It's Going To Rain Today
Ray Charles - Come Rain Or Come Shine
Tom Waits - Rain Dogs
遠藤賢司 - 外は雨だよ
大瀧詠一 - 五月雨
テニスコーツ - 雨パラ

25年間生きてきて、雨というものの楽しみかたを僕はまだ持ちえていない。雨は大っ嫌いだ、不快だ。本もレコードも洗濯物もダメにしてしまうし。有史以前より雨という気象現象とつきあってきた人類が、雨への対策法としていまだ傘と雨合羽という原始的な道具を用いている、というのはなんて馬鹿げたことだろう! ……とりあえず僕は心底雨を憎んでいる(全身がすっぽり入るカプセルみたいなものがほしいなあ)。
昔のロックンロールやリズム・アンド・ブルースには雨についての歌って多いように思う。日本のフォークにも。ブリアルのトラックに聞かれるレコードのスクラッチ・ノイズはまるで雨の音みたいだ。ところで、ビートルズには「雨なんて気にしないよ」という“レイン”があるけれど、ローリング・ストーンズには雨についての歌ってなにかあったっけ……?

畠山地平

大滝詠一 - 雨のウェンズデイ

 1982年発売の大滝詠一のシングル『雨のウェンズデイ』。雨はウェンズデイ? 何故か腑に落ちるものがある。これが詩の持つ力なのかと納得していたのだけど、水曜日という名称からして、水という言葉が入っているではないか! まさか大滝詠一のオヤジギャクなのか。
 雨が降る海岸での男女の別れを歌った曲という事で、ここで描かれているシーンは有りがちなのだけど、どこか遠い昔に起きたことのようなそんな気がしてくる。大滝詠一の音楽はアメリカン・ポップスのものなのだけど、この歌詞の感性は万葉集の東人のような、そんな古来からの、そして貴族ではなく、土民たちの感性を感じてしまう。80年代に描かれる大滝詠一の愛はウクライナ問題、放射能、中国の海洋進出、集団的自衛権など世界や日本がシビアな状況になりつつあるいま、ある意味虚無感すら漂わせる距離を感じてしまうがゆえに、逆に心に響くのかもしれないと思った。

DJ Tomoharu - ele-king

3月中頃~4月にかけて、DJ NORIさんを迎えてのPropeller17周年記念WarmRoomをはじめ、大阪からMOLE MUSICミツキくんを迎えてのMoLe×MOLE、HIKARUさんYOGURTさんを迎えてのIVYIZM 7th ANNIVERSARY PARTYと素晴らしいDJの方達が福井でプレイするPartyが盛沢山です。よろしくお願いします。

2014/03/22(SAT) "Propeller 17th Anniversary" WarmRoom @Propeller Guest/ DJ NORI
2014/03/26(WED) MoLe×MOLE @Church Guest/ DJ Mitsuki (MOLE MUSIC)
2014/04/12(SAT) IVYIZM 7th ANNIVERSARY PARTY @Propeller GUEST/ DJ HIKARU, YOGURT
2014/04/19(SAT) @Propeller
2014/04/26(SAT) D&D @Casa
2014/05/05(MON) @Creme

2014.03 recent favorites


1
Ensemble Skalectrik - Trainwrekz - Editions Mego

2
Pierre Bastien - Pop - Rephlex

3
Charles Hayward - Smell Of Metal - Kemal

4
Valentin Stip - Sigh - Other People

5
Counter Silence - Knowing the Right Question to Ask - Subexotic

6
Afterhours - Lowlife - Not Not Fun

7
Skymark - Primeiras Impressoes - Modern Sun

8
O1O - Futurespective - Further

9
Rainer Veil - New Brutalism - Modern Love

10
Untold - Black Light Spiral - Hemlock

COGEE (BLACK SHEEP / SMASH YOUR FACE) - ele-king

BLACK SHEEP主宰。SMASH YOUR FACEのギタリスト。
https://blacksheepxxx.com/

【DJスケジュール】
11/9(fri)@吉祥寺CHEEKY
11/23(sat)@代官山AIR「MARK.E JAPAN TOUR」
11/30(sat)@半蔵門ANAGURA「BLACK SHEEP vol58」
12/7(sat)@新潟ARK
12/22(sun)@名古屋decibel&KALAKUTA DISCO
「BLACK SHEEP 名古屋出張編」

【LIVEスケジュール】
11/17(sat)@下北沢THREE「LESS THAN TV presents METEO WINTER」
11/30(sat)@三軒茶屋HEAVEN'S DOOR「三茶HxC vol.111」

お金では買えない価値のある音源10選


1
切腹ピストルズ - 流出音源その一
https://seppukupistols.soregashi.com/01_lostvirgin.html

2
切腹ピストルズ - 流出音源その二
https://seppukupistols.soregashi.com/02_lostvirgin.html

3
RISE FROM THE DEAD feat UG KAWANAMI
https://soundcloud.com/ug-kawanami/rise-from-the-dead-feat-ug

4
RISE FROM THE DEAD feat UG KAWANAMI - Black Funk Ill Kill(Original Version)
https://soundcloud.com/ug-kawanami/r

5
TELEPATHY(EYE&UG KAWANAMI) - Secret(Inst.)
https://soundcloud.com/ug-kawanami/telepathy-secret-inst

6
CMT - EYESCREAM MIX
https://soundcloud.com/sbmrecordings/eyescream-mix-mixed-by-cmt

7
DJ HIKARU - Beats in Space MIX
https://www.beatsinspace.net/playlists/439

8
MOODMAN - DJ Mix Show“MOODMANOW ”0912 from VINCENT RADIO
https://soundcloud.com/vincent_archives/moodmanow_0912

9
DETOXX - DOMINGO from himcast
https://www.himcast.com/2013/06/15-domingo-detoxx-blacksheep-629.html

10
LIL'MO FO / SEP 5TH 2013 AT GARAM BAR TIME
https://soundcloud.com/lil-mofo-business-4/sep-5th-2013-lil-mofo-at-garam

Chart - JET SET 2013.02.25 - ele-king

Shop Chart


1

Crystal - Vanish Into Light (Crue-l)
新次元を切り開いたシューゲイズ・ピアノ・ハウス傑作との呼び声の高かった前作に続き送る本作では、キーボーディスト高野勳を迎えた高揚感と飛翔感がソリッドかつドリーミーに同居させた、シューゲイズ・バレアリック・ハウス大傑作!

2

Crue-l Grand Orchestra Vs Tbd - Barbarella's Disco (Crue-l)
Justin Van Der VolgenとKenji Takimi本人は勿論、Dj Harveyや、Eric Duncan、Dj Kent、Dj Hikaruなどが軒並みパワー・プレイすることで絶大なリアクションを獲得する話題作が遂にリリース!

3

Videotapemusic - Slumber Party Girl's Diary (Rose)
2012年リリースの1st.アルバム『7泊8日』に収録された大本命曲が、なんとRose Recordsより7インチ・シングルとして登場。

4

Inc. - No World (4ad)
昨年ヒットしたEp盤「3」も最高だった、4adが送り出すL.a.の兄弟ユニット、Inc.。これぞ、2013年モードなインディ・シンセ・メロウ・ヤング・ソウル全11曲!

5

Autre Ne Veut - Anxiety (Software)
Oled English Spelling Beeからのデビュー・アルバム、Hippos In Tanksからの12インチもヒットしたブルックリンのソロ・ユニット、Autre Ne Veutの傑作セカンド・アルバム!

6

Falty Dl - Straight & Arrow - Four Tet Remix (Ninja Tune)
ご存じNinja Tune/Planet Muが誇るNy在住の美麗Ukベース人気者Falty Dlがジャズ薫るコードワークを散りばめて完成させた、Swindle越えアーバン・ベース名曲が限定で再リリース!!

7

八代亜紀 - 夜のアルバム (Universal)
デビューから42年目を迎えた今年、ルーツであるクラブ・シンガー時代に思いを馳せ、ジャズ・スタンダードや歌謡曲等の「流行歌」をジャズ・アレンジでカヴァー。演歌の八代亜紀とは一味もふた味も異なるスタイルを披露します。

8

Eddie C - Country City Country (Endless Flight)
リードシングル"La Palette"でも幅広い音楽知識~造形の片鱗をみせつけ、次世代ハウスシーンを担うべく好手としての貫禄を見せつけるEddie Cによる渾身のフルアルバムが国内名門"Endless Flight"より待望のリリース!

9

Maxmillion Dunbar - House Of Woo (Rvng Intl.)
Future Timesからのリリースでも絶大な人気を誇るAndrew Field-pickeringによるプロジェクトとしてお馴染みMaxmillion Dunbarによるフルアルバムが、Tim Sweeney主宰"Rvng Intl."より堂々の登場!

10

V.a. - Desmo Presents A L.a.s. (Desmo)
南米フォルクローレ・カヴァー音源を多彩なモダン・クラブ・サウンドでリミックス!!Mo' Horizons、Flevans、Jon Kennedy、Up, Bustle And Out、Orbなど超豪華リミキサーによる3枚組!!

ラウル・KとDub Struct #9のツアー日記 - ele-king

 Mr.Raoul K(以下、ラウル)との出会いは2年前、前回の〈eleven〉の「MONK!!!」に出てもらった時でした。
 もともとラウルを呼んだのは「MONK!!!」にふさわしいアングラでクールなトライバル系のDJということで「MONK!!!」を一緒にやっているトミオ君やあんなちゃんが提案してきたのだったと思います。彼の住むドイツでもベルリン以外はそうそう〈eleven〉や〈Liquid Room〉のようなオオバコはないらしく、そのときはえらく日本のパーティ・シーンを気に入った様子でした。また彼のアルバムのセールスの50%は日本におけるものだとも語っていました。

 ラウルとはそれからもちょこちょこカタコトの英語メールで連絡を取り合うようになり、自然とニュー・アルバムのリミックスをやってもらうことになりました。ラウルがリミックスしたデータを受けて、それにDUB STRUCTURE #9(以下、DUB ST#9)で上音を足して送り返してまたラウルがいじって......、というのを6回ほど繰り返していったなかで、「また日本に行きたい!」というラウルのジャパンツアーをコーディネートして、DUB ST#9も一緒に回ることにしました。次のアルバムのリミックスをしてもらう約束をして......。

■12月27 日
 ラウル到着の日。この日はELE-KINGの取材とDOMMUNE出演、さらに誰かがラウルをピックアップしホテルに案内するという複雑なスケジュール。ピップアップを誰かに頼もうにもこんな年末の平日にまともな人間が暇しているわけもなく、バンド内で一番運転に定評のあるAraiを空港に行かせ、残りの3人は取材の集合時間を守る係をやることとなった。日本では遅刻は御法度なのだ。前回ラウルが日本に来たときは風邪を引いていてものすごく元気がなかったためすごくナイーヴな人に見えたのだが、今回は体調が良かったため別人のように陽気でピースなナイスガイだった。驚くことに前回会ったほとんどの人の顔と名前を覚えていた。

11:00
ラウル成田着。ベース新井がお迎えにいく。
14:00 
渋谷でDUB ST#9のELE-KING取材。
Araiが成田からそのまま取材現場で合流する予定だったが、結局ラウルが入国に手間取ったためにAraiは現場入りが遅れ3人で取材の大半を受ける。インタヴューは和気あいあいと楽しい感じで進む。
16:00
取材を無事終え渋谷TEQNIQUEでラウルと2年ぶりに再開する(この後ラウルは東京にいる間は毎日TECHNIQUEに通うこととなる)。
ラウルを西麻布のホテルに一旦チェックインさせ、夜の現場DOMMUNEへ。
この日はラウルとのツアーで回る「MONK!!!」とTREE HOUSEというふたつのパーティのプレパーティということで、ラウル、DUB ST#9、UNIVERSAL INDIANNというメンツでDOMMUNEのライヴ・ストリーミングに出演。実はラウルのレコードバッグが誤ってロンドンに送られてしまったために、手持ち鞄に入っていたレコードとその日、TECHNIQUEで買ったレコードのみでプレイしていた。すごい。会場の熱気もなかなかでラウルもとても上機嫌であった。そしてトリのUNIVERSAL INDIANNこと、あつおさんのプレイもやばかった。やられた。
25:00
恵比寿の24時間営業の中華料理屋へ「MONK!!!」のメンバーとDUB ST#9のメンバーでラウルの歓迎会。ラウルは白米が大のお気に入りということが判明。「ベジタリアンだったり何か苦手な食べ物があるとかないの?」ときくと「No, I open all」だって。これが彼の基本スタンスであるようだ。朝4時頃解散。明日は寿司を食おう!と言って別れる。

■12月28日
17:30
大寝坊。昼に連絡すると言って既に日は暮れている。本気でこういうときは死にたくなる。ラウルが時間にうるさくない人であることを祈りつつ電話すると上機嫌でTECHNIQUEにいるとのこと。
18:00
TECHNIQUEでラウルと合流して一緒にDIG。
19:00
DUB ST#9メンバーと友だちと合流し都内のそんなに高くない寿司屋へ。貧乏なのでちょっとケチってしまったため寿司も微妙でちょっと後悔。ラウルは日本酒を気に入ってくれてぐびぐび熱燗を飲んでいた。結局熱燗を20合いただきました。 
21:30
みんなで我が家へ移動し、この日買ったレコードでラウルがDJをしてくれる。ラウルは英語が上手くしゃべれない自分の言葉を何度も聞き返して必ず言いたいことを理解するまで話を聞こうとする。この姿勢は日本人が見習うべきところだなと思った。そのおかげで英語で話すことが苦でなくなって来た。
24:00
解散。

■12月29日
 ラウルこの日は京都のパーティ・オーガナイザーが案内したいということで昼間は東京タワーにふたりでいっていたのだが、オーガナイザーが東京タワーに上らないかと進めたら「俺はいいや」とのことで、結局東京タワーに関心を示さず、すぐにTECHNIQUEへ移動することになった。

19:00
TECHNIQUEでラウルと合流。DIG。
20:00
ラーメンを食べる。ラーメンは今までで一番のヒットらしくご満悦であった。
21:00
都立大学のスタジオでバンドのリハーサルの予定だったのでラウルも飛び入りで参加。5人でセッションをしたりDJをしたりして楽しむ。ラウルがノリノリでそれがみんなにも波及してかなり調子がよい。
25:00
ラウル帰宅。ここから翌日の「MONK!!!」のリハーサルがスタート。かなり煮詰まり結局朝の9時まで延長してリハーサルを行う。
33:30
帰宅。

■12月30日
 この日は「MONK!!!」。これは僕らの2nd アルバムのリリース・パーティでもあり、またはるばるやって来たラウルのためにも(もちろん〈eleven〉に来てくれるみんなのためにも)自分たちのいまの力で用意出来うる最高のパーティをという精神で半年くらいずっと準備して来たもの。
 ふたつのフロアは常にダイナミズムで満たされていて、B2ではTOMIO~HIKARU~ALTZと縦横無尽なグルーヴでグリグリフロアを踊らせたところで僕らがバトンを渡してもらうというなんとも贅沢な展開。その後はMr Raoul KとCMTがストイックでクールかつDEEPな展開でコアなお客さんがだんだん壊れていく様が最高に愉快。視覚的にもDJブースの前で行われたKLEPTMANIACがブラックライトを用いたライブペイントと、ステージからのyamatくんのクレイジーな自作のレーザーシステムが幻覚的な効果を出していて、結果お客さんは色んな方向を向いて踊っていた。
 上のフロアはとにかくハウスで実験的なメンツで、それぞれが全く異なる音世界を持ちつつもハウス実験精神という数珠でつながっているようだった。
 〈eleven〉のラウンジは低音があまりないので少し心配していたが持って来たウーハーがいい感じに機能していてしっかり踊れるラウンジになっていた。
 お客さんも20代前半から40代まで幅広くいて、よくクラブで見かける人やDJの人もいれば普段はあまりクラブに行かない後輩の学生たちもいるし、外国人の人も結構いるしとにかく人種がごちゃ混ぜでおのおの自由に会話や音楽を楽しんでる感じ。いい感じだ。

 この日も昼間ラウルはTECHNIQUEにひとりで行っていた。

■12月31日
 結局打ち上げ等もありつつ家には帰らずにそのままAraiと年越しパーティ中の〈eleven〉に戻って年越し。猛烈な眠気に襲われフロアの後ろで寝ていると案の定、注意され店を出る。ふたりで麻布ラーメンに入るも意識が混濁してきたため解散し帰宅。そういえばラウルも〈eleven〉にくると言っていたが来なかった(Solfaにkuniyukiさんのライヴを観に行っていたらしい)。

朝4時就寝。

■元旦
 夕方に起床しとりあえず家族に挨拶まわり。おばあちゃんに会いに藤沢まで行く。その後は明日明後日と大阪京都でのパーティに出るため準備をしたのち深夜には出発しなければならない。

■1月2日
 午前4時、DUB ST#9のメンバーと一緒に行く音楽狂の友だち5人、ラウルの総勢10名が車2台で大阪に向け出発する。とくにトラブルもなく順調に進み昼頃には大阪に到着。バンドのリハーサルが16時からなのでそれまでみんなでミナミを散策する。
 大阪は昨年のクラブ一斉摘発によって深夜営業が出来なくなってしまったためにパーティは夕方からスタートするらしい。べつに夜中じゃなくてもええじゃないかという、たくましい大阪の音楽人にリスペクトしたいと思います。そして書かないけどすごい時間までやりました。

 ちなみにこの日のDJは関西のゴッドマザーと呼ばれているYA△MAさん、powwowでもおなじみのDNT、Cross Breadというアシッド・ハウスを生で演奏するようなちょうかっこいいユニットをやってるRie Lambdollさんという個人的には感動もののメンツで、お客さんもこんな状況でも来る熱い人達なので温度高めのあったかい、いいパーティでした。ラウルが「大阪は人が最高だ。だから大阪はパーティも最高なんだ」と終わってから熱弁していたなあ。
 パーティが終わるとホテルが用意されているラウルはホテルへ、それ以外はスーパー銭湯に行き仮眠をとる。3時間ほど寝て正午には京都に出発しなければならない。京都はなんと昼の3時からパーティがはじまるのだ!

■1月3日
 正午にラウルをホテルで拾い京都へ出発する。昨日が激しかったのでみんなお疲れの様子。正月の京都は人でごった返していて交通渋滞も激しいので余計にみんな疲れたみたいだ。

 今日のパーティは「393production」という同世代くらいの人たちがやってるパーティで場所はクラブではなくブリティッシュパブで行われた。ブリティッシュ・パブだと照明も明るいし寛げる場所が多いのもあって音楽メインというよりパーティ・メインという感じ。
 若いお客さんが多めの印象。ドイツのケムニッツという田舎町のパブでやった時の「地元の若者大集合!」って感じと似ていて面白い。
 夜中の3時頃会場を出て東京に向かう。明日は僕らが渋谷〈KOARA〉で毎月やっている「Armadillo」だ。

■1月4日
 昼過ぎに東京に着く。この日からラウルはうちに滞在することになった。うちに滞在する間ラウルにはいろいろなことを教えてもらった。そのなかで一番印象に残っているのは「すべての音楽にオープンでいることが大切だ。ジャンルにとらわれてテクノしか聴かないとかポップじゃなきゃ聴かないとかそんなのFUCKだ。I open allだ」みたいなことを言っていたことだ。他にもいろいろ教えてもらったけどいまは思い出すのが面倒くさい。
 この日の「Armadillo」は大爆発できた。レジデントDJみんな調子良かったし正直DUB ST#9もラウルもこのツアーで最高のプレイをすることができて、それを受け止めて返してくれるお客さんがいた。途中からはDJや僕たちが客を煽るんじゃなくてお客さんがDJやDUB ST#9を煽るという状態。そしてラウルはこっちが煽れば煽るだけいいプレイで返してくれる本当に調子のいいやつだった。東京のヴァイブス響いてくれたみたいだ!

■1月5日
 ラウル最後のGIGであるUNIVERSAL INDIANN主催のTREE HOUSE@宇都宮SOUND A BASE NEST。この日はDUB ST#9は出演せずラウルだけ出演だったが、メンバーと「Armadillo」のo!0も同行。朝パーティが終わったら直接成田にラウルを送らないと飛行機に間に合わないのだ。
ライヴがないため遊ぶ気はまんまん。

 〈NEST〉は宇都宮というクラブというイメージのあまりない土地柄からは想像も出来ないくらいしっかりとしたクラブで、日本の底力を見せられた気がした。
 DJもDEEPな選曲でいい感じ。まだこの土地にはシーンが根付いていないというような話も聞いたが、その分スキモノたちが集まっているようでDEEPな曲をおのおのじっとりと楽しんでいる感じ。
 ラウルもそれを感じ取ったか最初の30分はいままでになくスペーシーな感じでジワジワと展開させていた。それからすこしテンションをあげて宇都宮ピーポーを踊らせていた。そしてラウルからのUNIVERSAL INDIANNことあつおさんという流れ。初日のDOMMUNEもそういえばこれだったなー。UNIVERSAL INDIANNに始まりUNIVERSAL INDIANNに終わったこのツアー、やっぱりあつおさんはすごいDJでした。ごちそうさま。

■1月6日
 パーティが終わると宇都宮から成田へラウルを送り出しに直行。無事に時間に余裕を持って着いて荷物を預けて別れを惜しもうとしたところで問題発生。荷物が5KGオーバーしているために100ドル払わねばならないらしい。そりゃ毎日TECHNIQUEで買い物してたらそうなるわー。

 これに納得出来ないラウル、何をはじめたかというと、レコードバッグを開いてレコードのジャケットを抜いてまさにVinyl、中身だけバッグに詰めはじめました。そして、それでも足りないと分かると持って来た服を全部おまえたちにやるといいだしました。
 最終的にラウルの荷物はレコードの中身と日本で気に入ったセブンイレブンの辛口イカ焼きというお菓子だけという状態で帰って行きました。
「本当に価値のある物にだけ金を払え」と勝手に解釈しました。

 本当にいいやつだったラウル。いろいろ教えてくれてありがとう!


Chart JET SET 2012.12.03 - ele-king

Chart


1

Slow Motion Replay Presents Dunk Shot Brothers - Love Me Tender Ep (Smr)
早くも、HikaruやMr.Melody、やけのはら等がプレイするなど、前作同様のヒットを予感させるエディット集が到着しました。様々なシチューエーションでばっちりハマるレコード・バック内のスタメン確定な1枚です。

2

Maxmillion Dunbar - Woo (Rvng Intl.)
Beautiful Swimmersの片割れにして、Future Times主宰者のAndrew Field

3

Greg Foat Group - Girl And Robot With Flowers (Jazzman)
これまでの作品は全て即完売で先行シングルも大ヒット。エレガントでサイケデリックでグルーヴィーな独自の世界を進化させた、待望のニュー・アルバムが遂にリリース!!

4

七尾旅人 - サーカスナイト (felicity)
2012年リリースの最新作『リトルメロディ』より名曲「サーカスナイト」がアナログ盤で登場!!名曲オリジナルVerに加えて、向井秀徳、Mabanua、Luvraw&btb、Grooveman Spotによるリミックスも収録!!

5

Will sessions - Xmas Break (Funk Night)
素晴らしく骨太な楽曲に加え、今回は赤と緑のラベルで完全クリスマス仕様です!!

6

Lusty Zanzibar - Empress Wu Hu Remixes (Glenview)
100枚限定で先行リリースされたVakula & Oeによるリミックスに加え、気鋭Volta Cabによるリミックス+オリジナル・トラックを追加収録した話題の一枚が到着。

7

Pepe California - Yureru - Dj Nozaki's Pure Pleasure Control Mix (10 Inches Of Pleasure)
Mick「Macho Brother」のカルト・ヒットも記憶に新しい"10 Inches Of Pleasure"から話題沸騰の新作第二弾が無事到着。2010年に自主レーベルからリリースされたPepe California最新アルバム『White Flag』収録曲をレーベル首謀Dj Nozakiがリミックス!!

8

Star Slinger - Ladies In The Back Feat Teki Latex (Pias)
フィジカル12"第1弾『Dumbin'』のメガヒットも記憶に新しいマンチェスターのStar Slinger待望のソロ第2弾には、シカゴのベース人気者Chrissy Murderbotによるジューク・リミックスも搭載です!!

9

Dntel / Herbert - My Orphaned Son - Die Vogel Remix (Pampa)
音響ハウス帝王Lawrenceのリリースでもお馴染み、天才Dj Koze率いる越境ミニマル・ハウス名門Pampaから、看板デュオDie Vogelと主宰による極上リミックスを搭載した特大傑作が登場です!!

10

Echocentrics Feat. Grant Phabao - Echocentrics Remixes (Ubiquity)
名門Ubiquityお抱えの人気バンドEchocentricsの1st.アルバム収録曲をGrant Phabaoがジャマイカン・リミックス!!

IORI - ele-king

IORI - NEXUS
BITTA

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 太陽と海、そして米軍基地を内包し、本土とは異なる独自の歴史と文化が広がる沖縄は、その昔から独自のディスコ・カルチャーが育まれてきた地としても知られている。それは沖縄を代表するDJ、クリエイターであるTAKUJI a.k.a. GEETEKが作品で展開している「沖縄のバレアリック・フィール」と評される独特な折衷性からも意識させられることではあるし、DJ HIKARUやFRAN-KEYといったDJが移住したことで近年の沖縄シーンそのものもますますユニークなものになっているように感じられる。
 そんな2000年代後半の沖縄から、イギリスやドイツ発の作品リリースを通じて、急速にその名前が知られるようになったのがIORIだ。テクノやダブ、アンビエント、ドローンを溶かし込んだディープでストイックなトラックを繊細なタッチで空間的に鳴らすその作風は〈フューチャー・テラー〉を率いるDJ NOBUを虜にし、そのデビュー・アルバム『ネクサス』は彼が新たに立ち上げたレーベル、〈ビッタ〉の第1弾としてリリースされたばかり。そして、というか、やはりというか、沖縄の深海を思わせる音楽世界のさらに奥底には、彼がたどってきた驚くべき音楽遍歴が隠されていたのだった。

ニューヨーク滞在中に「ここで得たものを持ち帰って、沖縄でやりたい」っていう気持ちが芽生えて、帰国してからいままでずっと沖縄なんです。DJとしては、渡米前から火の玉ホールの第4火曜日に当時の沖縄で唯一のディープ・ハウス・パーティを8年間続けて......。

個人的に、IORIくんのことを知ったのは2008年にロンドンのサイト、ディープフリークエンシーではじまった不定期オンエアの番組「イオリ・ギャラクシー」がきっかけだったりするんですけど、最初はロンドン在住の方だと思っていたんです。

IORI:ははは。沖縄在住なんですけどね。でも、ロンドンやニューヨークとの絡みもあったりするから、わかりにくいといえば、わかりにくいですよね(笑)。

そのあたりのことを整理しつつ、お話をうかがいたいんですけど、沖縄に生まれ育ってたIORIくんがDJをはじめたのは2000年なんですね?

IORI:そうです。高校1年生のとき、那覇の国際通りにとある女の人がやってるアクセサリー・ショップがあって、学校帰りに友だちと買い物がてらたむろすようになって。そのお店にはターンテーブルやレコードが置いてあって、いつも面白い音楽がかかっていたので、その女の人といろいろ話すようになって、ハウスからアシュラみたいなジャーマン・ロックまで色々教えてもらったり、連れていってもらったパーティでいろんな沖縄のDJを紹介してもらったんです。

16歳で? それはかなりの早熟ですねー。

IORI:それで、雑誌『リミックス』の別冊で、ラリー(・レヴァン)が表紙の『ハウス・レジェンド』を貸してもらって、そのディスク・ガイドを参考に、レコードを集めるようになったんです。あと、僕には10歳上の姉がいるんですけど、音楽好きで、DJと付き合ったりしていたので、家にミックステープがたくさんあって、ヒップホップにハウスが混ざってるやつとか、フランキー・ナックルズのDJミックスとか、そういうテープから受けた影響も大きかったですし、そういう音楽体験があったからこそ、最初から特定のジャンルに限定せず音楽を聴くことができたんです。

当時の沖縄のクラブ・シーンはどういう状況だったんですか?

IORI:当時、那覇のクラブといったら、アンダーグラウンドな曲がかかる火の玉ホールがメインで、自分もよく遊びに行ってたので、レコード買ったり、遊んでいるのも知ってた店のオーナーから「学校を卒業したら、DJやれば?」って。だから、2000年、19歳の時に火の玉ホールで初めてDJをやらせてもらったんです。でも、沖縄って、地域によって色が違うんですね。那覇と、そこからちょっと上にいった沖縄市コザでも音楽性が違うし、92年に来沖したフランソワ(・ケヴォーキアン)とラリーの「ハーモニー・ツアー」もパーティをやったのもコザだったんですね。

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本格的にやりはじめたのはここ3年くらいですよ。それ以前、20歳くらいの頃にMPC2000とシンセを買って、MPCで作ったビートにシンセを被せたチープなハウス・トラックを作ってみたこともあるんですけど、機材の使い方が難しくて、のめり込めなかったんですね。

そして、2000年にDJをはじめて、その3年後に早くもニューヨークへ渡ったんですよね。

IORI:そうですね。まず、17歳の時にデヴィッド(・マンキューソ)が初めて沖縄でプレイしたんですけど、そのパーティへ遊びに行ったら、自分が聴いてるレコードの音が格段に違う鳴りだったことに最初の1曲めからぶっ飛んだというか、それ以前の夜遊びでは味わったことのない、ものすごい衝撃を受けたんです。で、その2年後にまたデヴィッドが来たとき、そのパーティをスタッフとして手伝っていたので、いっしょにご飯を食べたとき、「ニューヨークに行きたいんです」って話をしたら、「いつでもおいで」って。だから、その翌年、まずは旅行でニューヨークに行ったんですけど、行く前に当時彼のマネージャーだったタケシさんっていう日本人を通じてメールで連絡したら、スムーズに2週間泊めてくれたんです。で、その翌年の2003年に今度は向こうの大学に行く勢いで、長期滞在するためにニューヨークへ行ったんですけど、その時、「家が見つかるまで泊まっていいよ」っていう話から「部屋が空いてるから、ここに住めばいいんじゃない?」ってことになったんです。

そうやって気軽に出かけていくIORIくんの行動力もスゴいですけど、IORIくんを「住んでいいよ」って気軽に受け入れるデヴィッドも懐の広さもまたなんともはや。そして、もちろん、彼といっしょに生活しながら、色んなことを教えてもらった、と。

IORI:そうですね。もちろん、音楽が好きで来たことはデヴィッドも知っていたので、彼がパーティをやるときに手伝うようになったり、いっしょに生活するなかで、いろんな部分で影響されましたよね。ただ、彼は自分の家に機材を全部置いているわけでもなければ、僕が彼といっしょに住むまで、オーディオもつながれていなかったし、普段は一日じゅうラジオを聴きながら、パソコンで世界中の人とやりとりをしている人でした。そんななか、特に印象に残っているのは、レコードのコンディションに対する神経質なくらいの気の使い方であったり、サウンドシステムに対するきめ細かさ。僕は彼と同じレコード、同じサウンドシステムを扱っているわけではないんですけど、彼から学んだそうした心構えで、自分なりに音楽と接しているつもりです。

デヴィッドのレコードの扱い方というのは?

IORI:そんなに手入れはしてないんですよ。ただ、彼はすごいレコード針を使っているので、レコードのスクラッチ・ノイズを異常に嫌っていて、ちょっとでもスクラッチ・ノイズがあったらダメって感じなんですよ。だから、盤面には絶対に指紋をつけないというところからはじまって、レコードのインナースリーヴをすぐに取り出せる状態にはせず、ほこりが入らないようにしておくとか。彼にならって、僕もそうしていますし、彼からレコードを教えてもらったことはないんですけど、レコード棚を端から端まで見させてもらったり、彼はパーティでかけるレコードのだいたいの順番をあらかじめ決めるので、その曲順を書いた紙を「はい」って渡されて、僕がレコードをその順番に並べて箱に詰めたり。

でも、ニューヨークでのロフト体験やデヴィッドとの共同生活もありつつ、そのまま滞在せず、1年後には沖縄に帰られたんですよね?

IORI:そうなんですよ。ニューヨーク滞在中に「ここで得たものを持ち帰って、沖縄でやりたい」っていう気持ちが芽生えて、帰国してからいままでずっと沖縄なんです。DJとしては、渡米前から火の玉ホールの第4火曜日に当時の沖縄で唯一のディープ・ハウス・パーティを8年間続けて、平日でもコンスタントに5、60人入るような状況だったんですけど、火の玉ホールの移転を機にそのパーティも終わって。2008年から「ギャラクシー」っていうパーティをはじめて、今は桜坂にある"g"っていう小さいバーでやってるんですけど、そのパーティも今年で4年目になるのかな。

そして、2008年にロンドンのサイト、ディープフリークエンシーでそのパーティ名とも通ずる「イオリ・ギャラクシー」というネット・ラジオをはじめることになるわけですけど、沖縄にいながらにして、どういう経緯で番組を持つことになったんですか?

IORI:ニューヨークのロフトのパーティで知り合ったフランス人がロンドンに住んでいて、彼を訪ねてロンドンへ遊びに行ったんですよ。

あ、こないだ来日したDJのセドリック・ウーですか?

IORI:そうそう。その時、すでにセドリックもディープフリークエンシーで自分の枠を持っていて、ロンドン滞在中にゲストでDJさせてもらったんですよ。そうしたら、サイトのスタッフが気に入ってくれて、その翌月からレギュラーでやることになったんです。それまでオンライン・ラジオがどんなものなのかも知らなければ、もちろん、やったこともなくて、そのサイトも日本に帰って初めて見たっていうくらいだったんですけど、2時間の番組用の音源データを送って、最初の2年は月イチ、今は不定期でやってますね。

セドリックは要するにデヴィッドがロフトでパーティする時のスタッフというか、ロンドンのロフト・ファミリーですよね。

IORI:そう。ディープフリークエンシーをやってる同じフランス人のギヨームもロフト・クルーですし、同じくロフト・ファミリーでいまはイギリスに住んでるDJコスモもディープフリークエンシーで番組を持ってるんです。

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晴れてる日は外へ遊びに行きたくなって曲作りはできないんですよね。だから、雨や曇りの日なんかにこういうトラックのムードを自分のなかで作り出して、そこに没入しながら作ることが多かったですし、最初のコンセプトとして、作る音楽にあまり沖縄的なものを入れたくないとも思っていました。

IOR - NEXUS
BITTA

amazon

なるほど。世界がつながるロフト・コネクションがあるんですね。ちなみにIORIくんが音楽制作をはじめたのはいつからなんですか?

IORI:実は遅くて、本格的にやりはじめたのはここ3年くらいですよ。それ以前、20歳くらいの頃にMPC2000とシンセを買って、MPCで作ったビートにシンセを被せたチープなハウス・トラックを作ってみたこともあるんですけど、機材の使い方が難しくて、のめり込めなかったんですね。で、2008年にAbleton Liveっていうソフトを買って、そこからようやくですね。

でも、最初のシングル「ギャラクシーEP」がリリースされたのが2009年ですよね。作りはじめて1年くらいで作品リリース。しかもレーベルは、イギリスのレコード・ショップ、フォニカ主宰の〈フォニカ・ホワイト〉からっていうのも、これまたびっくりするような話ですよね。

IORI:そうなんですよ。音楽を作りはじめて、「これいいんじゃないか」って初めて思った曲をマイスペースにアップしたら、フォニカのスタッフがそれを聴いてくれてリリースにいたったという。で、その後の(ドイツのレーベル)〈プロローグ〉からのリリースもマイスペースがきっかけなんです。〈プロローグ〉もフォニカが出したいと言ってくれた曲をいいって言ってくれたんですけど、「もうフォニカからのリリースが決まってる」って答えたら、「じゃあ、デモ送って」って。

5月にリリースされたIORIくんのファースト・アルバム『ネクサス』に収録されている"ギャラクシー"の完成度の高さを思えば、そのエピソードも納得できるんですが、まさかマイスペースがきっかけとは驚きました。でも、お話をうかがってきたように、IORIくんのルーツはハウスやディスコ、ロフトだったりするはずなのに、その後のシングルやそれらトラックを収録した『ネクサス』を聴くと、テクノだったり、ドローン、アンビエントだったりするところが頭のなかでぱっとは結びつかないんですが。

IORI:でも、実はそういう音楽も昔から聴いていたんですよ。例えば、ベーシック・チャンネルだったり、アンビエントやマニエル・ゲッチングみたいなものまで、そういう陶酔して聴ける音楽も昔から大好きでしたし、ちょうど、"ギャラクシー"を作りはじめる前の2008年くらいから、テクノっておもしろいなって思うようになって、ベルグハインの存在を知ったのもその時期だし、自分が好きで買ってたレコードをチャートに挙げていたNOBUさんに気持ちが近づいていったのも全部同じ時期なんですよね。そして、「ギャラクシー」ってパーティにしてもいままでのソウルフルな部分ではなく、ストイックなテクノを主体とした内容を考えてはじめましたし、制作する音楽も自然とそういうものになっていって。

NOBUくんと実際に会ったのは?

IORI:沖縄のビー・グリーという箱と光さんがNOBUさんを招いてパーティをしたときなので、2年くらい前ですね。それ以前にも違う人が呼んで沖縄に来てるんですけど、その時のNOBUさんはまったく違うスタイルでディスコとかかけていたし、面識もなかったんですけど、2年前にいっしょにDJをやったり、話したりして意気投合して、去年、千葉のフューチャー・テラーにも呼んでもらったんですけど、フューチャー・テラーは......最高でしたね(笑)。うん、ひとつの遊びとして、ホントおもしろかった。僕はつねにおもしろい方向に向かっていきたいですから、自分のなかにはぜんぜん壁がないし、そういう壁を取っ払っていくのが僕たちの役目の一部でもあると思うので、そこは意識もしつつ、自然にやっていることだったりもしつつ。

そして、この3年でリリースしたのが17曲のオリジナルと2曲のリミックス。非常にハイペースで音楽制作に取り組まれていて、『ネクサス』はそのうちの7曲とオリジナル3曲をまとめた作品集になっています。

IORI:音楽制作は正解がない世界なので、いまも模索中というか、道のりは深いというか長いというか。そのなかでもがきながら作ったものを発表している感じですね。

沖縄という土地が音楽制作に与えている影響はご自分でどう思われます?

IORI:沖縄での音楽制作はいちばんフラットな気持ちで向かうことができるのかなって。それから沖縄での遊びは都会のそれとは全然違うので、ハングリーな気持ちも生まれるんだと思いますし、同時に沖縄ならではのレイドバック感もあるし。

これは個人の短絡的な意見ですけど、開放的な沖縄の環境を考えると、IORIくんのストイックでディープなトラックは異質なもののように感じるんですね。

IORI:それ、よく言われます(笑)。さすがに晴れてる日は外へ遊びに行きたくなって曲作りはできないんですよね。だから、雨や曇りの日なんかにこういうトラックのムードを自分のなかで作り出して、そこに没入しながら作ることが多かったですし、最初のコンセプトとして、作る音楽にあまり沖縄的なものを入れたくないとも思っていました。でも、そうかと思えば、まだ発表してない曲のなかにゆるいものもたくさんありますし、太陽があう曲もあったりして。

それは聴いてみたいですね。

IORI:じつは、この『ネクサス』の沖縄っぽくないジャケット写真には秘密があって、これは曇りの日にモノクロで木の表面を表と裏から撮ったものなんですけど、その木というのはCDのトレイ下にレイアウトしてあるヤシの木なんですよ。音楽それ自体には沖縄っぽさを入れなくないとは思っていたんですけど、このアルバムは南からの一発っていうことでもあるので、こういうアート・ワークにしたんです。でも、実は今年、沖縄を出て、ベルリンに行こうと思っているんです。これまで作品をリリースしてきたのも全部ヨーロッパのレーベルですし、ここから先のさらなる挑戦をベルリンの地でしてみたいなって。

最後に余談になりますけど、IORIって名前はぱっと見て、性別がわからないじゃないですか。ディープフリークエンシーでIORIくんのことを知った自分は、「もしかすると、IORIっていうのは、イギリス人が使ってる日本語の名前なのかな」って思ったんですよ。で、そういえば、IORIって漢字で書くと「家」とか「小屋」を意味する「庵」じゃないですか。だから、もしかすると、これ、「ハウス」って意味なのかなとへんに深読みしてみたりして(笑)。

IORI:ははは。それは完全な深読みでしたね。あ、でも、あるとき、デヴィッドと話してて、「漢字って意味があるんだろ? お前の名前はどういう意味なんだ? 」って訊かれて、「ハウスだよ」って答えて、その場が盛り上がったなんてこともありましたね。僕の漢字は「伊織」なんですが(笑)。

Shop Chart


1

J Dilla - Dillatroit Mahogani / US / 2012/7/1
超絶推薦盤!遂に入荷!<MAHOGANI>×J DILLA!!極上のJ DILLA未発表ビーツを軸に展開されるデトロイト・ブラックネス!KDJによるエクスクルーシヴ・エディット・テイクを収録。マスト盤。

2

DUMP - NYC Tonight Presspop Music / Zelone / US / 2012/6/30
パンク・ロッカーG.G.ALLINによる"NYC TONIGHT"を原曲の趣を一切排除し、まさかの極上ブリージン・ディスコへリメイクしてしまった最早カヴァーの域を超越した驚異的一枚。その JAMES MCNEW自身によるビートダウン・ブギーなディスコ・ロック・ヴァージョン、そして坂本慎太郎によるアコースティックな黄昏トロピカル・サマー・ヴァー ジョンの2テイク、共にインストも完備した鉄板内容で収録!

3

Richie Phoe - Echo Outernational Balance / US / 2012/6/28
レイドバックした極上メロウ・ダビー・ダウンテンポ山盛り収録!UK/ブライトン在住のクリエイターRICHIE PHOE絶品内容スギル傑作ファースト・アルバム!

4

Hikaru - High Psy (Limited Edition) Modulor Japan / JPN / 2012/6/20
※7inch付き限定盤今年も来ましたDJ HIKARUニュー・ミックス!万遍無い音楽愛に溢れた極上クロスオーヴァー・ミックス推薦盤!

5

Rodena Preston & The Voices Of Deliverance - Must Jesus Bare The Cross Alone (Joaquin Joe Claussell's Edit) Sacred Rhythm Music / US / 2012/6/30
JOE CLAUSSELL自身もパーティーの終盤など"ここぞ"というときにプレイしてきた至高のゴスペル・チューンRODENA PRESTON & THE VOICES OF DELIVERANCE"MUST JESUS BARE THE CROSS ALONE"を、DJユースに長尺化(オリジナルの倍近くとなる7分弱)したそのJOE CLAUSSELLエディットに加え、何とオリジナル・ヴァージョンもカップリング収録!

6

V.A. [Compiled, Edited And Mixed By The Idjut Boys] - 5 Years Of Claremont 56 Claremont 56 / UK / 2012/6/30
祝!<CLAREMONT 56>5周年!傑作リリース連発のレーベル音源をIDUJT BOYSが厳選セレクトしエクスクルーシヴ・エディット/コンパイル、そしてライブ・ミックスしてしまった豪華フルヴォリューム3枚組!

7

Mo-waii / DJ Shinya - Star House / Novo Samba NNNF / JPN / 2012/7/3
某プロデューサーの覆面プロジェクトMO-WAIIによる極上レイドバック・ダウンビート、そして前作に続く登場のDJ SHINYAによるブラジリアン・ブレイクビーツをカップリングしたリミテッド7"!

8

Almunia - Pulsar / The Magician Claremont 56 / UK / 2012/7/3
レーベル設立5周年を迎えた絶好調PAUL MURPHY主宰<CLAREMONT 56>が新たにフックアップするイタリアの注目バレアリック・デュオALMUNIA、昨年リリースの傑作アルバム「NEW MOON」に続く待望の新作12"シングル!

9

The Reflex - Re-Visions Vol.3 G.A.M.M. / SWE / 2012/6/27
<MOTOWN>を題材にしたTHE REFLEXによる好評「THE RE-VISIONS」シリーズ第3弾!STEVIE WONDER名曲郡の絶品リワーク/リエディット×3!

10

Slow Motion Replay Presents Dunk Shot Brothers - Love Celebration SMR / JPN / 2012/6/30
ONUR ENGINに触発された和モノ・レアグルーヴ・エディッツ!SLOW MOTION REPLAYのマッシュアップ/エディット・プロジェクトDUNK SHOT BROTHERSサード・リリース。

Chart by JET SET 2012.06.25 - ele-king

Shop Chart


1

Hikaru - High Psy - Limited Edition (Modulor Japan)
Hikaru初のオフィシャル・ミックスが到着。沖縄弁で【こんにちわ】を意味する【ハイサイ】を英語でモジり『high psy』と冠した本作。夏を心地よく彩るゆるーいミックスを収録。

2

Dump - Nyc Tonight (Presspop Music / Zelone)
Jennifer O'connorとのスプリット7"シングル以来、約4年ぶりとなるDumpの新作が登場!N.Y.パンク名曲"Nyc Tonight"をメロウ・ディスコ・アレンジで蘇らせた、インディー・ロック~ニュー・ディスコ・ファン必聴の1枚です。

3

Slow Motion Replay Presents Dunk Shot Brothers - Love Celebration (Smr)
先日リリースされたOnur Engin"Love Talkin"が大ヒットを記録するなど、和モノ音源のリエディットが逆輸入されて盛り上がりをみせる中、ここ日本からも危険な12インチ・シングルが登場しました!

4

Simi Lab - Uncommon (Summit)
デビュー作『Page 1 : Anatomy Of Insane』から待望のアナログ12"シングルが登場。

5

Freddie Gibbs & Madlib - Shame (Madlib Invazion)
今年秋頃にニュー・アルバムを控えているFreddie GibbsとMadlibのタッグ。前作でも見られたソウル~ジャズをサンプリングした一味も二味も違うダスティーなビートと、タイトなラッピンが絡んだ傑作です!

6

Lorn - Ask The Dust (Ninja Tune)
Flying Lotusフックアップのエレクトロ・ヒップホップ精鋭がNinjaからアルバム・リリース!!ご存じBrainfeederからのリリースでブレイクを果たしたイリノイのトラックメイカーLornが'10年の『Nothing Else』以来となる3rd.アルバムを完成。メランコリックな電気ビーツが満載です!!

7

Killer-bong - Sax Blue (Black Smoker)
Black Smokerから遂にKiller-BongによるジャズをテーマとしたミックスCdが登場!

8

Ig Culture - Soulful Shanghai (Kindred Spirits)
前作『Zen Badizm』より約4年振りとなるロンドンのクリエイター=Ig Cultureの新作は、10数名ものタレントを迎えたヒップホップ~ブレイクビーツ~レアグルーブなどの黒い要素が滲み出た全17曲! 感服です!

9

V.a. - The Silk Road (Melting Bot / 100% Silk)
ItalやMagic Touch、Maria Minervaなどヒット連発する'12年インディ・ダンス最重要レーベルの初コンピレーション盤。さらに初回入荷分にはOcto Octaによるレーベル・サンプラーMix Cdが付きます!

10

Para One - Passion (Marble / Because)
フレンチ・エレクトロ・ムーヴメントの顔役Para Oneが実に6年振りに完成させた待望の2nd.アルバム。
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