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Home > Features > Interview > interview with Goth-Trad 真打ち登場----ゴス・トラッド、超ロング・インタヴュー

interview with Goth-Trad

interview with Goth-Trad

真打ち登場

窶披€買Sス・トラッド、超ロング・インタヴュー

取材:野田 努 写真:小原泰広 Dec 30,2011 UP

E王 Goth-Trad
New Epoch

Deep Medi Musik/Pヴァイン

Amazon

 ......ようやく、ゴス・トラッドとサシで話せました、ようやく、この国のダブステップのキーパーソンと(キーちゃん、ありがとう)。

 さて、以下に紹介する大量の文字は、世界を股にかけて活動するゴス・トラッドとのおよそ1時間半ほどの対話の一部始終である。
 彼は2012年1月11日、ゴス・トラッドとして4枚目となるアルバム『ニュー・エポック』をリリースする。20年前のケン・イシイやDJクラッシュのように、これは国境よりも音楽そのものが優先している作品で、日本人が作っているから......というものではない。国籍にはとくに意味を見出さない音楽だと言えよう。が、『ニュー・エポック』にはゴス・トラッドのこの5年間の国際的な活動、その成果と日本を結びつけるもの、そして3.11、それらがぜんぶ含まれているという点において、過去の3枚とは違った視点を持つアルバムである。
 あるいはまた、いまでは、たとえばDJノブがゴス・トラッドを絶賛するように、その存在はダブステップというカテゴリーを超えて支持者を増やしている。が、興味深いことに『ニュー・エポック』は、実はゴス・トラッドが初めて"ダブステップ"を強く意識して作ったアルバムでもある。
 
 12月の上旬、アジア・ツアー出発の当日、空港に行く数時間前の午後に取材を受けてくれた。作品を特徴づけるディストピック・ヴィジョンとは裏腹に、本人は実に前向きな人柄で、これまでの歴史について丁寧に語ってくれた。

「ゴッドフレッシュがカッコいい」とか〈ワードサウンド〉だとか、「メルツバウやべえじゃん!」とか、そういうところに向かってたんですよね。当時から自分はいろんなパーティ観に行ったりもしてたんですけど......、まあ、「みんな似たような音作るんだな」って思ったりしてたのもあるんですよね。

俺ね、実はゴス・トラッドのデビュー・アルバムの推薦文を書いてるんですよ。

GT:覚えてます(笑)

あれは2003年だよね。「GOTH-TRAD」って名前もそのとき初めて聞いたのかな。秋本武士くんとレベル・ファミリアでいっしょにやってるっていうのが最初は結びつかなくてね。音がレゲエやダブではないでしょう。当時レーベルの人から、「新人だから音聴いて気に入ったら書いてくれ」って言われたんですよ。それで聴いて、けっこう衝撃でしたよ。

GT:自分も覚えてます。

どういうこと書いていたか覚えてる?

GT:あの......「ハイプを信じるな」って書いてましたね。

それは『remix』で書いた小さいレヴューじゃないかな(笑)。

GT:その言葉はすごく覚えてますね(笑)

恥ずかしいんだけど、あの当時の自分の文章をここに載せると、「身の毛もよだつようなノイズとカオスを創造し、1枚のアルバムにまとめている。これはすごいアルバムだ。デトロイトのアーバン・トライブとアレック・エンパイアのファーストを足して割ったようなメランコリーがノイズの砂嵐からできたかのようなビートとともにある。ヒップホップとテクノを切り刻み撹乱させ、怒りを持って吐き出したような音楽だ」ってすごいことを書いているんですけど(笑)。アルバムの前半はちょっとクラウデッドみたいな感じもあったけど、あのアルバムの後半とかね、よく当時あんなの出したなっていうのもあったし、まだ9.11のショックが生々しかった時代だったしね、イラク戦争があって、反戦デモもあって、そういう時代にゴス・トラッドは登場したんだよね。で、その当時、9.11以降のイラク戦争に関するコメントもDJバクといっしょに書いてもらってもいるんだよね。だいたいゴス・トラッドという名前自体にトゲがあるというか、当時のクラブ・ミュージックのピースな流れとはちょっと異質な響きがあった。それでようやく今回、インタヴューすることができるわけだけど、とにかくまず訊きたいのは、そもそも「GOTH-TRAD」がどこから来たのか? ということなんです。

GT:音楽的なルーツってことでですか?

それをふくめてゴス・トラッドがどういう音楽体験をして、どういう思いでここまで来ているのかを知りたくて。

GT:えっと、まずいちば番初めに音楽を好きになったのは、うちの親とか兄が80年代にマドンナとかポーラ・アブドゥルとか、そういう洋楽を聴いていたんですね。まあカッコいいのかなっていう感じじゃないですか。

生まれは東京なんですか?

GT:生まれは岡山で、すぐ山口県に引っ越して。で、アニキはけっこうそういうのに敏感で、カセットテープ買ってきては車のなかで聴いてたから、そういうのをカッコいいなあと思って「僕もダビングして」みたいな。それからテクノトロニックを聴いてたんですよ。で、これはカッコいい、ヒップハウスで----当時はハウスって言葉も知らないんですけど----ラップ乗ってて。

わりとポップなものを聴いてたんだね。

GT:そうですね、それは10歳とか。

小学生の頃だ。

GT:はい。で、テクノトロニックの「テクノ」って何なんだろうな、って思いながら小学6年生ぐらいのときに雑誌を読んでいたら、テクノのルーツが書いてあるものがあって。『スタジオ・ボイス』だったかなー? で、クラフトワークとか書いてあったから「買いに行こう」と思って近くのCDショップに行ったら置いてなくて、取り寄せてもらって。「ショールーム・ダミー」のEPとか何枚か買って、「面白いな」と思ったのが小学生6年生ぐらいのときですね。それからテクノって音楽をもっと聴きたいと思っていろいろ探りはじめて。で、家で衛星放送が入ってたんですけど、そのときたまたまUKチャートが流れてて、ナイトメアズ・オン・ワックスの"アフターマス"が1位だったんですよね。「これはカッコいいな、何か異様な雰囲気だし」って思って、ナイトメアズ・オン・ワックスのファーストを91年に買って。

それは小6で?

GT:それは中1ですね。

それはすごいねー。

GT:その流れでLFOも出てるから、それも買って。そのときKLFとかもヴィデオ・クリップで観てたんですよね。

そうなんだ。

GT:そこからUKの音楽に入っていって。当時タワレコなんかに行くと、T-99とかプロディジーのファーストとかが流れていて。プロディジーのファーストなんかめちゃカッコいいと思ってね。その辺のレイヴ・ミュージックっていうのをいろいろ漁って聴いてましたね。

それはすごく意外な過去だね。

GT:そうですか(笑)? それから中2になったときに広島に引っ越したんですね。そしたらレコード屋がちょくちょくあったので、だんだん通うようになって。そのときの広島のレコード屋は、「テクノ」っていうセクションに全部入ってたんですよね。〈ワープ〉、〈R&S〉、〈ライジング・ハイ〉、〈キッキン・レコーズ〉、ジャングル初期とか、ガバも入ってたしハウスも入ってたし、とりあえず気になったものを聴かせてもらって、「あ、これカッコいいな」ってガバ買ったりとか。『イントゥ・ザ・ジャングル』っていうジャングルのコンピレーションがあって、BPMがまだ150とか160ぐらいのときの(笑)。そういうの聴いて「これジャングルって言うんだ、カッコいいな」と思ってて、そしたらゴールディーが出て。で、そのなかにマッシヴ・アタックも入ってたんで、それも聴いたりとか、ビョークも聴いたりとか......中2から中3にかけてすごく聴いてましたね。テクノっていうセクションにいろんなものが入ってたから、そういう意味ではラッキーだったというか、いろんな音楽を聴くことができたんですよね。

あれはもう、黄金時代だったからね。

GT:で、高校生にになるとブリストル系、それから〈モ・ワックス〉だったり、もちろんポーティスヘッド......、〈ワープ〉は全部押さえてましたね。〈R&S〉とか〈ライジング・ハイ〉とか、あんまり情報はないから、レーベル買いして。コンピレーションに入ってたら、そのアーティストが違うレーベルから出してるものを買ったりとか。そういうのはほんと趣味でやってましたね。レコードもたくさん買ってたんですけど、でもDJをやるつもりもなくて......って感じですね。

そんなたくさん聴いてたんだね(笑)。

GT:本当に単純にレコードが好きで聴いてましたね。レコード屋のおっちゃんも知らないし、まわりの友だちも知らないし。高校生ぐらいのときに大学でDJやってる人と知り合って、その人がちょっと音楽に詳しかったからボアダムスだったり、マーク・スチュワートだったりも聴かせてもらってですね。DJやるつもりも音楽やるつもりもまったくなかったです。ただ趣味で、レコード買って、CD買って、楽しい、カッコいいなーって思ってただけです。
 18になって大学に入って上京したんです。最初はまったく音楽やるつもりはなかったですけどね。で、DJぐらい趣味でやろうかなーと思ってて。ちょうど大学に入るか入らないかぐらいで広島にいたときに、その先輩が〈ワードサウンド〉のコンピレーションを持ってて、「これやべーなー」みたいな感じで聴いてて(笑)。俺はそのとき「ほんとやべーな、この曲!」って感じで。すっごくディープなダブだったりとか、ローテンポでダークなヒップホップだったりとか。

その辺からじょじょにゴス・トラッドに近づくんだね(笑)

GT:そうですね(笑)。で、「わ、これほんとやべーな。これどこで売ってたんですか?」って、「どこどこのレコード屋で売ってたよ」って教えてもらったり。その先輩と朝まで遊んだ帰りにそのままレコード屋開くのを待って買って帰りましたね(笑)。それを聴きこむうちに、「DJやるよりも曲作りたいな」と思うようになった。で、その先輩はサンプラーだけで趣味的な感じでループを作ったりとかしてて。それを3時間ぐらい聴いたりしてて、「やべーループができたのー」みたいな感じで言ったりしてましたね(笑)。毎月ぐらい遊びに行って、そういうのを聴いて、「面白いなー」って。

へー、そこでヒップホップとの出会いがあるんだ。

GT:その人はルーツはヒップホップだから、昔のヒップホップを聴かせてもらったりしてました。でも音楽をやりたいと思ったきっかけはそのコンピレーションでしたね。ダークで、だけど音楽的だなと思って。こういうものを自分で作りたいなと思いはじめて、で、その先輩に何から手を付けたといいか訊いたら、「DJからはじめるとテンポ感覚もつくしいいんじゃないの」って教えられて。で、「作るには何が必要か?」って訊いたら「まずサンプラー。あとはシーケンサーとミキサーがあれば何でもできるよ」と教えてもらって。で、アカイのサンプラーS3000を買って、シーケンサーを買って、ターンテーブルをサンプリング用に1台だけ買って、で、トラック作りをはじめたんですよ。

なるほどねー。すごいですね(笑) なんかね、最初聴いたときに、ほんと正体がわからない音だと思ったんですよね。どこから来たのか背景がわからなかった。レーベルのひとにも訊いたんだけれども、「じゃあとにかく思ったこと書いてくれればいいから」みたいなことを言われて。テクノからの影響も感じるけど、アルバムの後半はもうノイズだし、クラッシュさん系のアブストラクト・ヒップホップのような匂いも感じたんだけど、もっとささくれ立っているし。以前、神波京平さんに「ゴス・トラッドはDJやってるけど、どういうのかけるの?」って訊いたら、「彼はスーサイドをかけてたよ」って言われて(笑)。〈ドラムンベース・セッション〉でスーサイドというのはすごいよ。

GT:はははは! かけましたね(笑)

それが2001年だから、だからアルバム出す前なんだよね。

GT:そうですね。

取材:野田 努(2011年12月30日)

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